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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/14 19:06:01

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「瞳…」

「ん?」

「今日は…天気はいいのかしら…」

「少し曇ってるけど、時々晴れ間が出てるわよ。」

あたしはそう言って、少しだけカーテンを開けた。


あたしの母…藤堂周子は、今年で68歳。

ずっと…精神的に不安定で施設に入っている。

日本に帰ってからずっとだから…

もう…19年…ここで暮らしてる。


あたしの実の父親、高原夏希と入籍してからも…

ここから出るのを拒んだ。


6年前から精神的には安定して、自宅療養も可能と言われたのに。

母は…ここから出たくないと言った。

出たら死ぬ、と。

それと関係があるのかどうかは分からないけれど…

精神的に回復したのと時を同じくして、身体を壊した。


「今日は…たくさん話したい気分だわ…」

そう言った母は、ほんのり笑顔で。

そんな日は…昔の…あたしが大好きだった母の事を思い出す。

まだ、母がジェフと再婚する前の…

あたしと二人でいた頃の事。


「瞳…聞いてくれる?」

「ん?いいわよ。なあに?」

枕元に顔を近付けると、母は少し嬉しそうな顔をした。

「…あなたが…まだ一歳を少し過ぎた頃にね…結婚を…するはずだった人がいたの。」

「えっ…初耳…驚いた。どんな人?」

「マシューって人で…不動産で働いてた人よ…メジャーリーガーを目指した事があるって…熱い人だったわ…」

それから母は…マシューと食事に行った日の事。

いつも綺麗だと褒めてくれていた事。

マシューはあたしの事も、とても可愛がってくれていた事。

結婚の報告をした途端、マシューの親戚から電話の嵐だった事。

それは…孤独になれていた母にとって鬱陶しい物と思いきや…幸せな気持ちにさせてくれた事。

それらを…とてもスラスラと話した。


昔話をしながら、こんな穏やかになっている母を見るのは…初めてだ。

それだけ、マシューという人の存在は大きかったのかもしれない。

なのに…どうして結婚しなかったの…?

そう聞きたかったが、先を急がずあたしは母の話を最後まで聞いた。

すると…

「…クリスマスだったわ…風邪気味のあなたを病院に連れて行って…家に帰ると…近所の人達が大騒ぎしていて…」

「……」

もう、嫌な予感しかなかった。

「すぐに…病院にって…知り合いの大学生が車を出してくれて…」

「…母さん…」

あたしは両手で母の手を握る。

病院にたどり着いた母が目にしたのは、並んだベッドに横たわる四人の姿。

マシューと、初めて母に会うはずだった…彼の両親と弟。

「…神様はいないって…思った…クリスマスに…こんな残酷な事って…ある?」

あたしは涙を我慢する事が出来なくて。

母の手を握りしめたまま…泣いた。

「…悲しい話を…聞かせてしまったわね…ごめんね…」

母はそう言ってあたしの頭を撫でた。


…誰にだって、幸せになる権利はあるのに。

母は…父とは結婚出来なくて。

一人であたしを産んで。

幸せになれるはずだったマシューを亡くし…ジェフと再婚したものの…暴力を振るわれ心身ともにダメージを受けた。

父とは念願の入籍を果たせたけど…それは本当に幸せだったの…?

あたしは…余計な事をしてしまったんじゃ…


「母さん…」

「なあに?」

「…父さんと結婚して…幸せだと思った事…ある?」

酷な質問かとも思ったけど…聞かずにいられなかった。

ただ単に…自分の罪悪感を減らしたかっただけかもしれない。

あたしがした事は、余計な事じゃなかった。と、そう思いたかったのかもしれない。

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