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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/06 21:30:58

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「ちょっと飲んでくる。」

そう言って、洋館を出たものの…

肝心要の飲み相手、親父が見つかんねー。

ったく…どこ行ったんだよ…


親父を探して歩いてると、その姿は道場にあった。

「…親父。」

背中に声をかけて、近付く。

「…色々…悪かった。」

座ってる親父の向かい側に腰を下ろして、ビールを差し出そうと…

「…親父?」

親父は…固く目を閉じて…何か考え込んでいる様子だった。


俺はポリポリと頬をかいて…

「瞑想中か?」

ビールを一本、親父の前に置いた。

「…俺ばっか自由で…申し訳ないって思ってる。」

そう言いながら、ビールを開けた。

「夢を…追わせてくれた事、感謝してる。」

俺がそう言ってビールを一口飲むと。

「…私には…ずっと後悔している事が…山ほどある。」

「……」

意外な告白だと思った。


俺が家業を継がなかったからか…

親父は俺に仕事の話はおろか、自分の事もそうそう話さない。

元気かとか、音楽は頑張っているのか、とか…

そういった会話はあっても、そんなものは数秒で終わる。


「俺にだって、後悔は山ほどあるぜ。」

親父の前に置いてたビールを開けて、親父の手に持たせる。

「そりゃあさ…命懸けて闘ってる親父達とは、比べものになんねーだろうけど。」

「……」

目を開けた親父。

俺に向けられない視線。

それでも俺は、言った。

「やっぱ、自分の夢より…追わなきゃいけねーもんはあったんじゃねーかって。正直…今もずっと毎日夢から覚める瞬間がある。」

「…バカが。」

やっと親父の視線が俺に向いた。

「おまえは、夢を掴んだ。そこに居ろ。」

「……」

「…自慢の息子で居てくれ。」

「……」

食いしばって、涙を我慢した。


…何が自慢の息子だ。

古い二階堂の体制。

そんな中で、トップの息子が継がなかったなんて…

俺は異端児もいいとこだ。

直接親父に文句を言う奴がいないとしても、親父に対して不信感を抱いた奴が居てもおかしくない。


「明日私は挨拶に行けないが…近い内に、ちゃんと結納をしよう。」

親父がビールを掲げて言った。

「結納…な。」

「いい所の娘さんなんだろ。」

「…まあな。」

「しっかりやれよ。」

「…頑張る。」


一本を飲みきった所で…

「足りないでしょう。」

環が…ワインとグラスを持ってやって来た。

「気が利くな。」

親父は環を隣に座らせて。

「こいつが居るから、おまえの出番なんてない。」

そう言って、環の首を抱き寄せた。

「…はいはい。」

環の持って来たワインを開けて、改めて三人で乾杯をした。

「どんなプロポーズをされたんですか?」

「見合い相手が来てたのに、乗り込んだ。」

「お…おまえ…何てことを…」

「やりますね。」

「おまえだって、既成事実作ってどうにかしたクセに。」

「う…あ…あれは…」

きっと…

親父の後悔と俺のそれは、本当に格が違う。

だが…

どっちも、きっと一生消えないっていう点では…

同じだ。


二階堂に生まれた事を、誇りに思う事も…

重荷に思う事も…

きっと、一生続くんだ。


それでも、俺は…

ここが好きだ。



二階堂が……


大好きだ。

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