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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/01 18:30:47

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「もったいないですよ。」

あたしは、知花ちゃんにそう言われて…内心…複雑だった。

あたしの、腹違いの妹。

知花ちゃんは…

世界的に有名なバンド、SHE'S-HE'Sのボーカリスト。

あたしは…知花ちゃんの歌を初めて聴いた時、震えが止まらなかった。

怖かった。

こんなに歌える女の子がいるなんて…って。

そう思ったのは、あたしだけじゃなかった。

知花ちゃんの存在だけじゃなく…SHE'S-HE'Sのプレイを耳にしたアーティストは、だいたい少し自信喪失の状態に陥ったと聞いた。

それほどの…実力者揃い。


だけど、あたしは…知花ちゃんの才能を認めた途端…彼女の歌が大好きになった。

そして…

あたしは、自分が歌う事をやめる時も…

彼女の歌を聴いて、諦めがついた。


「…知花ちゃんぐらい歌えれば、あたしも…頑張ろうかなって思えたかもしれないけど…」

嫌味でも何でもない。

素直な気持ちだ。

あたしは、高音は出ても低音が弱い。

取り組む方法はいくらでもあったけど…

あたしに…そこまでの熱が無くなった。

…誰のせいでもない。

あたし自身の問題だ…。


少しだけ笑って、お茶を飲む。

桐生院家の立派な庭を見ながら、知花ちゃんとあたしと、さくらさんとのささやかなお茶会。

今日は、お茶をしませんか?と、知花ちゃんに誘われた。

そして…話がある…とも。


つい、この間…あたしは、さくらさんを訪ねてここに来た。

父さんと結婚して欲しい…と。

そして、出来ればあたしも…さくらさんを『母』と呼びたい…と。

だけど、さくらさんは静かに笑うだけだった。

母である藤堂周子の…願いでもあるのだけど…

それは、叶える事が出来るのだろうか…。


「瞳さんは、低音こそ苦手かもしれないけど…」

知花ちゃんは、いつになく…真顔。

「あっ、気にしてたのに。」

あたしは少し大げさに言ってみたものの…

「すいません…でも…高音は、武器になるほどの音域じゃないですか。」

知花ちゃんは、変わらず真顔で言った。

「…高音だけが出てもね…」

つい、溜息が出てしまう。

父さんから、夏のイベントで歌わないかと言われたけど…

あたしには、自信がない。

母のトリビュートアルバムが、事務所を挙げて制作されていると言うのに…

あたしは、それにも参加しなかった。

…参加、したくなかった。

あたしの中で…

あの数年間の間に、母の存在が恐ろしく変わってしまったまま。

あたしは…それを許せずにいる。


「あたし、瞳さんが歌った周子さんの曲、大好きです。」

知花ちゃんが…柔らかい笑顔で言って。

「特に、あの…恋してるならもっと…って、可愛い歌。」

あたしがファーストアルバムに入れた歌のワンフレーズを、口ずさんだ。

それは、母の昔の歌で…

アメリカのシンガーが歌っていた曲だ。


「…恋してるなら…誰だって魔法が使える…」

ふいに、さくらさんが続きを口ずさんだ。

「…聴いて下さったんですか?」

あたしが驚いて問いかけると。

「あ…ごめんね…瞳ちゃんのCD、私は最後のしか聴いてないんだけど…今の歌…」

さくらさんは、何かを思い出すように…

「私も…大好きな歌だった気がするわ…」

さくらさんにそう言われたあたしは…

なぜか…泣きたくなった。


「瞳さん。」

「ん?」

昔の歌の話になって…

少しセンチメンタルになったのかもしれない。

あたしは、自分が歌っていた事さえ…忘れたいと思った時期があったのに。

…今は…

もう少し、頑張れば良かったのかな…なんて思ってしまう。


あたしがため息をつきそうになった時、知花ちゃんが言った。


「瞳さん…SHE'S-HE'Sで歌いませんか?」

「……」

驚いて言葉が出なかった。

あたしは、何度も瞬きをして…知花ちゃんを見た。

それは、さくらさんも同じようで…

「知花…それって…」

驚いた顔で、知花ちゃんに問いかけてる。

「あたしより上のキーを歌えるのは、瞳さんしかいません。」

その言葉に…あたしの中で、少し火が付いた。

コーラス…?

「あたしに…知花ちゃんのコーラスをしろって言うの?」


コーラスというポジションが、気に入らないわけじゃない。

立派な役目だ。

だけど…あたしの、ボーカリストとしてのプライドが…僅かながら、残っていたのかもしれない。

そりゃあ、知花ちゃんの座を奪うなんて気はないけど…

だからって、コーラスという位置に立つほど、あたしは…

「コーラスじゃありません。」

「…じゃあ、何なの…」

少し、声にトゲがあったかもしれない。

だけど、知花ちゃんは変わらず淡々と…

「バックボーカルです。」

あたしの目を見て、そう言った。

「……バックボーカル…?」

「確かに、歌う箇所はメインボーカルに比べると少ないかもしれません。でも…」

「……」

「メインボーカルより、ハードなパートです。」

「……」

知花ちゃんの目は…強かった。

本気だと思えた。

あたしは…知花ちゃんから視線が外せなくて…

しばらく見つめ合ったままでいると…

「…素敵。」

さくらさんの真剣な声が聞こえて、やっと視線が外れた。

「素敵だわ…知花の声に、瞳ちゃんが本気でぶつかったら…」

さくらさんは、そう言って…両手で自分を抱きしめるみたいにして。

「考えただけで…鳥肌がたっちゃう。」

真顔で、そう言ってくれた。

だけど、そこで知花ちゃんが…

「母さん。」

「ん?」

「母さんも、ボイトレ始めて。」

「…え?」

「下のパート、歌って欲しいの。」

「……」

「……」

あたしとさくらさんは、二人して…呆然とした。

「夏まで、そんなに時間がないわ。お願いします。二人とも…高原さんのために…この大イベントを成功させるために、力を貸してください。」

知花ちゃんが頭を下げて…

さくらさんは、口を開けたまま驚いてて。

あたしも…それは同じで…

だけど…

「…夢みたいな話ね…」

さくらさんが…つぶやいた。


その、夢みたいな話…って。

さくらさんは、どういう意味で…言ったのだろうか…。

------------------------
この次のお話から、また昔に戻ります。

時空列があちこち過ぎてごめんなさい~^^;

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