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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/03 17:43:48

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マノンが会長室から出て行った後、俺は周子の所に行った。

毎日行くわけじゃないが…行かないと気が済まない自分もいる。

責任とか、罪滅ぼしとか…

もう、愛じゃなく…そういう類の物になってしまっていても…

俺は、そうしなければいけない気がしていた。


「今、お薬で眠られてるんですよ…」

最近は、施設の自室ではなく…病院の部屋にいる周子。

病室に移ってからは、薬で眠らされる事が増えた。

他人を悪く言っているうちは…まだ良かったのかもしれない。

今は…

とにかく、死にたがる。

自ら命を絶とうと、その術を探る。


「…また来ます。何かあったら連絡をください。」

「あの…」

「はい。」

「娘さんは…?」

「ああ…出産したばかりなので…しばらくは来れないかもしれません。」

「そうですか…分かりました。」


瞳が生き甲斐だった周子。

だが…瞳は…周子が他人を罵倒する姿にショックを受けて、あまりここに来なくなった。

人を恨む周子を…冷たい目で見ていた。

…全て、俺のせいなのに。


少し足を伸ばして、さくらと暮らしていた家の近くまで行った。

車の中から、その外観を眺める。

今はすでに知らない人物がそこで暮らしていて。

きっと…俺の知らない幸せが、そこで温もりを持っている。

…たまに…とてつもなく空しくなる。

俺は…一人だ…と。


それから、あてもなくドライヴをした。

海に行ってみようかなどと思ってみたが…

周子と行った海は、今の俺には眩し過ぎて…

さくらと行った埠頭には…懺悔の気持ちで死にたくなってしまう気がしてやめた。


…誰かと…話したい。

だが、誰に話せる?

こんな事、誰にも話せやしない。


あてもなく車を走らせていたが、ようやく帰る気になってハンドルを切った。

自宅マンションに近付いた頃には、時計は0時を過ぎていた。

…帰る気にならないな…

事務所に行こうか…


「…ん?」

ふと…視線の先に…

俺はハザードを出して車を停めると。

「麗。」

窓を開けて、歩いてくる麗に声をかけた。

「っ……」

麗は驚いて顔を上げたが…

「…大丈夫か?」

車を降りて、麗に近付く。

「……」

麗は食いしばってうつむいたまま…何も言わない。

「こんな時間までどこで…」

「……」

「…家の人は知ってるのか?」

俺の問いかけに、麗は小さく首を横に振った。

「…送ろう。何か口実を考えておけ。」

麗の背中に手を添えてそう言うと。

「か…」

「ん?」

「帰りたくない……」

麗は足を止めた。

「……」

「帰…」

言葉を詰まらせて、ポロポロと涙をこぼす麗。

俺は前髪をかきあげると。

「うちに来るか?」

小声で言った。

「……」

麗が無言で見上げる。

「部屋数だけはあるから。娘が使ってた部屋に泊まるといい。」

「……」

「貴司には、俺が連絡しておくから。」

俺がそう言うと、麗は小さく頷いてゆっくり歩き始めた。

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