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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/13 00:22:40

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「…まだ拗ねてんのか?」

スタジオの入り口で、その背中に声をかけると。

「…ナッキー…」

マノンはゆっくりと振り返って、らしくない声を出した。

「…もう、なんや力入れへん…」

俺は苦笑いをしながらマノンに近付くと。

「しっかりしろよ。情けないな。」

「もう、俺の人生終わってもた…」

「バカ言うな。」

マノンの隣に座って、マノンの手からギターを奪う。

どうせスタジオにこもってメソメソしてるだけで弾いちゃいないよな。

「…一度だけ言う。」

俺はギターを手にして…Thank you for loving meを弾きながら…マノンに言った。

「…俺はおまえが羨ましいよ。」

それは…心からの言葉だった。

愛する妻と…ここまで手放したくないと思える娘と、ずっと一緒にいられたマノンが…

俺は心底羨ましい。

もし…俺も、周子と結婚して瞳と三人で暮らしていたら。

瞳を嫁に出したくない。と、もっと幸せな揉め事に発展したのだろうか。

もし…さくらとリトルベニスで式を挙げて、知花が産まれて。

三人でアメリカで過ごしていたら…

……ふっ。

…どれもが夢で、儚い妄想でしかない。

マノンには辛い現実であっても、俺には…ただただ、憧れだ。

今となっては…瞳は圭司と幸せになっていて。

知花も…さくらも…

その幸せを間近で見る事は出来ても、俺は蚊帳の外の人間だ。

そこに…そばに近寄れても…

中には入れない。

入っちゃいけない。


「…ナッキーに言われたら…誰に言われるんより堪える…」

「分かってくれて嬉しい。」

「…辛くないんか?」

「…自分で選んだ地獄だからな。」

「……」

マノンもナオトも…

俺が桐生院に出入りしている事を知っている。

知らん顔してさくらと向き合って…

一言も喋らない。

さくらは、貴司の妻で。

桐生院の人間だ。


「おまえ見てると、欲ってやつを思い出す。」

「…ちったあ思い出して欲張れや。」

「ふっ…手遅れだ。」

「……」


来週…シークレットライヴの前夜は、桐生院家のパーティーだ。

知花と…華月と聖の誕生日。

去年は知花とさくらの出産で何もなかったが…

今年も、当然のように呼ばれた。

ためらいがないと言えば嘘になる。

だが…

俺の娘…知花の幸せを。

ビートランドの会長としてではなく、高原夏希として…

そして、心の中でこっそりと…父親として祝いたい。

…孫の華月も同様…

そして…聖も…。

これが…俺の欲だ。

さくらを困らせていると思う。

だが…許されたいと願う弱い俺がいる。


「…俺、あいつらのライヴ観たら、嫉妬しそうやわ…」

マノンがうなだれたまま、そう言った。

「…ほんとおまえは…」

俺はギターをマノンに返して肩を叩くと。

「弾く熱が戻ったら会いに来い。それまで顔見せるな。」

そう言ってスタジオを出て…


『もしもし。』

「あ、るーちゃん?」

『ナッキーさん?』

「ああ。時間あるかな。」

部屋からるーちゃんに電話をかけて…

「お茶でも飲みに行かないか?」

デートに誘った。

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