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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/03 12:24:06

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「……」

あたしは…颯爽と一歩を踏み出した…

のは、いいけど。

「うーん…ぜんっぜん分かんない…」

あたし、ルカ・ホーキンスは…計画を練りに練って来た割に…

「…地図…めちゃくちゃだよ…」

いきなり、つまずいてる。

何、この細かい路線図!!


長い髪の毛をかきあげて、そばを通った男に声をかける。

「ごめんなさい。この場所分かる?」

「え…えっ?」

「教えて?」

「は…はい…」

早く教えろよ。

あたしは地図を手渡しながら、笑顔の裏で毒を吐いた。

「き…君、モデルか何か?」

「ふふっ、どうかしら。」

「すごく…可愛いね。よく言われない?」

「そんな事ないわよー。」

早く教えろっつーの。


…あたしの母親は、ベーカリーの店員だった。

だけど、あたしはその母親に抱かれた記憶さえ、ない。

母は…あたしが幼い頃に亡くなった。

信じて待っていた人を失って…絶望のあまり…

あたしを残して、死んでしまった。


16になってすぐ…母の遺書と…遺品である日記をもらった。

あたしは、毎日毎日…それを繰り返し読んだ。

初めて、あたしの父親と出会った日の事。

『今日来た日本人に一目惚れ!!神様!!出会わせてくれて、ありがとう!!』

そして…初めて言葉を交わした日の事。

『彼があたしのネームを見て、『いつもありがとう、ダイアナ』って言ってくれた!!』

それから…デートに誘われた日の事。

『神様…夢じゃないかしら?夢だったら覚めないで欲しい…彼に…デートに誘われるなんて…』

デートの日、意外にシャイな彼に…ますます惹かれた事。

『見た目、すごく遊んでるのかと思ったのに…手を繋いだだけで真っ赤になってた。あたし…彼の事、すごく好きになりそう…』

日記には…母の想いがたくさん綴られていた。


間もなくして、二人は付き合い始めて…母は、あたしを妊娠した。

だけど…

『信じられない…廉には…好きな女がいた…』

『娘の名前は瑠歌…廉の好きだった女…瑠音から取ってたなんて…』


…本当に…信じられない…


あたしの父親である丹野廉は…

銃弾に倒れた。

今となっては、過去の人。

誰も…あたしが、悲劇のボーカリストと言われた男の娘だなんて…知らない。


あたしは…母を苦しめた女を…

不幸にしてやる。

そんな気持ちで…日本に来た。


「…ここか。」

あたしは地図を片手に、そのお店に入る。

思ったより大きなお店…

「いらっしゃ…」

カウンターに近付くと、中に居た男の人が…

「…廉…」

あたしを見て、いきなり…そう言った。

「あ…あ、すまない。女の子なのに…」

あたしを廉って呼んだって事は…

丹野廉を知ってる。

あたしは、悔しい事に…父親に生き写しらしい。

「…宇野…誠司さんですか?」

「…え?」

あたしの問いかけに、その人は目を丸くした。

「どうして…俺を?」

「…父と…仲が良かったんですよね?」

「…って事は…廉の…娘さん?」

「はい。」

「ああ…まさか…廉が結婚してたなんて…」

「…結婚は…してませんでした。」

あたしは荷物を置いて、カウンター席に座る。

「結婚…するはずだった日に…」

「……そうだったのか…」

あたしは、母が父の後を追った事。

それから、親戚もなく…施設で育った事。

そして。

あたしの名前の由来を…話した。


「まさか、好きだった女の名前からだなんて…思いませんでした。」

あたしの言葉に、誠司さんは苦笑い。

「君…行くところはあるのかい?」

「…父が好きだった人に…会ってみたいと思って…」

「……会ってどうするんだい?」

「……」

そんなの…言えるわけないじゃない。

あたしは…

今でこそ、『父』なんて言ってるけど…

丹野廉を父親だなんて思った事は、一度もない。

母を…不幸にした男。

あたしを…不幸にした男。

そして…

武城瑠音。

彼女が大事にしてるものを…

壊してやりたい。


♪♪♪

ふいに電話が鳴って、誠司さんがそれを取る。

「もしもしダリア…ああ、何だ。うん。ああ…」

誠司さんは話し中にチラリとあたしを一度見て。

「おう。待ってる。」

そう言って、受話器を置いた。

そして…カウンター越しに、あたしに。

「今から、るーの息子が来るよ。」

柔らかい笑顔で言った。

「…『るーの息子』…?」

「君が会いたがってる、廉の想い人だった人…の、息子。」

「……」

こんなに早くチャンスが!?

あたしは丸い目をしてしまったかもしれない。

そんなあたしを、どう解釈したのかは分からないけど…

「とりあえず、あの奥の方の席に座っててくれるかな。」

「どうして?」

「悪いようにはしないよ。」

「……」

あたしは…この時気付かなかった。

この、誠司さんが。

あたしより、一枚も二枚も、三枚も四枚も…うわてで。

一瞬にして、あたしの思惑とは別な事を思いついてた事に…。

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