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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/02 21:05:39

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「…キー。」

「……」

「ナッキー。」

「……」

「おーい。」

「……」

「ナッキー!!」

ドン。

「うおっ…な…何だよ。」

椅子から落ちかけて、驚いて顔を上げると。

「それはこっちのセリフだ。何度呼ばせりゃ気が済むんだ。」

ナオトが眉間にしわを寄せて、腕組みをして言った。

「…呼んだか?」

「何度も。」

「…それは悪かった。」

「…何かあったのか?」

「あ?」

「周子さん、調子悪いとか。」

「…いや、大丈夫だ。」


周子は…良くなったり悪くなったり。

最近、さくらを殺すとは言わなくなったが…

瞳の事が分からなくなったり…

俺の事も、分かったり分からなかったり。


それに慣れてくると…自然と、分からないままでもいい。と思い始めてしまう。

周子が誰かを憎んで殺したいと叫ぶより。

何ももか忘れて…穏やかに笑顔を出せる日々の方が…

周子にとっても、幸せな気がしてしまう。

…そこに、自分はなくても。


『さくらが妊娠しました。』

貴司から電話でその報告を受けた時…

俺は、不思議な気持ちになった。

さくらは…人のものなのに…


貴司から、人工授精の話を持ちかけられたのは…去年の春だった。

それ以降、貴司は何も言わなかったし、諦めたのだと思っていたが…

年が明けてすぐ、マンションに一人でやって来て。

「…私が治療を受けても無駄な事が分かりました。」

うなだれた様子で言った。

「…そうか…」

コーヒーを淹れながら、沈んだ貴司の様子を眺めた。

残念だったな…などと声をかける気にもならなかった。

それほどに貴司は落ち込んでいたからだ。

なのに俺は…

心のどこかで、さくらと貴司の間に子供が出来ない事を…ホッとしていたのかもしれない。

…なんて男だ。

さくらを大事にしてくれている貴司が、こんなに落ち込んでいるのに…


「…高原さん…」

「なんだ。」

「…あなたの精子を…くれませんか?」

「……」

貴司の前にコーヒーを置いて、俺は向かい側に座った。

「…前にも言ったが、応えられない。」

「なぜ…」

「さくらにちゃんと話せ。そして、今の家族を大事にしていけばいい。」

諭すように、ゆっくりと…そう言ったが…

貴司は。

「…さくらに…償いたいんです…」

ますます、うなだれた様子でそう言った。

「償いたい?」

「…醜い嫉妬で嘘をついて追い出して…知花を育てさせなかった…」

「……」

「そして…あなたから引き離した…」

「…それは、でもさくらが決め」

「さくらは。」

「……」

「さくらは…あなたを愛しています。そして、それでも私は…そんなさくらが愛しい。」

「…おかしなことを言うな。」

俺は小さく笑うと。

「もう、俺達の間には何もない。さくらはおまえの妻だし、俺には周子がいる。」

キッパリと、そう言ったが…

「お願いです。さくらに、子供を作らせてやって下さい。」

貴司の耳に、それは届いてないようだった。

頭を低く下げて…それは少し嫌な光景にも思えた。


「…もし、また赤毛が産まれたらどうするつもりだ?おまえはさくらの信用を失うんだぞ?」

「…覚悟はしてます。」

「…おまえだけじゃない。俺だって、周りからの信用を失う。」

「…私が…脅したと言います。」

「何言ってんだ。」

「…高原さん。」

貴司は顔を上げて俺を見据えると。

「あなたには…私の願いを叶えてもらいます。」

今までになく…低い声で、早口に言った。

「…おまえに脅されて屈するようなネタは俺にはない。」

そう言ってコーヒーを飲む。

「…これを。」

ふいに、貴司がカバンから書類を取り出した。

「…?」

首を傾げてそれを受け取り…

「……え?」

俺は書類から、貴司に視線を移した。

「こ…これは…」

「…真実です。」

「……」

「それを公表すると、きっと…大変な事になりますよね。」

「…貴司、おまえ…」

俺は…書類を手に…震えた…。

まさか、まさか…こんな事が…

「これだけは…使いたくなかった。だけど…仕方ないんです。」

「……」

「高原さん…お願いします…」

貴司は再び俺に頭を下げて。

「あなたの…精子をください。」

絞り出すような声で…そう言った。

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