ブログランキング12

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 3327
  • 読者 726
  • 昨日のアクセス数 16406

テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/04 22:54:53

  • 83
  • 0

「…寝たな。」

俺がそう言うと、ソファーにいた千里はガバッと立ち上がって。

「す…すいません。」

俺に謝った。

ふっ…おまえも寝てたのか。


ナオトとマノンが取材に向かって、千里と子供達だけがここに残った。

静かな時間…

俺にとっては、至福の時だ。


「おまえじゃない。華音と咲華だ。」

ナオトから、そんな椅子をデスク用に使うなと言われてしまう、リクライニングの大きな椅子。

だが、おかげで双子は俺の脇から頭を出して、肉厚な肘置きに抱きつくようにして眠っている。

「そろそろ連れて帰ります。」

千里はそう言ったが、あまりにも気持ち良さそうに眠っているのと…

俺自身、この子達の重みをもう少し味わっていたくて。

「何もないなら、もう少しいてくれ。」

さっきまで二人が○を書いたり色を塗ったりしていた紙を見ながら言った。

「…いいんすか?」

「ああ。」

「…じゃあ、もう少し。」

千里はそう言って、今度は俺に顔を向けて座った。


「…高原さん。」

「ん?」

書類に目を落としたまま答えると。

「さくらさんて…昔から、少し変わった人でしたか?」

千里は、遠慮がちにそう言った。

ゆっくり顔を上げて、千里を見る。

「いや…なんて言うか…何でこんな事が出来るんだ?って言うような事を、やってのけるんですよね。」

「…たとえば?」

「俺から見たら、インターホンのとり付けなんてのは、業者に頼む事なんですけど…さくらさんは自分で…」

「取り付けたのか。」

「…作ったんですよ。」

「……」

「それに、妊娠前はアクロバチックな事も平気でやってたし…何より…」

「…何より?」

「恐ろしく耳がいいです。」

「……」

俺は書類を机に置くと。

「コーヒー入れてくれるか?」

首を傾げて千里に言った。

「はい。」

ブラインドの隙間から、夕陽。

陽が落ちるのが早くなった。

当然か。

もう…冬だ。

さくらが事故に遭った季節。

…いや…

事件のあった…季節。


「恐ろしく耳がいいのは、知花もだろ。」

コーヒーを淹れてる千里にそう言うと。

「…遺伝ってやつですかね。でも、さくらさんのは知花以上です。もう、野生の動物並みですよ。」

千里は笑い混じりに答えた。

…そう言えば、俺の足音だけで…ドアの前で待ち伏せたりしてたな。


「俺と暮らしてた時は…裁縫や変装の技術がすげーなとは思ってたが…」

俺が着なくなったコートを直しては、自分の物を作ったり。

ハロウィンやケリーズでの変装…

…ほんと…さくらには驚かされる事ばかりだった。

もしかしたら…それは…

二階堂に生まれ育って、培われた物なのだろうか。

さくらは…思い出しては…いないよな?


「どうぞ。」

「サンキュ。」

目の前に置かれたコーヒーを、一口飲む。

膝に、華音と咲華。

…いい時間だ…と、思った。


「…おかげで華音は、超さくらさん子ですよ。」

千里もコーヒーを飲みながら座った。

「妬いてるのか?」

「若干。華音の奴、すげー自慢するんすよね。さくらさんがあれ作ったこれ作ったって。しかも、絶対俺じゃ作れないような物ばっか。」

「ははっ。俺も砂場の姫路城は、ばーさんに写真を見せてもらった。」

「勘弁して欲しいっすよ…」

「咲華は?」

「咲華はばーさん子です。特に花を活けるばーさんが好きらしくて。女の子らしい面が増えて来てホッとしてます。」

「ああ…貴司が言ってた。咲華が華音の真似をして、ヒーローみたいなポーズを取るって。」

「その反面、華音が咲華のスカートを穿きたがったりして…もう、どっちも影響されまくりですよ。」

「ははっ。仕方ないよな。同じ顔だし、同じようにしたくなる気持ちは分かる。」

…愛しい。

膝の二人の頭を、ゆっくりと撫でる。


「…辛くないっすか?」

そう言われて、千里を見ると。

「あ…すいません。変な事聞いて。」

千里は少しだけ頭を下げた。

「…大事な奴らが幸せでいてくれたら、それが一番だ。」

小さく笑ってそう答えると…

「…なちゅ…」

膝で、咲華が起きた。

「起きたか。」

「なちゅ…いっしょに、おうちかえよ…」

咲華に抱きつかれてそう言われて…自然と…笑顔になった。

本当にこいつは…愛しい事を言ってくれる。

「俺はまだ仕事があるから、華音と父さんとで帰れ。」

「まだ、おしおとしゅゆの?」

「ああ。でも、咲華が応援してくれたから、早く終わるかもしれない。」

そう言うと、咲華は眠そうに目を擦りながらも、笑ってくれた。


「邪魔してすいませんでした。」

「いや、また来てくれ。」

千里は眠ったままの華音を抱えて。

「なちゅ、バイバイ。」

手を振る咲華と共に帰って行った。


…辛くないか?


辛いはずがない。


これは…


俺が選んだ道だ。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

関連するブログ記事

  1. 40th 51

    09/03

    「高原さん。」朝から呼び止められてばかりの俺は、いまだに...

  2. 41st 50

    09/12

    「…何?」俺は机の上の書類から視線を上げて、千里を見た。...

  1. 39th 80

    08/27

    俺が再び下を向いて涙を流すと。すかさず…頭を撫でられた。...

  2. 「…とーしゃん…」「……」「とーしゃん。」「……...

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

11/22 編集部Pick up!!

  1. 妻を家政婦扱いする夫に呆れた
  2. 子連れに謝罪され感じたこと
  3. 新築お披露目で義両親にイライラ

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3