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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/04 22:19:09

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「ノン君はゴキゲン斜めか?ん?」

マノンが、千里が抱いたままでいる男の子の顔を覗き込む。

「家に帰りたいみたいで。」

「ママが恋しいか。」

「いや…えーと…」

「しゃくりゃちゃん…」

「……」

さくらちゃん。


「…さくらちゃんも、おめでたなんやてな。」

「…はい。」

「……」

俺達としては…複雑な気持ちしかない。

ナッキーの愛したさくらちゃんは、今は他人の妻だ。

そして…妊娠もした。

…だが、今日のナッキーの機嫌の良さを見ると…

もう、さくらちゃんの事は吹っ切ってるのか?


「…おうちかえゆ…」

男の子が千里にそう言うと。

「おまえ、さくらちゃんの事好きなんだろ?好きなら、もう少し我慢しろ。それが男だ。」

千里は真顔でそんな事を言った。

…子供相手に、本気で言ってんのか?

つい、笑いそうになる。

「咲華はいい子にしてるぞ。」

千里がそう言うと、男の子はマノンの隣に座っておとなしくしている女の子を見て。

「…しゃく、おうちかえよーよ…」

そう言った。

「しゃく、かーしゃんと、しゃくりゃちゃん、しゅきだから、がまんしゆ。」

「……」

「ほら、どうする?」

「…がまん…」

こういう時、男はよええな~…なんて、一人で心の中でつぶやいた。


「…真斗がホームシックになった時の事、思い出すな…」

俺が足を組んでそう言うと。

「あー…ワールドツアーの時な。」

マノンが女の子を膝に抱えて笑った。

「…あの時は、さくらちゃんに助けてもらった。」

「…そうなんですか?」

「ああ。客として来てくれたのに、真斗が彼女から離れなくて。」

「ふっ…」

「何だろうな。子供が安心する何かを持ってるのか…真斗は、ずっと彼女の事を忘れられなかったらしい。」

俺がそう言ってる隣で、マノンは目を細めて。

「ずっと想い人がおる男のどこがええんやろか…」

低い声でつぶやいた。

「は?」

「…いや、何でもない。」


千里の腕でぐずっている男の子は…あの日の真斗のようだと思った。

妊娠中の愛美を気遣ってツアーに連れ出したのはいいが…

本当に、あの時は誰にも懐かなくなって困った。


なのに…

さくらちゃんには、安心しきっていた。

他人に負ぶわれてる真斗を見た時は、少し唖然とした。

俺が腕を掴んだ時、さくらちゃんは俺を蹴り飛ばそうとしたんだっけな…

真斗も、子供ながらに…

自分を守ってくれるかもしれない人物というのは、察しがついたのかもしれない。

一度、愛美と共に助けられているわけだし…。


「…さくらちゃんのどこが好きなんだい?」

男の子にそう問いかけると、チラリと俺に視線を向けて。

「…んっとね…ひみちゅきち、ちゅくってくえたり…」

「…秘密基地…」

つい、マノンと同時に言った。

「ちゅうしんしゅるの、ちゅくってくえたり…」

「…ちゅうしん?」

俺が聞き返すと。

「しゃくも、したよ!!しゃくりゃちゃん、しゅごいの!!おうちのもしもし、ちゅくったの!!」

マノンの膝にいる女の子が、目をキラキラさせて言った。

「…おうちのもしもし?」

「ああ…うち、広いんで…どこの部屋にいても連絡がつくように、インターホン付けたらどうかって話をしたら…」

千里が苦笑いしながら。

「…さくらさん、言った次の日には、作ってました。」

「……は?」

「…作ってたんですよ。」

「……インターホンを?」

「…はい。」

信じられない事を言った。


「……どうやって?」

「…口では説明しがたいんですが…工具を駆使して。」

「……」

「それで、こいつは、さくらさんの技術ショーのトリコなんですよね。」

千里は男の子の頭をグリグリしながら。

「華音、今日一日我慢したら、さくらちゃんもきっと誉めてくれるぜ?」

耳元で小声で言った。

「…うん…」

まだ納得いかないようではあったが、小さく頷く男の子。

すると…

「とーしゃん、しゃく、なちゅのおへや、いきたい。」

女の子が言った。

「…仕事中だからダメ。」

「しゃく、いいこに、しゅわってるから。なちゅのおしおと、いいこして、みてゆ。」

俺とマノンは顔を見合わせて。

「…ナッキーの事か?」

千里に問いかける。

「…はい。」

千里はバツが悪そうに答えたが…

「よし。なちゅの所、行こうぜ。」

俺が立ち上がると。

「せやな。なちゅの所で、美味いもんでも飲ませてもらおうで。」

「せやなー、こーも、ゆってたー。」

「なんやて?こーも言うてたか。あいつ、真似しおって。」

マノンも、女の子を抱えたまま立ち上がった。

千里は少し複雑そうな顔をしていたが…


俺とマノンが先頭を切って会長室に入ると、書類から顔を上げたナッキーは。

「おっ、何だよ。勢揃いで…華音と咲華も来たのか。」

双子を見付けて…笑顔になった。

「なちゅー、しゃく、おしおと、おうえんしゆよー。」

「あはは。それなら、ここに座ってここに丸を書いてくれ。」

「ろんもー。」

「任せたぞ。二人で仲良くやるんだぞ。」

「じぇす!!」

「ははっ。じぇすってなんだよ。」


…ナッキーはめちゃくちゃ笑顔だが…

今日の浮かれ具合は…

やっぱ、孫の事じゃない気がする。


…それ以上の何かが、あったんだろうが…

まあ…

今は…


「すいません…邪魔して。」

「いや、いい息抜きになる。」

俺とマノンは、コーヒーを淹れながら…その様子を眺めた。

膝に双子を座らせて、本当に…いつになく柔らかい表情のナッキー。

千里は申し訳なさそうだが…こんなナッキーを見たら、毎日でも連れて来てくれと言いたくなる。


さくらちゃんとは、もう結ばれる事はなくても…

せめて…

こうして、ナッキーに安らげる存在がいるなら…


俺達は、安心なんだよな…。

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