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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/11 00:17:25

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「……」

「……」

「…おい、誰か止めた方がいいんじゃねーか?」

俺がそう言うと、スタジオを覗いてた聖子と知花が振り返った。

「…そう言うなら、あんたが止めて来てよ。」

聖子に目を細めて言われたが…

何となく、理由が鈴亜の事に違いないと思えて、足がすくむ。


今日、俺達はリハはないが…

取材の後でフラッといなくなったまこが、帰って来てからずっっっっっ……と、スタジオでピアノを弾いてる。

それも…もう二時間ぶっ続け。

「…まこちゃん、クラッシックなんて弾くんだね…」

かすかに漏れてくる音を聴いて、知花が言った。

元々クラッシック畑にいたまこだが…

バンドを組んでからは、俺達の前でそれを弾く姿を見かけた事はない。


「あれっ…まだ弾いてんのか?」

帰り支度万端のセンが、俺の後ろから小窓を覗いて言った。

「ああ…指がイカレちまわねーかな…」

俺が心配そうに言うと。

「…ま、たまには無茶したい時もあるもんだよ。ほっといてやろ。」

意外にも、センはそう言って。

「じゃ、お先に。」

手を上げて帰って行った。

無茶したい時もある…か。

「……それもそうだな。」

俺は小さくつぶやくと、かぶり付きで眺めてる聖子と知花を残してその場を去った。


陸は嫁さんと出かけるからとか言って、早くに帰った。

俺もたまには瑠歌を外食にでも連れて行ってやろうかな…なんて思いながら事務所を出ると…

「…鈴亜?」

事務所の外に、鈴亜がいた。

「…お兄ちゃん…」

「…何やってんだ?」

とりあえず…まこの事は…本人が言うまでは、何も言うまいと思って問いかける。

「…ううん…ちょっと、通りがかったから…」

時計を見ると、六時。

確か親父は今日…オフのはず。

「おまえ、こんな時間にウロついてたら、親父に叱られるんじゃねーか?」

鈴亜の頭をポンポンとして言うと。

「…どうして父さんに叱られるの?」

鈴亜は不思議そうな顔で言った。

あ。

そうか。

親父…まこには門限を言い渡したクセに、自分が門限を出したって鈴亜には言ってないんだっけな…

門限を破って叱られるのは、鈴亜じゃなくて…まこだ。

「…親父、おまえの事可愛くて仕方ないからな。」

「……」

「…帰らないのか?」

動きそうにない鈴亜の足を見て言うと。

「…ううん…帰る…」

鈴亜は元気のない声で言った。

まこを待ちたいのかもしれないが…

今日は無理な気がする。

あんなに集中してクラッシックを弾いてるまこ…

下手したら、倒れるまで弾きそうだ。

ま…センの言う通り…

無茶したい時もあるよな…。


「おまえ、勉強してんのか?あっと言う間に受験だぜ?」

鈴亜の隣を歩きながら言うと。

「…そうだね…」

めちゃくちゃ暗い声。

俺が知ってる限り…人生最大の落ち込み方をしている鈴亜な気がした。

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