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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/05 19:19:26

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『まだお仕事されてるんですか。』

その電話は…俺がまだ事務所にいる時にかかって来た。

貴司からだった。

「ああ…もうすぐ帰る。なんだ?こんな時間に。」

『産まれました。』

「…え?」

『さくらが、無事男の子を出産しました。』

「……」

貴司の言葉に、俺は…すぐには答えられなかった。

さくらが…男の子を産んだ…

男の子…

「そ…そうか…」

『母子共に元気です。』

「…良かった…」

『…おめでとうございます。』

「何を言ってる。それは…こっちのセリフだ。おめでとう。」

そう言いながらも…俺は喜びを隠せなかった。

男の子…

さくらが、男の子を産んだ…

「…髪の毛は…」

ふと、我に戻って問いかけると。

『黒髪ですよ。さくらにそっくりです。』

貴司は、少し笑いながら答えた。

「そうか…良かった…」

『それで…名前を付けて欲しいのですが。』

「は?」

『名前です。あなたの…息子ですからね。』

「……何を言ってる。前にも言ったが、貴司、おまえの子供だ。」

少し語気を強めて言うと、電話の向こうで貴司は小さく笑って。

『表向きはそうですが…私は、あなたの息子だとも思っています。そう思いたいのです。』

嘘とは思えない口調でそう言った。

『あなたが名付けたとは言いません。どうか…名前を。』

「……」

俺は…今までもそうだったが。

貴司の願い事は、結局聞き入れる事になっている。

断れない事もないとは思うが…

もし断って、あの事を世に出されるのは…困る。

俺が傷付くだけならいいが…

誰にも傷付いて欲しくない。


窓の外には、明るい月。

目下に広がる、ツリーの電飾。

…そうか。

もう今日はクリスマスイヴ…知花の誕生日。

「知花は…まだ退院できそうにないのか?」

窓の外を眺めながら問いかけると。

『…知花も今、分娩室です。』

「えっ?」

『千里君と誓がついて行っています。』

こんな時…本当に、男は何も出来ないもんだ…と思った。

瞳が映を出産した時も…

俺と圭司は何も出来ず、ただひたすら待って…産まれた時には泣いて喜んだ。

…男に出来るのは、待つ事と喜ぶ事だけか…。


「…聖。」

小さくつぶやく。

『…聖、ですか。』

「…頭の中に、聖この夜が浮かんだ。」

『クリスマスイヴですからね。ありがとうございます。聖…いい名前です。』

「…本当に、それでいいのか?」

『はい。どうしても…あなたに名付けて欲しかったので。』

貴司の言葉に、礼を言うのもおかしいし…俺が黙ったままでいると。

『安心して下さい。私の息子として…ちゃんと育て上げます。』

貴司は、穏やかな口調でそう言った。

「…ああ。」

『知花と子供が退院したら、是非…聖の顔も見に来てやって下さい。』

「…分かった。」

貴司との電話は、それで終わった。


聖…

俺の血を分けた息子…


クリスマスイヴに産まれた、神の子だと思った。

俺の子供だと知られてはならない。

幸い、さくらにそっくりに…赤毛には産まれなかった。

身体中に疼きを覚えながら、俺は…決して口外できるはずのない喜びを、一人…噛みしめていた。

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