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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/05 10:27:48

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それからは…

自分で何が起こっているのか、よく分からなかった。

分娩室からは、知花の苦しむ声が聞こえて。

そうかと思えば…何も聞こえなくなって。

俺は…血が出るほど強く、自分の腕に爪を食いこませた。

手術室に移動します。という声や、時々開いたドアの隙間から見える、慌ただしい人の動きとか…


「…さん。」

「……」

「義兄さん。」

「……」

「義兄さんてば。」

誓に頬をペタペタと叩かれて、やっと我に返る。

「あ…ああ…」

「…母さん、無事産まれたって。」

「……」

そのニュースが…緊張して強張っていた俺の身体から…

少しだけ、力を抜けさせてくれた。

「そうか…どっちだって?」

「男。この歳で弟が出来るなんて、思わなかったなあ。」

誓はそう言って、クスクス笑う。

「羨ましいぐらいの安産だな。」

「母さん、電話にも出たよ。」

「…マジかよ。」

「誓、しっかりね。って言われた。」

「……」

少し間を開けて、誓の顔を見る。

「…頑張ろうね。義兄さん。」

「…そうだな。」

…知花。

頑張れ。

頑張れ。


ふと、窓の外を見上げると…白くてまん丸い月。

しばらくそれを見上げてると。

「今日、満月なんだね。」

誓も空を見上げた。

「…満月か。」

「真っ白で綺麗な月だなー…」

視界の隅には、クリスマスツリーのイルミネーション。

早く…産まれて来い。

こんな華やかな月の夜に産まれるなんて、おまえ…絶対ラッキーだぜ?


しばらくすると、親父さんと麗も来た。

待ち焦がれる声は、まだ聞こえない。


あれからずっと、空には白くて丸い月が見えるまま。

いつまでも夜が続くような錯覚に陥った。


それから間もなくして…

知花は、女の子を出産した。

だが、仮死状態で産まれた我が娘は…小さな体にたくさんの管をつけられて…

保育器に入れられた。

「ごめんなさい…」

意識が戻った知花は…ずっと謝り続けてる。

俺は、そんな知花の頭を撫でて…

「…知花…」

頬にキスをした。

「…誕生日、おめでとう。」

「……」

「俺がプレゼントをもらった気分だ…」

「でも…」

「…大丈夫。大丈夫だ。」

「……」

「そう言えばさ…」

「…何…?」

「名前…考えた。」

「…何?」

「華月。」

「華月…」

「めちゃくちゃ綺麗な満月が出てたんだ。」

「…素敵…」

「俺が月を見て綺麗って思うなんてさ…奇跡だよな。」

「…ふふ…っ…」

額を合わせて…目を閉じる。

まだ予断は許さない状況ではあっても…

知花が出産を終えた事で、俺は少し安心してしまっていた。

そして、産まれて来た『華月』の状態を気にするあまり…

この時…

知花が、どれだけのストレスを抱えていたかなんて…

気に掛ける事ができなかった…。

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