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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/03 19:04:16

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麗を瞳の部屋に入れると、俺はマンションを出た。

そして…桐生院家へ。

「……」

インターホンを鳴らすにはためらう時間帯だな…と思っていたが、門の前に千里がいた。

少し離れた場所に車を停めて、千里に近付くと…

「…高原さん?」

俺に気付いた千里は、目を細めて俺に駆け寄った。

「どうしたんすか。」

「おまえは?」

「あー…いや…」

「麗が帰って来ないから待ってる?」

「…どうしてそれを…」

俺は桐生院家を見上げて。

「さっき、表通りで見かけて…うちに連れて帰ったんだ。」

低い声で言った。

普段なら、この時間にはもう灯りは消えているであろう桐生院家。

まだ…広縁にも灯りが見える。

「何か…あったんすか?」

「さあ…ただ、帰りたくないって泣くから。」

「……」

千里は俺の言葉に少し意外そうな顔をした。

まあ…そうだよな。

なんでそんな事、俺が知ってんのかって話しだ。

『麗』なんて呼び捨てにするほど、親しいとも思われていないだろうしな…

実際、麗も驚いたはずだ。


「警察に届けたりしたのか?」

「いえ…それはまだ。」

「なら…家族には、何とか誤魔化してやれないか?」

「まあ…それなら何とか…でも、いいんすか?」

「何が。」

「高原さんに…麗の面倒まで…」

千里は、何か言いにくそうに言葉を選んでいたが。

「…もう、こうなりゃ桐生院家とはとことん付き合う気でいるから、何も心配するな。」

俺は小さく笑いながら、足元を見て言った。

「…あいつ、俺が初めて会った頃は、知花の事を『あの人』なんて呼んで…あまり笑わない奴だったんすよ。」

千里も俺の足元を見ながら、そう言って。

「でも、今は…知花の事も姉と呼ぶし、さくらさんの事も母と認めて…よく笑うようになってたんすけどね…」

顔を上げた時は…麗を心配する家族の目だった。

「…おまえ、桐生院に来て変わったな。」

「…それは自分でもよく分かります。」

顔を見合わせて笑った。


それから…俺はマンションに帰り。

千里からの電話を待った。

千里は家族に『友達の所に泊まるって聞いてたのに、俺が忘れてた』と真顔で言って謝ったそうで。

義妹の突然の外泊を庇った。


翌朝、泣きながら眠ったらしい麗は、見事に顔を腫らせて。

「…こんな顔じゃ帰れない…」

また、泣いた。

「…何があったか知らないが、もっとしっかりしろ。」

ポンポンと、頭を撫でながら言うと、麗はキッと顔を上げて。

「どうせ…どうせ、あたしは…」

悔しさに唇を震わせた。

「……ふっ。」

つい、笑ってしまうと。

「なっ何よ~…」

麗は、ますます泣いた。

「ああ…悪かった。つい…可愛かったから。」

「ブスだって思ったクセに…」

「素直に泣く女は可愛い。」

「……」

瞳より小さいから、瞳が残していった服を着ても…だしな…

俺は顎に手を当てて考えて。

「出掛けるぞ。」

麗の腕を掴んだ。

「え…えっ、こんな顔で…?」

「綺麗にしてやるから。」

「……」


念のため、麗には千里が庇ってくれた事を伝えて、自宅に電話を入れさせた。

『なぜ千里さんにしか言わなかったの』と、祖母に叱られたらしいが…

それぐらいで済んで良かった。


「…こんなに…いいんですか?」

手にした紙袋を見て、麗が言った。

紙袋の中には、スカートやワンピース。

「後ろめたいなら、自分の小遣いで買ったと言えばいい。それぐらいの店を選んだつもりだから。」

今日は一日…麗を連れまわした。

エステに行って顔のマッサージをさせて、美容院で髪の毛も少し切った。

そして、服を選んで…

…瞳とも、知花ともした事のない事を…

まさか、麗とするとはな…。


「…何も聞かないんですか…?」

夕暮れのカフェで、麗がつぶやいた。

「言いたくない事は、無理に話さない方がいい。」

俺がそう言うと、麗は少しホッとした顔をした。


…麗は…貴司とは血の繋がりがない。

それは知らされていたが…

まさか…とも思っていた。

貴司が、何か話しの辻褄を合わせるために、作り話でもしているんじゃないかと。


「美味しい。」

フルーツパフェのクリームを口に入れて、麗が笑顔になった。

俺はそれを見て…自分が少し、何かから許される気がした。


…許される事など…

決して、ないのに…。

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