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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/03 16:53:48

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「……」

俺は会長室で一人…写真を眺めていた。

さくらの身体がまだ動かなかった時。

…クリスマスイヴ。

うっすらと雪の積もった庭にさくらを抱きしめて座って…

小さく舞い散る雪を楽しんだ。

吐く息が白くて…

寒かったはずだが…不思議と寒さは感じなかった。

さくらを腕の中に感じて。

さくらが…愛しくて…


サカエさんが撮ってくれた一枚。

俺にとって…これが…これだけが…

あの家での思い出となった。


…さくらは…あの日々が嘘のように元気になったし…

今は…人の妻だ。

そして…

妊娠している。


…いい加減…この想いを断ち切りたい…

苦しい…

そう思う俺もいる。

だが…

さくらの笑顔…

知花の幸せ…

華音や咲華の成長を、この目で見たい…感じていたいと欲を出す自分がいる。

これからも俺は…

自分で自分の首を絞め続けてしまうのかもしれない。

…それでも…

誰かが傷付くより、その方がマシかもしれない。


「…ナッキー…」

ノックもなく、マノンが部屋に入って来た。

俺は写真を引き出しにしまって……

「…どうした?顔色悪いぞ?」

マノンを見ると、真っ青な上に…倒れそうな足取りだ。

「どう…どうしたら…」

「あ?」

マノンはソファーに倒れ込むようにして座ると。

「…娘に…鈴亜に…男が出来た…」

小さくつぶやいた。

「……」

俺は、マノンを見下ろした後…コーヒーを入れるためにカップを出した。

「なあ、瞳ちゃんが千里と付き合うてた時、ナッキー嫌な顔してたよなあ?」

マノンは体を起こして、俺にそう問いかける。

「嫌な顔って…まあ、内心複雑だったが、俺は特に反対はしなかったぜ?」

「…あー…」

マノンはまた大きくうなだれて、ソファーに沈み込んだ。

「何だよ。相手が嫌な奴なのか?」

「…まこ…」

「は?」

「まこが相手やねん…」

「まこが相手なら心配はないだろ。ほら。」

マノンにコーヒーを差し出す。

「…誰が相手でも、イヤや~…」

マノンはそう言って、コーヒーも受け取らず…

ソファーに突っ伏して大袈裟に泣き真似をした。

「……」

小さく溜息をついて、コーヒーをテーブルに置く。

マノンの向かい側に座って…

「なあ、マノン。」

俺は声をかける。

「…なんや。」

「…娘に男が出来るって、そりゃあ内心穏やかじゃないが…それでも娘が笑ってくれてたら…いいんじゃないか?」

「……」

「俺は今、瞳も知花も幸せで…それが俺の幸せでもある。」

「ナッキー…」

「圭司と千里には…感謝の気持ちしかない。」

「……」

本当に…そうだ。

瞳が産まれた時、俺は…さくらと暮らしていて。

その存在を…知らなかった。

周子は、どんな気持ちで…瞳を産んで育てていたのか…

認知した後も…俺は自分の事に必死で…

さくらを失いたくない一心で…

周子と瞳をないがしろにした。


だけど、瞳が俺を頼って日本に来て…

何年も会わなかったのに…娘と父親として…絆が出来た。

どんな事をしてでも…瞳を幸せにする。

そう思っていたが…

瞳を幸せにしたのは…俺じゃなく、圭司だ。


そして…知花。

まさか、さくらが俺の子供を出産していたなんて…

自分の娘と知らず出会った知花。

可愛いと思うより先に、ボーカリストとしての才能に嫉妬した。

…バカだな…

さくらと俺の血を分けた娘だ。

才能がないわけがない。


だが…知花は…貴司の娘だ。

俺の娘であって、そうじゃない。

さくらに死産と告げた事実は許し難いが…

ずっと大事に育ててくれた貴司には、今となっては…感謝しかない。

実際、知花は桐生院家で…千里までが婿入りをして…幸せそうに笑っている。

…俺には…そうさせてやれない。


「…なんや、ナッキーの話聞いたら…俺、ちっさい事言うてるなー思う…」

ソファーにうずくまったまま、マノンが言った。

「…まあ、人ぞれぞれだ。でも、るーちゃんの親父さんはどんな気持ちだっただろうな。」

俺がコーヒーを飲みながら言うと。

マノンは眉間にしわを寄せて起き上がった。

「何が?何が、どんな気持ちやったって?」

「…茶髪の、大きな夢だけは持ってるけど保証はない男が乗り込んで来たんだろ?」

「う…っ…」

「しかも、るーちゃんは相当な箱入り娘だったよな。」

「……」

「おまえ、よく殺されなかったな。」

俺が笑いながらそう言うと、マノンはガックリと首を下げて。

「…まこ…なんであいつ…ええ奴やねん…」

泣きそうな声で、つぶやいた。

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