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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/04 21:20:26

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「……」

俺は…その感触を思い出して、少し泣きそうになった。

…さくらの、大きなお腹。

そっと触ると、そこから…元気な躍動を感じる事が出来た。


…貴司の子供だ。

そう言い聞かせながらも…

俺は、貴司の好意に甘え続けている。


…ためらいがなかったと言えば嘘になる。

さくらは人の妻だ。

…貴司の、妻だ。

俺は、何の関係もない。

なのに…気安く触っていいのか?

夫も、義母も見ている前で?

そう思ったが…

さくらの、困った顔を見て…触る気になった。

俺が触らなかったら…さくらは落ち込むんじゃないか…なんて。

勝手な想いだが。


触れた瞬間、不思議な気持ちになった。

この中に…子供がいる。

さくらの…子供が…

元気に産まれて来いよ。

そう念じた途端、そこから返事のように反応があった。

つい、驚いてさくらの顔を見て…目が合った。

…俺の喜びや動揺が、貴司にバレなかっただろうか…

後になって、少し悔やんだ。

しかし…

そんな物を忘れてしまうぐらいの、感動があった。

生命というのは、なんて神秘的で素晴らしいものなんだろう。


「高原さん、ゴキゲンっすね。」

ロビーでスタッフに声をかけられた。

そんなに見え見えか?

普段なら鼻で笑ってやり過ごすが…

「おう。」

つい…手を上げて、笑顔で応えてしまうと。

「…な…何があったんだろ…」

数人が、コソコソとそう言った。

ははっ。

だよな。

俺は…酷く機嫌の悪い顔はしないが、誰にも彼にもいい顔をするわけでもない。

その辺は、マノンのお株だ。


「…なんだ…ひどくゴキゲンだな。」

エレベーターホールで一緒になったナオトが、俺の顔を見るなり…そう言って首をすくめた。

「そうか?」

「いつだったか…見た事あるぞ。こんなおまえ。」

ナオトは俺の肩にしがみつくと、覗き込むように顔を近付けた。

「ははっ。やめろよ。誤解される。」

「マノンとはこれぐらい顔近付けて話してるだろ?」

「バカ言うな。勘弁してくれ。」

ナオトは…何か察したのか、深くは聞いてこなかった。


八階でナオトがエレベーターを降りて、俺はそのまま最上階へ。

部屋に入ってすぐ、ドサリとソファーに沈み込んだ。


…さくらは貴司の妻で…

俺は周子の夫で。

もう…俺達はお互い手を離したはずなのに。

なぜか、こうして…会うチャンスがある。

もっとも、さくらはいつも複雑な顔をしているが。


さくらを手放して…俺は抜け殻だった。

だが、何とか踏みとどまっていられるのは…

今となっては、あの貴司の無茶な提案のおかげとも言える。

貴司の親友として、桐生院家に出入りする事…


さくらだけじゃない。

知花も千里も…最初は戸惑っていた。

だが、今は…二人とも俺を受け入れてくれている。

…さくらの事を思うと、戸惑いはゼロではないが…


廉の歌が、頭をよぎった。



思い出にしがみついてるって?

そうかもしれないな

でもそんな人生があってもいいだろ

これから輝くために

過去に励まされる事があっても


まさに…俺の気持ちを代弁している気がした。


俺は…人の妻になったさくらのお腹に手を当てて。

そこに居る…自分と血の繋がった子供を感じた。

思い出のさくらを思い浮かべて、小さく笑う。


過去を思って辛くなるのはやめよう…

どうせなら、幸せな事を考えたい…

そう切り替えてからは…

俺の幸せは、妄想でしかなくても…

それでも…

この手に残る感触を…

幸せと思って噛みしめる以外、他なかった。

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