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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/03 23:04:27

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「高原さん。」

朝から呼び止められてばかりの俺は、いまだに会長室に行けてない。

ま…仕方ないか。

無理矢理、廉のセレモニーを詰め込んだのは俺だ。

「高原さん。」

また呼ばれて振り返ると…今度は…

「千里、この前は悪かったな。」

歩いて来た千里の肩を抱き寄せて、ポンポンとすると。

「ほんと、麗の奴…あ、色々気晴らしさせて下さったみたいで…ありがとうございました。」

千里はすっかり、兄貴の顔だ。

「麗のように不器用な子を見ると、放っておけなくてね。」

エレベーターに乗り込んでそう言うと。

「俺も、あいつを見てると自分を見てるみたいな気がして、放っておけなかったんすよね…」

千里も同感した。

「おまえと麗に似てる所が?」

「周りは全部敵。みたいに思ってた時期が。」

「ああ…」

「麗も、自分に味方は居ないって思ってたんじゃないすかね。」


家族みんなが知花を愛する中…

麗だけは、知花を敵対視していたと聞いた。

それは、麗の母親がさくらと知花を恨んで、そう言い聞かせていたらしいが…

元はと言えば、貴司が…

…今となっては、そんな事を思っても仕方ないな。


「麗は、あれからどうだ?」

「失恋でもしたんじゃないっすかね。大事にしてたキーホルダーをくれたり。」

そう言って、千里は自転車のキーについているペンギンのキーホルダーを見せた。

「ははっ。おまえが持ってると、可愛く思えないな。」

「…どういう意味っすか。」

千里は何も言わずに会長室までついて来ると。

「…高原さん。」

コーヒーを入れてる俺に向かって。

「ずっと聞きたかったんですが…」

「何だ?」

「桐生院の親父さんと、懇意にしてるのは…なぜですか?」

真顔で問いかけた。

「…おかしいか?」

コーヒーを二ついれて、一つを千里に渡す。

ソファーに座って一口飲むと…千里が遠慮がちに向かい側に座った。

「…親父さんは、高原さんからさくらさんを奪った形に…」

「それは、もういい。」

「…苦しくないんですか?間近で…別の人の妻になったさくらさんを見るのは…つらくないんですか?」

「……」

苦しくないか?

辛くないか?

…それは…

「もう、苦しみとか辛さみたいな物は…感じなくなった。」

「……」

「ただ、人の幸せに触れていたい。そう思うが…俺が桐生院に出向く事は、みんなの幸せの妨げになるか?」

俺の言葉に、千里は…しばらく何も言わなかった。

二人で静かにコーヒーを飲んで。

そして、千里が腰を上げたのは、無言になって10分以上経ってからだった。

「…高原さん。」

「ん?」

「上手く言えないんすけど…」

「……」

「俺、誰にも幸せになる権利はあるし、それは誰にも邪魔はできないって思ってます。」

「……」

「だから、誰かの幸せに触れる事で高原さんが幸せなら…それは、誰にも止める権利はないっすよ。」

そう言った千里は、柔らかい笑顔で。

少しだけ…ここ数日多忙だった俺の癒しとなった。

…まさか、千里の笑顔が癒しになるなんて、俺も…どうしたものか。

と、少し笑えた。

「また、来て下さい。華音と咲華が、歌ってくれますよ。」

「…それは、是非とも聴きたいな。」


千里が部屋を出て行って、俺は小さく溜息をつく。

もう…俺はいい。

自分の幸せなんて…


もう…

あの時に終わった。

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