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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/04 10:31:19

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三枚組のCDを深田から渡された時は…

正直、こんなに聴けない。と思った。

なぜなら私は、あれ以来…あまり音楽に触れなくなった。

…あれ以来。

さくらが、歌えなくなって以来。


千里君がTOYSにいた頃のCDと、知花の一枚目のCDは聴いたが…

どうも私には『ハードロック』は合わないのか…

数回聴いて、今では書斎に並んでいるだけになった。

だが…

深田が強く推奨してきた三枚組は…

いきなり、懐かしい匂いを運んでくるようなサウンドで始まり…

それは、今私が苦手としているハードロックでも、耳当たりの良いものだった。


さくらがステージに立った『プレシズ』を思い出した。

なるほどな…

サウンドが『現在』じゃないから…耳当たりがいいのかもしれない。

私もまだ若く…会社では尖っていなくてはならなく…

飄々とした笑顔の裏で、いつも唾や毒を吐く毎日だった。

父親と同世代の役員達の僻みを買いながら、日々闘いだった。


そんな私の楽しみは、海外出張だった。

仕事から解放されると、私は一人であちこちに何か新しい物と出会うために出向いた。

新しい物。

何でも良かった。

仕事からも、桐生院貴司という自分からも、解放されたかった。


そこで出会ったのが…カプリで歌うさくらだった。

元々、歌を聴く習慣はなかった。

桐生院にはテレビもラジオもなかった。

映像の仕事をしていると言うのに、私は本当に無知だったと思う。

むしろそれで良かった事も多々あったのだが。


カプリで見たさくらは…今まで私が見て来た誰よりも、目を輝かせていた。

その輝きに、私は惹かれた。

あの瞳は、何を夢見て輝きを放っているのだろうか。と。


すぐに…さくらのトリコになってしまった。

楽しそうに歌うさくら。

耳に優しく残る、さくらの歌声。

頬を赤らめて、拍手に手を振って応える姿。

全てが…今までの私の生活にない物で、新鮮だったのも確かだ。


…今も…さくらが大事でたまらない。

だが、私には多くの贖罪が有り過ぎる。

それを背負ったまま…さくらを幸せにし続けなくてはならない。

そのためには…

私は、一生嘘を突き通す。

すでに…千里君にも、嘘をついてしまった。

私には、精子があった、と。

誓と麗は私の子供だった…と。

勘のいい彼なら、もしかしたら疑うかもしれないと思ったが…

勘のいい彼は…私の予想以上に、純粋だった。


「……」

三枚組のCDの中に…

何度もリピートしてしまう曲がある。

『All About Lovin' You』と『Thank You For Loving Me』だ。

恐らく…高原さんが、さくらに贈った曲だろう。

それを聴く時、私はヘッドフォンをして…深く椅子に沈み込み、歌に集中する。

そして、高原さんの気持ちにリンクして…涙を流す。

…高原さん…あなたの想いを…こんな形で引き裂いてしまって、申し訳ない。

心の中での謝罪は…尽きる事がない。


だが…

私は一生を懸けて。

さくらを大事にし…

知花の幸せを願い…

そして…

さくらのお腹に宿った、冬には産まれてくる子供に…全てを託す気持ちでいる。


高原さんの、子供に…



全てを、託すんだ。

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