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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/05 12:27:24

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「……」

「……」

俺は…わざと視界にこいつを入れないようにしていた。

こいつ。

朝霧光史。


聖子の幼馴染で…朝霧さんの長男で…

SHE'S-HE'Sのドラマーで……

…悔しいけど、俺でも思ってしまうほど…

世界一、ドラムが上手い。

そして…

憎たらしいほど…

いい男だ。


「どうぞ。」

気が付くと、朝霧が俺の前にセルフサービスのお茶を差し出した。

「あ…ああ。」

思いがけない事をされて、少し声がうわずった。

朝霧は俺の正面じゃなくて…はす向かいに座ると。

「俺、ここの玄米茶好きなんですよね。」

そう言って…茶をすすった。

「……」

ここの玄米茶が好き…?

そ…

そんな事を言われても…


無言のまま…どれぐらい時間が経っただろう。

俺だけがそわそわしているように思われるのが嫌で、何ともない風にしてはいるものの…

この、朝霧の全然動じてない雰囲気…

…悔し過ぎる。


何か音楽の話題でも出せば、同じドラマーではあるし…会話はあると思う。

が…

俺は聖子とケンカをした。

こいつの事で。

それに…

俺は…


人見知りだ。


「浅香さん。」

沈黙を破ったのは、朝霧だった。

「…なんだよ。」

「俺と聖子には、誰がどう入って来ても、塗りかえられない歴史があります。」

「……」

「昔から、好きな相手が出来れば打ち明け合うような、何でも話せる相手でした。」

…ああ、眉間に力が入る。

「俺…あいつに何度助けられたか…」

「……」

俺の眉間から、力が抜けた。

気が付いたら、朝霧は俺の前で頭を下げてて。

「…聖子の事、宜しくお願いします。」

その…何の他意も感じられないような声に…

俺は少し唖然とした。

て言うか…

自分が恥ずかしくなった。


俺には、幼馴染って存在がいないから。

聖子の気持ちが分からなかった。

やたらと朝霧を気にかけたり、自慢したりするのが癪で。

なんであいつの事ばっか。って…妬んだ。


もし俺に、そんな存在が居れば…俺も、こうして頭を下げたのか?

よろしく頼むって。

気の合いそうにない相手でも。

大事な幼馴染のためなら、頭を下げるのか?


「…俺なんかに、任せられねーって思ってないのか?」

湯呑の縁を親指でなぞりながら問いかけると。

「聖子が選んだ人なのに、そんな事思うわけないですよ。」

朝霧は…真顔。

「…あいつが血迷ってるだけとか。」

「血迷っても、聖子が好きと思える人なら賛成です。ただ…」

「…ただ?」

「あいつ、強いって思われがちだけど…本当はめちゃくちゃ弱くて寂しがり屋で泣き虫なんです。」

「……」

「会いに行ってやって下さい。」

「…今日、来てんのか?」

「ルームにいます。」

そう言った朝霧は…少し笑顔で。

あー…こいつ、やっぱ腹立つ。と思った。

腹立つほど…いい奴だ。


「…サンキュ。茶も…聖子の事も。」

俺はそう言って立ち上がると。

「…今度、おまえのドラムクリニック覗く。」

小さな声で言った。

すると…

「き…緊張するからやめて下さいよ…」

朝霧は、今まで見た事もないような…困った顔をした。

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