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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/07 20:29:12

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「えーと…なんて言うか…俺は、朝霧君とは直接話した事もないし、絡んだ事もないのに…お祝いメッセージ…しかもビデオメッセージって恐縮なんですが…」

め…

めちゃくちゃ緊張して…

声がうわずる。

俺、里中健太郎は…

SAYSってバンドで、ここ…ビートランドからデビューした。

俺がギターボーカルで、ベースは矢野本。

で、ドラムは…今や一緒にやってたとは思えないぐらい、遠い存在になっちまった浅香京介。

SAYSが解散して、京介はF'sってバンドで…世界に出た。

…まさか、だよな。

京介が、俺の憧れの人…朝霧真音さんとバンド組むなんてさ…


バンドが解散してからは、俺はソロで歌ってる。

ビートランドでも、上でも下でもない、中ぐらいの位置で踏ん張ってる状態だ。

事務所に入った時、当然だけど…俺を見ても朝霧さんは気付かなかった。

だから、大成功した暁には…朝霧さんに、名乗り出たいって思ってた。

「あの時、助けてもらった里中です!!」

と。


10歳の誕生日に『ギターが欲しい』と言った。

うちは決して裕福ではなかったが、俺のその言葉に…なぜか親父は喜んだ。

俺が欲しかったのは、学校の音楽の授業で少し使ったクラッシックギターだったが、当時すでにDeep Redの大ファンだった親父は、俺が言った『ギター』の一言で…

「マノンモデルだぞ。」

すぐに楽器屋に行って、朝霧さんがワールドツアーで使っていた中の一本という、フェンダーの白いストラト…

しかも、マーシャルアンプ付き…

裕福じゃないのに。

親父は、へそくりでそれを買ってくれた。


が、しかし当然10歳の俺に、その良さなど分かるはずもなく…

ただ、親父を悲しませたくない。

喜ばせたい一心で、知り合いの大学生が格安で開いていたギター教室に通った。


忘れもしない…11歳のあの日。

あれは、そのレッスンからの帰りだった。

随分コードを覚えて弾けるようになっていた俺は、少しずつギターのトリコになっていた。

その日も、早く帰って習った事をおさらいして、親父に聴かせてやるんだと息巻いていた。

が…

「おい、おまえ、ぶつかっといて黙って逃げんのかよ。」

ぶつかってなんかいない高校生に、絡まれた。

そして…

「おまえ、チビのクセにギターなんて抱えて、生意気なんだよ!!」

俺のギターは…ケースごと地面に叩きつけられた。

「やめてよ!!返してよ!!」

囲まれて、転ばされて…蹴られて…

だけど、ギターの事が気になった。

壊れてたらどうしよう。

親父がへそくりで買ってくれた、大事なギターだ。

どうしよう。

どうしよう。

そう思いながら、ずっと…蹴られていると…

「おまえら何してんねや!!」

聞き慣れない言葉が、耳に入って来た。

「ヤバい!!逃げろ!!」

高校生たちは、一気に散らばって。

俺は、痛みも忘れてギターに駆け寄った。

「大丈夫か?怪我は?」

「ギター…ギターが…!!」

俺がギターを抱きかかえて言うと。

「…ちょい見せてみ?」

その人は、ケースを開けて…大きく溜息をついた。

「…壊れてるの…?」

「……修理に行ってみよか。」

その人は、待たせてたタクシーにお金を払って、俺を連れて音楽屋に向かった。

そこでは…絶望的な言葉しか出て来なかった。

「う~ん…これはもう無理ですねえ…」

俺は、泣くしかなかった。

親父が…買ってくれたのに…

俺が一曲丸ごと弾けるようになった日なんて、録音までして喜んでくれたのに…


「ここ、ピックアップ交換したら、どうにかなるんちゃう?」

「いや、でもネックがここまで…」

「…なあ、このギター、僕のか?」

「…うっ…うん…父さんが…誕生日に…買ってくれて……うっ…」

「…そら大事なギターやな。よし。今日すぐには直れへんから、何日か人に預けてるって言えるか?」

「…な…直る…?」

「直したるって。」

神の声に聞こえた。

俺は、どうしても親父を悲しませたくなかったし…

とにかく…両親にバレたくなかった。

高校生にからまれたなんて知られたら…

もうギター教室には行くなって言われるし。

ギターの修理に…お金ってどれぐらいかかるんだろう…

色んな事が、頭の中渦巻いてた。

蹴られて汚れた服の事も、どうやって誤魔化そうって気になっていて…

その人が、朝霧真音本人だなんて、気付かなかった。

だって…俺が親父から見せられていたのは…もっと若い朝霧真音だったし。

…今思うと、全然変わってないんだけどな…

なんであの時は気付かなかったんだろう。

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