ブログランキング11

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 2466
  • 読者 654
  • 昨日のアクセス数 36386

テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/02 14:17:42

  • 72
  • 0

「環。」

和館に向かって歩く廊下で、名前を呼ばれた。

「って…まだ勤務中だった。すいません。」

「いいよ、沙耶。俺はもう今日は終わったつもりだし。」

俺の言葉に沙耶は首をすくめて。

「向こう、大変だったか?」

ポケットに手を入れて、近付いてきた。

「ああ…頭だけじゃ…」

「……」

「ま、一度に好転はしないさ。地道にやっていくしかない。」

俺がそう言うと。

「…俺と万里だって、向こうに行く気はあるんだぜ?」

沙耶はそう言って、俺の肩に手を掛けた。

「おまえ一人が背負うなよ。」

「…背負うなんて、カッコいい事はしてないつもりだけどな。」

「俺から見たら、十分カッコ良く背負ってるけどな。」

沙耶とそんな話をしてると…

「昔っから、おまえの悪いクセ。」

前方から、万里がやって来た。

「もっと俺らにも頼れよ。」

「そーそー。」

「それとも、お嬢さんと結婚したせいで、俺らとはつるみにくくなったか?ん?」

万里は沙耶と反対側の俺の肩に手を掛けた。

「まさか。」

「なら、向こうでの詳しい話、聞かせてもらうために…近い内、飲みに行こうぜ。」

「おー、賛成。」

「…じゃ、明後日の夜にしてくれ。」

「オッケー。」

「じゃあな。」

それぞれ散らばって歩いていく、沙耶と万里の背中を見つめる。


小さな頃から兄弟のようにして育った。

俺が織と結婚して…俺の立場が上になった今も、こうして俺を支えたり励ましたりしてくれる。


「あ。」

ふいに万里が何かを思い出したように戻って来て。

「桐生院麗。」

俺の前まで来て、そう言った。

「…海が捻挫させた女の子?」

「ああ。坊ちゃんの彼女らしい。」

「え?」

久しぶりに…驚いた気がする。

坊ちゃんの…彼女?

「坊ちゃんが?」

「いや、今日来てた本人が。」

「…都合のいいように言ってるとか?」

「うちで手当てした日、坊ちゃんが送って行って…しばらく帰って来なかったからな。あの時、何かあったのかもしれない。」

「…そうか。」


坊ちゃんは…

織の事が好きだ。

本人から聞いたわけではないが…

昔から、二人で助け合って生きて来た織と坊ちゃん。

強く深い絆で結ばれた二人は…

もう、『お互い』しか見えていなかったのだと思う。

…織も、坊ちゃんの事を…


「手当たり次第に口説いてたタイプの女の子とは、だいぶかけ離れてるけどな。」

そう言って、万里が笑った。

確かに…坊ちゃんが口説いて連れて歩いてたのは、イケイケな雰囲気の、派手な女子大生だ。

どう見ても、本気じゃない。


「…心配すんなよ?」

万里が小さく笑って言った。

「…何が。」

「お嬢さんは、おまえに夢中だよ。」

「………知ってる。」

「ははっ。ごちそーさまでした。じゃ、早く休めよ。」

「おう。」


…そうだ。

織は…俺に夢中だ…。

それは、触れるたびに思う。

俺も同じ気持ちだからこそ…分かる。

分かるから…

苦しくなる事もある。


織が…

その特別な想いに、気付かないでいてくれたら…と。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

9/25 編集部Pick up!!

  1. 子持ちが羨ましくて退職を決意
  2. 友人の結婚式に呼ばれず仲間外れ
  3. 作ったご飯を毎日こっそり戻す夫

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3