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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/01 10:06:45

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「おっ…」

「あっ…こんにちは。」

二階のエレベーターホールで、まこと出くわした。

両手いっぱいに何かを抱えて…ふっ…本当にまこは…大人になっても子供のように思えてしまう。

「買い出しか?」

「ジャンケンに負けちゃって。」

「そうか。」

「…あの…」

「ん?」

まこは少し口ごもった後…

「…この間…知花のお母さんに会いました。」

「……」

つい…返事が出来ないまま、エレベーターのドアが開くのを眺めた。

「知花からも…父からも…知花が高原さんの娘だって話、聞きました。」

「…そうか。」

エレベーターに乗り込んで、ボタンを押す。

「僕…ずっと忘れられなかったんです。」

「…何が。」

「知花の、お母さんの声。」

「……」

まこは、エレベーターの扉を見たまま。

「小さな頃、不安になってると…いつもあの声に助けられたなって。」

「…助けられた?」

「Deep Redのワールドツアー、後半戦について行ったのはいいけど、超ホームシックになったって父に聞いて…」

「ああ…あったな。」

あの時…まこは誰にも懐かず。

なのに、さくらの声を聞いた途端…

「…あの時、もうさくらの事を知ってたのか?」

あの車内での光景を思い出して、まこに問いかける。

確か…まこは車の中で、突然さくらに抱きついた。

「僕は声しか覚えてないんですけど…父が言うには…」

「……」

「母が弟を妊娠中、事故に遭って…助けてくれたのが、さくらさんだ…って。」

「…え?」

それは、初耳だった。

愛美ちゃんが事故に遭った…確か…それもツアー中の話だ。

俺達が帰るまでそれを内緒にしていた愛美ちゃん。

確か、ナオトとマノンはやきもきしていたな…

「一晩中、母の手を握って…Deep Redを歌ってくれていたそうです。」

「……」

「僕、誰かの膝で眠りながら、その歌を聴いた覚えはあって…」

「…だから、ツアーでさくらに会った時、声を聞いて…安心したのか。」

「たぶん…。僕、高校の時、知花と選択科目で一緒になって…知花の声聞くと眠くなって、よく寝ちゃってたんですよね。」

まこはそう言って、照れくさそうに笑った。

「今思えば、知花の声にも安心しちゃってたのかな。」

「…ふっ…」

今になって…

あの頃の、俺の知らないさくらの話を聞けるとは思わなかった。


あの時…

まこは…さくらから離れたがらなくて。

ステージが終わった後も、さくらを探していたと聞いた。

そして、昼間に行った公園が楽しかった事。

一緒に食べたケーキが美味しかった事を…

興奮しながら、ホテルで話した。


…知花が死産と聞かされたさくらは…

まこを、どんな気持ちで抱きしめていたんだろう…

…ベッドのサイドボードにいつも置いていた、木彫りの天使。

あれは…

さくらが贖罪の念で持ち続けていたものだったのだろうか…。


その数時間後、ナオトが会長室に来た。

「さっき、まこに会った。」

俺がそう言うと。

「同じ事務所に居るんだから、そりゃあ会うよな。」

ナオトはケラケラと笑った。

「…この前、さくらに会ったらしい。」

「ああ…聞いた。」

「…愛美ちゃんが事故に遭った時の事、教えてくれないか?」

「…さくらちゃん、おまえには話してなかったみたいだな。俺、ケリーズに行って彼女に謝ったんだ。」

ナオトは、優しい目で…そう言った。

「謝った?」

「…俺、おまえとさくらちゃんがヨリを戻したの、面白くなさそうに言ったからさ…」

「……」

「でも実は、今も愛美はあれがさくらちゃんとは知らないから。」

「…面識はなかったからな。」

「いや、違う。」

「?」

ナオトは苦笑いしながら。

「さくらちゃんが、オードリーヘプバーンの格好してた時だからだよ。」

「………えっ?」

あの…あの時か…?


「あの時、彼女は愛美を助けてくれて…あの格好のまま、病院で付き添ってくれてたんだよ。」

「……」

つい、口を開けてナオトを見てしまった。

そんな俺の様子に、ナオトは声を出して笑った。

「彼女、自分がした事をナッキーに話してないみたいだったから…俺からも話すのはやめとこうって思ってたけど…もう時効だよな?」


スリットからのぞいた足が魅力的だった…さくらのオードリーヘプバーン…

「…あの日さくらは…誕生日で…」

「え…っ?」

「俺がツアー先から電話した時は、留守電だった…病院にいたのか…」

「そうだったのか…それは…さくらちゃんには悪い事したな。」

「悪いなんて思っちゃいないさ。むしろ…あいつは…」

「……」

「…っと、あいつ…」

前髪をかきあげてると…少し泣けてきた。

自分の優しさを、当たり前と思うさくら。

当たり前の事なんて…俺に話さないよな。

それに、確か愛美ちゃんは、るーちゃんにも絶対秘密にしてくれと言っていた。

…それなら、さくらも話すはずがない。

「…ナッキー。」

ナオトが肩を抱き寄せてくれて、俺は我慢する事なく…涙を流した。

…初めてかもしれない。

こんなに…素直に涙を見せるのは。


さくらがいなくなった時、俺は壊れた。

だが…今は…

本当は壊れている事に、気付かないふりをして…

大丈夫。と言い聞かせながら…


「年取ると、涙もろくなるから、仕方ない。」

そう言うナオトも…なぜか一緒に泣いてくれてて。

「…いい話を…聞かせてくれて…サンキュ…」

そう言った俺の頭を、くしゃくしゃにした。

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コメント2

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6592578・09/02

    ココロさん
    ありがとうございます😊
    こんな所で、あの話を聞くなんて〜!
    私もよく思い出して書いた!←

  2. ココロさん(77歳)ID:6592136・09/01

    わたしも泣きそう(>_<)

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