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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/01 12:53:20

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それは…

夢のような光景に思えた。

スポットライトに当たるのは…どれぐらいぶりだろう。

アメリカでの修行中、ライヴにも出たが…

比べものにならない。

この、快感。


世界のDeep Redと言われたバンドのギタリストとキーボーディストがいるんだ。

それに引っ張られるようにして、ここ数か月で驚くほど成長したアズ。

そして、俺から見たら十分ベテランなのに…これまた朝霧さんとナオトさんに敬意を払うかのように、進化を見せた臼井さんのベース。

寝耳に水状態で、一番戸惑ったのはドラムの京介だろうが…

誰よりも、スタジオに入ってた時間は長い。

ここまで、よく仕上げてくれた。

…俺の、我儘で呼び集めたメンバー。

高原さんが、よく許してくれたと思う。

だから…

その期待に応えるためにも。

俺は、今度こそ…

世界に出る。



「Yeah!!」

客席に向かって指を差すと、ちゃんと…大歓声で応えてくれる。

あー…俺、戻って来れたんだな。

まずは…その実感にシビれた。

客席は、俺の想像以上に…盛り上がってくれた。

そりゃそうだよな。

こんなサイコーのメンバーの初ステージ。

盛り上がらないわけがない。


二曲終わった所で、朝霧さんにMCを任せた。

なんだかんだ言っても、喋るのが上手いのは朝霧さんだ。

ギターテクニックとのギャップもすごい分、客は朝霧さんが喋ると必ずと言っていいほどファンになると思う。


バスドラの横に置いていたドリンクを手にして、一口。

手持無沙汰にスティックを回していた京介と目が合うと。

…サイコーだな。

京介は、そう口を動かした。

ふっ…。

俺は少しだけ目元を緩めて、小さく笑った。


「さ、じゃあそろそろ次の曲に。もう、いってもええんやろ?」

十分喋ってくれた朝霧さんが、俺を振り返る。

「いいっすよ。」

「神千里、初めてのラブソングをどうぞ。」

なんだよ、そのフリ。

俺は小さく笑いながら、朝霧さんの肩に手を掛ける。

「…千里、前の方でおまえの薬指が話題になってるで。」

すれ違いざまに、朝霧さんが言った。

「知花、どっかで見てるはずやから。おまえの気持ち、しっかり伝えたれ。」

「……ういっす。」

俺はマイクを持つと…客席を見渡して言った。

「…Always」

ナオトさんのピアノだけのイントロ。

俺が初めて書いた…ラブソング。

…くっそ恥ずかしいけどな。

くっそ恥ずかしいけど。

…知花。

おまえのために、歌う。



傷付けるつもりなんて いつもあるわけがない

泣かさせるつもりなんて とてもあるわけがない

幸せにしたいとか 隣にいてくれとか

そんなありきたりな言葉はなくてもいいほど

俺達は繋がってると信じていたかった


やがて来た嵐が二人を引き裂いて

自分の弱さを 自分の愚かさを知った


過去は変えられないけど

もしまだ間に合うなら

幸せにしたいとか 隣にいてくれとか

そんなありきたりな言葉から始めてみたいんだ


残した傷を俺に消させてほしい

もしまだ間に合うなら

その手を取って 甘い唇を

どんな嵐にも負けない強さで 守るから


信じて欲しい

いつも俺が想うのは

ただ一人だけだと




朝霧さんとアズが、絡み合うようなギターソロを弾いて。

俺は、客席にライトが当たるのを、前髪をかきあげながら眺めた。

そして、その後方に…知花を見付けた。


「……」

俺は少し、動きが止まったかもしれない。

まさか…来てるとは思わなかった。

SHE'S-HE'Sはレコーディングの最中だ。

聴いて欲しい気持ちは、もちろんあったが…

まさか…


知花は俺を真っ直ぐに見て、涙をこぼした。

…おまえ…何だよ…

…可愛いじゃねーかよ。


「じっくり聴いてもらえたでしょうか。」

こっぱずかしくて、少しうつむき加減にそう言うと、客席の至る所から冷やかしの声が上がった。

「次、最後だから、みんなで跳ねようよ。」

アズがそう言うと。

「アホな。俺を殺す気か?」

朝霧さんがすかさず突っ込んだ。

「お年寄りはいいです。40歳未満の人は、一緒に跳ねてねー。」

「憎たらしい奴め…よし!!跳ねるで!!ナオト!!おまえもや!!」

「え…えっ!?俺は無理だって!!」

「よし!!臼井!!おまえもや!!」

「…お供します。」

ははっ。

俺は京介と顔を見合わせて笑った。

とんだエンディングだ。

「よーし。おまえら、みんな跳ねろよ!!」

俺が客席に向かってそう言うと、会場は大きな歓声に包まれた。

俺達F'sの初ステージは、公開テレビ収録。

本当は…世界のDeep Redの二人に、そんな事はさせたくない気がした。

だが、二人は…

「一からやもんな。俺は全然ええで。」

「俺も賛成。そこからまた世界へ行けばいいだけさ。」

いとも簡単に…小さなスタジオから世界へ、なんて…

全く、気持ちのいい偉大な先輩達だ。


そんな大御所と一緒に、跳ねて、跳ねて、跳ねて。

俺は…歌うのがこんなに楽しいなんて、知らなかった気がする。

アズの首を抱き寄せて、一緒に歌った。

楽しくて、楽しくて…

この時間が、ずっと続けばいいのにと思った。


…こんな気持ち…初めてだ。

俺、やっと音楽に出会えた気がする。


歌が終わって、最後に京介のカウントで全員で跳んで。

「Thank You!!」

終わった瞬間、そう言って客席に手を上げて…

大歓声を受けながら、俺達はステージを後に…しながら。

俺は、知花を見た。

知花の隣には、聖子。

その反対側には、朝霧。

知花も…俺を見ていた。


…俺は、おまえのために歌ったぜ?

すると、聖子が知花の手を持って、ヒラヒラと…


「…え…」

その、知花の左手の薬指に…

指輪…

知花は恥ずかしそうに手を引っ込めて、顔を赤らめた。

俺は…

「きゃー!!」

「神くーん!!」

客席に飛び降りて、伸ばされる手をかき分けて…


「知花…」

「えっ…」

「…知花…」

「……」

知花を…

ギュッと、抱きしめた。


「みなさーん!!退場してくださーい!!」

警備員達の声が、響き渡る。


「…ち…千里…みんな…見てるけど…」

腕の中で、知花が軽く暴れる。

「構わねーよ…」

「でも…」

「もう少しだけ…」

「……」

「…知花…」

「…ん?」

「…呼んでみただけ…」

「……バカ…。」

ふっ…


おまえ…やっぱ…


サイコーに…


可愛いじゃねーかよ…。

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コメント4

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6592577・09/02

    ヒロさん
    ありがとうございます😊
    どうもその泣き顔…スプラッタ…(๏д๏)ギャー

  2. ヒカリさん(99歳)ID:6592576・09/02

    イレーヌさん
    ありがとうございます😊
    ステージでこんな熱い歌を歌われて、客席に走って来られたら、私ならダッシュで逃げるかも⁉︎←
    あっ…でも千里だもんな…
    両手広げてウェルカム…(*´∀`*)

  3. ヒロさん(45歳)ID:6592362・09/01

    ギャァ〜(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

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