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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/04 15:55:41

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セレモニーが終わって、会長室に一足早く戻ると。

コンコンコン

「はい。」

『…瑠歌です。』

「ああ、どうぞ。」

主賓であろう瑠歌が、部屋に入って来た。

パーティーが始まって、まだ…一時間も経ってない。

瑠歌は引っ張りだこのはずなのに。


「どうした?パーティーが退屈か?」

「いえ…ちょっと…お話がしたくて。」

そう言うと、瑠歌はソファーに座った。

「…どうした?」

俺も向かい側に座って、指を組む。

「…父のために、こんなに盛大なセレモニー…ありがとうございました。」

瑠歌はそう言って頭を下げて。

「…浅井さん達…みんな、泣いて…最後には笑って…すごく、嬉しかったです。」

小さな声で、そう言った。


…貴司の会社と共同制作した映像は…本当に素晴らしかった。

試写室で見た時は、感情移入しなかったが…

スタッフが持ち帰ったものを一人で見た時は…泣けた。

廉が、一度壊れたものを修復しようと想いを込めた作品だ。

…なかなか…出来る事じゃない。


コンコンコン

「誰だ?瑠歌がここに居るって嗅ぎつけて来た奴は。」

俺は瑠歌にそう言って笑うと、ドアに向かって。

「入れ。」

少し大きめに声をかけた。


ドアを開けて入って来たのは…

「何だ。おまえもパーティーに飽きたのか?」

晋だった。

「いや、高原さん探してたら、会長室やないか言われたんで…って、瑠歌、光史が探してたで?」

晋は瑠歌の隣に座りながら、笑った。

「何だ?話しって。」

立ち上がってコーヒーを淹れようとすると、瑠歌が付いて来て『あたしが淹れますから』と、俺を座らせた。

出会って間もないが、気持ちのいい子だ。


「…ホンマ、今日の事…色々ありがとうございました。」

晋はそう言って頭を下げた。

「今、瑠歌にも同じ事言われた。」

「俺は、瑠歌にも感謝せなあかん。ホンマ、ありがとな。」

その言葉に、コーヒーを淹れてる瑠歌は、照れたように首をすくめた。

「それにしても、会場に居てくれなきゃ困る二人がここに来るなんてな。」

俺が目を白黒させて言うと。

「実は…見て欲しい物が…」

コーヒーを淹れて運んできた瑠歌が、一枚の写真を差し出した。

テーブルに置かれたそれを、晋と二人で覗き込む。

「…俺と廉と…」

晋は、そこまで言って…言葉に詰まった。

…まだ、さくらの事を思いだしてないのか。


その写真は…どこなんだろうか。

誰かの家のリビングといった感じだ。

廉と晋が、さくらを挟んで笑っている。

…やっぱり…顔見知りだったんだな。


あの事件の後、晋も二階堂によって記憶の削除をされたに違いない。

そして、その時に…さくらの記憶も…


「…瑠歌。」

「はい。」

「この写真、数日貸してくれないか?」

俺は、それを手にして言う。

晋は…ずっと難しい顔をしたままだ。

「…この女性は、俺の大事な人なんだ。」

「…え?」

二人が同時に俺を見た。

「晋は覚えてないかもしれないが…おまえと廉が、彼女と俺を再会させてくれた。」

「…再会?」

「俺と彼女は、この時別れてたんだ。」

コーヒーを一口飲む。

「…今はもう、人の妻だけどな。」

「…高原さん…」

「記念に、この写真が欲しい。撮影班の所で同じ物を焼いてもらうから、貸しておいてくれ。」

思えば…あの頃は写真など撮らなかった。

廉と晋に挟まれて笑うさくらの笑顔が…とてつもなく愛しく思えた。


…今はもう…人の妻だと言ったのに。

それを欲しがるなんて、俺もどうかしてる。

だが…お守りと言うよりは…

思い出として、欲しかった。

それほどに、今日は…『思い出』に励まされる一日だったからだ。

人の思い出なのに、会場にいた面々はきっとみんな…自分の青春も思い出したはずだ。

俺も…思い出した。

ナオトと出会った頃。

そして、ダリアでライヴを続けた頃。

渡米して、周子と暮らし始めた頃。

…さくらと、出会った頃。


辛い思い出も多かった。

だが…幸せも…数えきれないほど、あった。


「…あたし、光史の実家で暮らす事になりそうです。」

瑠歌が、はにかみながら言った。

「そうか。それは良かった。」

「…だから、お写真、いつでも構いません。ただ…何となく誰にも見せられない気がして、光史にも内緒にしてるんです。」

俺は…その言葉に感謝した。

光史は…恐らく、さくらを知っている。

…さくらには、この写真の頃の記憶はない。


「…隠しておくのが辛かったら見せてもいいが…出来れば、そっとしておいてくれないか。」

「…え?」

「晋も思い出せないようだが…実は彼女にも当時の記憶がなくてね。」

「……」

「今の幸せを…壊してやりたくない。」

やっと掴んだ幸せだ。

三か月後、さくらは…子供を産む。

…貴司の子供を、産む。

そのさくらの幸せを守るためなら…

俺は…


何だってする。

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