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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/09 23:42:03

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「見て、お母さん。ガッくん、あくびしたよ?」

咲華がそう言って、麗の長男…学の顔を見つめた。

「そうね。ガッくん、まだまだ眠いのかも。」

あたしがそう言うと、咲華は振り向いて。

「しー。」

静かに本を読んでいるだけの華音に、指を立てた。

「……」

華音は無言で咲華を見て。

それから…自分の隣で眠ってる、麗の長女…紅美の寝顔を見た。


「ごめんね?急に来ちゃって…」

今日は、麗が子供達を連れて里帰り。

陸ちゃんはセンと共に、アメリカの事務所に十日間ほどお手伝いに行ってる。

「あたしは暇だからいいのよ。一人で年子は大変でしょ?それに、母さんもおばあちゃまも喜ぶわ。」

あたしがそう言うと、麗は少し痩せた顔を傾げて…笑った。


麗は…去年、長女を死産した。

悲しみに打ちひしがれていた麗の前に現れたのが…

実の父親に背中を刺されて、瀕死の状態で病院に担ぎ込まれた紅美だった。

両親が死んで、紅美を引き取りたくないと言い張る親戚を前に…

麗は名乗り出た。

「この子、あたしが育てます。」

…最初は、みんな反対した。

特に…二階堂側の人達は。

だけど…麗の決心は揺るがなかった。

もう子供は望めない。

そう言われてた麗に、あたしは反対なんて出来なかった。

だけど、紅美を引き取ってからの麗には明るさが戻って…

そして、望めなかったはずの二人目も出来た。


「紅美は大きいわね。」

あたしが眠ってる紅美を見て言うと。

「この前検診に行ったら、年上の子達よりずっと大きかったわ…」

「ふふっ。将来はバレーボール選手とかね。」

「桐生院家からスポーツ選手が出るなんて、想像出来ない。」

「…麗。二階堂。でしょ?」

「あっ…陸さんには内緒…」

「ふふっ。」

あたしと麗が顔を見合わせて笑ってると。

「ねえねえ、麗ちゃん。見て見て。」

四月から一年生になる咲華が、ランドセルを背負ってやって来た。

「わっ、もうすぐ一年生だもんね~。似合う似合う。」

誉められた咲華は満面の笑み。

華音はと言うと…

「……」

咲華の様子を見て、それからまた読んでた本に目を落とした。

「…ノン君、何か機嫌悪いの?」

麗が小声で言う。

「…母さんとおばあちゃまが、聖と華月連れて、スイミングの一日体験に行ったのよ…」

「あー…それでか…」


咲華は…本当に、ずっと変わらない。

良く食べて良く寝て良く笑って…

本当に、誰からも可愛がられて…愛される。

だけど華音は…

家族に対してはいいんだけど…

超人見知りで…

超…おばあちゃん子。

つまり…

あたしの、母さんが大好き。

常に、母さんに付いて回ってる。

だけど、今日みたいに母さんが聖と華月を連れて出かけてしまったりしてると…

自分も行きたかった…とか、おばあちゃんを取られた…とか。

変なヤキモチを焼いて、拗ねてしまう。

ヤキモチ焼きなのは、千里譲り。


「華音。」

あたしが声をかけると、華音はゆっくり顔を上げて。

「…何。」

そっけない返事。

もうっ。

千里のミニチュアみたい。


あたしは華音の後に回り込んで。

「えいっ。」

華音を抱きしめた。

「えーっ…何?くすぐったいよー…」

華音は、照れ臭そうに首をすくめながらも…笑ってる。

「華音とくっつきたかったの。最近、母さんの所来てくれないから、寂しいんだもん。」

「…咲華がくっついてるから、いーかなって。」

「咲華に遠慮してたの?」

頬をくっ付けて問いかける。

…あたしにとっては、華音も咲華も華月も…

三人共、可愛くてたまらない。

だけど華音は、自分はお兄ちゃんだから…って、どこか一歩退いてる所がある気がする。

双子なのに、咲華より随分大人びてしまってる。

…おばあちゃん子なのは、関係ないと思う。

母さんはいまだに…あたしの妹みたいに、無邪気な人だ。


「ただいまー。」

「あ、母さん達帰って来た。」

玄関に向かう麗。

あたしの腕の中の華音も、少し玄関に行きたそうにウズウズしてる。

「…迎えに行く?」

あたしが顔を覗き込んでそう言うと。

「…母さんが行くなら行く。」

華音は遠慮がちに言った。

…もう。

子供が気を遣わなくていいのに。

「ふふっ…いいから行っておいで?」

あたしが華音を立ち上がらせて言うと。

「咲華が行ったからいいや。」

華音は、あたしの方に向き直って膝に座って…あたしに抱きついた。

「…あら、嬉しい。」

華音がこんな事してくれるの…すごく久しぶり。

仕事から帰った千里には、三人とも飛びつくけど…

あたしには、めったにない。

あたしは普段から家に居るから…珍しくないのだと思う。


「…母さん…」

「なあに?」

「このまま…お昼寝していい?」

「…いいわよ。」

ゆっくり頭を撫でてると…華音はすぐに寝息を立て始めた。

…大きくなったな…

その内、こんな事させてくれなくなるんだよね…

少し体を揺らしながら、華音の重みを堪能する。


「ただい…あ、ノン君寝てるの?」

大部屋に入って来た母さんが、あたしに抱きついて眠ってる華音を見て言った。

「うん。今。」

「ふふっ…可愛い。本当はいつもこうしたいんだろうけど…我慢してるのよね。」

母さんは、華音の顔を覗き込みながら…そんな事を言った。

「え?我慢…?」

「ほら。千里さんがよく言うじゃない。」

「……」

母さんの言葉に、あたしは…パチパチと瞬きをした。

千里が…よく言うのは…

いつもあたしの膝に来る咲華に。

「おい、咲華。いつまで知花の膝に座るんだ。」

千里は…ただ単に、自分があたしの膝に寝転びたいから…そう言ってしまってるんだけど…

「え~、大人になるまで座るよ~?」

そう答える咲華に少しデレデレになって…

「…大人になるまで座るのはやめろ。」

そう言って、咲華を抱えて自分の膝に座らせる。

ついでに、華月も抱えて座らせて…

得意げな顔であたしを見て。

「おまえも来るか?」

なんて…


「…華音、それで遠慮してたの?」

「みたいよ?一年生になるから、大人になるから、もうダメだよね、って。」

「…もう。」

あたしは華音の頭をゆっくり撫でて。

「…むしろ、あたしはいくつになってもこうして欲しいけど。」

髪の毛に唇を落としながら言った。

可愛い子供達。

自分が子供だった時の事を考えても…

あたしは、父さんにも、おばあちゃまにも甘えた事がないから…

いくつまで、甘えてくれるんだろうって思っちゃう。

せめて…こうやって甘えてくれる間は…

精一杯、抱きしめて伝えたい。

愛してる…って。

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