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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/05 13:20:16

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「奥様はカウンセリングを受けてみられてはどうかと思うのですが…」

俺はその言葉に、何度か瞬きをした。

「…カウンセリング?」

知花が華月を出産して三週間。

一度は医者に匙を投げられかけた華月も、奇跡的に持ち直した。

だが…

知花の体調が悪い。

出産後、一旦退院したものの…年明けにまた過呼吸と眩暈で入院。

俺は…それを、産後の疲れと華月が仮死状態で産まれた事でのショックだと思い込んでいた。

実際、知花はそれを何度も必要なく謝っていたし…


「出産前に、何か不安定になるような強いストレスがあったようですよね?」

「…あ。」

俺はそこで…ようやく思い出した。

知花が…初めて過呼吸になった日の事を。


「…起こしたか。」

病室に入ると、知花はゆっくり目を開けて俺を見た。

「…ううん…何だか…眠れなくて…」

椅子を出して座って、知花の額に手を当てる。

そのまま前髪をかきあげて…髪の毛を撫でた。

「…華月、元気になってるぜ?」

「…早く一緒に帰りたい…」

「…本当か?」

「…どうして…?」

「何か…抱えてるよな?」

俺の言葉に、知花は一瞬眉間にしわを寄せて…

だが、すぐに普通の顔になって。

「…ううん。」

優しく笑った。

「…俺には頼れねーか?」

「……」

知花の手を口元で両手で包んだ。

…病室は暖房がついてるのに、知花の手は驚くほど冷たかった。


「あの日…おまえ、何か様子がおかしかったよな?なのに…ずっと聞いてやれなくて…悪かった。」

俺がそう言うと、知花は唇を震わせて。

「…そんな事…」

小さく、つぶやいた。

「…俺に話せないなら、カウンセラーに話してみるか?」

「…カウンセラー…?」

「医者に言われた。今後の事もあるし…心配事があるなら、今吐き出して治療しておいた方がいいって。」

「……」

知花はしばらく無言で。

俺も、その無言に付き合った。

ただ…握った手は離さず。

ずっと…想いをこめて温めた。

「…千里…」

しばらくして、ようやく知花が口を開いた。

「ん?」

「…抱きしめて…」

「……」

知花からそんな事を言うのは…珍しい。

俺は知花の身体をゆっくりと抱き起して、ベッドの脇に座って抱きしめた。


「…大丈夫だ。何があっても、俺が守るから。」

「千里…」

「おまえだけじゃない。桐生院のみんなを、俺が守る。」

「…あんな大家族…千里大変…」

「任せとけよ。」

「…ふふ……ありがとう…」

知花の背中を摩りながら、またしばらくそのままでいると…

「…うちには…長井さんっていう…庭師さんがいたの…」

知花が、ゆっくりと話し始めた。

「あの立派な庭を手入れてしてた人か。すげーな。尊敬する。」

「…あたしにとっては…おじいちゃんみたいな存在で…無口な人だったけど、すごく…優しい人だった。」

それから、知花は…その長井氏についてを語った。

親父さんと同じ年頃の息子がいた事。

その息子もまた…庭師の修行のため、桐生院家に出入りしていた事。

その頃、時を同じくして『中岡さん』というお手伝いもいた事。

寮生だった知花は、めったに会う事はなかったとは言え…

幼少時に世話になった人達だけに、大事な存在であった…と。


「…だけどね…あたしが桜花に合格して…帰って来た時には…長井さんも中岡さんも…いなかったの…」

「どうして。」

「…おばあちゃまが言うには…麗が家の事を出来るようになったから、中岡さんの手は要らなくなったって…」

「庭は?」

「長井さんは腰を痛めて…息子さんも…違う仕事を始めたから、違う庭師さんを雇ったって…」

「……」

ここまでは…普通に、知花の思い出話だった。

だが…


「…あの日…検診から帰ったら…」

知花の表情が…曇った。

「長井さんの…息子さんが、うちの前にいらしたの…」

「…何をしに来てた?」

「…分かんないけど…あたしを見て…結婚したのかって喜んでくれて…」

俺の胸にすがる知花の手に、力が入った気がした。

俺は…右手で知花の頭を撫でる。

大丈夫…大丈夫…と、念じながら。

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