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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/01 09:00:40

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「…さくらに、もう一人産みたいと言われました…」

夜景の見えるラウンジで、貴司はそう言ってうなだれた。

…『貴司』は…いわば、俺からさくらを奪った男…になる。

だが、俺と貴司は不思議な関係になっていた。


「…当然だな。知花を育てられなかった分、さくらがもう一人と思っても不思議じゃない。」

内心穏やかじゃなかったが、平然として答えた。


貴司は俺が今まで三度会った中で…一番、素の自分を見せている気がする。

そう…

今日は四度目だ。

一度目は桐生院家に呼び出され、母親と共に頭を下げられた。

二度目は会社に呼び出された。

そして、三度目は…また桐生院家に。


…周子と向き合うつもりで毎日施設に顔を出し、そこで強く罵倒される。

そうされても仕方ないと諦めつつも…さくらを殺してやると叫ぶ周子に…胸が痛んだ。

俺が…そうさせた…


そんな時は、つい…華音と咲華に会いたくなる。

そんな資格はないと分かっていながら…

俺が、俺自身が壊れないために…と言い訳しながら…


「残念ながら…私には友人が一人もいないのです。」

その時、貴司が言った。

「あなたさえ…良かったら、私を友人のように呼んでいただけませんか?」

友人になんてなれない。

そう思いながらも…

俺は、自分を癒す存在と離れたくなかった。

それで…『貴司』と呼ぶ事にした。


「無理だ…さくらを妊娠させる事は…俺には出来ない…」

…酒に強いと聞いていたが、貴司はすでに酔っ払っている。

いつもは『私』と言うのに『俺』って…相当気が緩んでいるのか、相当…まいっているのか。


「…誓と麗のように、人工授精っていう手もあるだろ?」

そう言って酒を口にする。

…本当に、好きな女を抱けないのか?

本当は疑っているが…

この貴司の落ち込み具合を見ると、嘘だとは思えない。


「…誓と麗は…俺の子じゃない…」

「……は?」

俺はまだ写真でしか見た事のない、知花の弟と妹。

二人もまた…双子で。

知花は、二人が生まれた時から、酷く可愛がって甲斐甲斐しく世話をしたと聞いた。


「高原さん…俺はね…」

「……」

「…無精子症なんですよ…」

「…無精子症…」

「精子がないんです。」

「……」

それはー…

と言う事は…

「誓と麗は…二人の母親が…浮気して出来た子供なんです…」

「…本当なのか?」

「ええ…調べました。」

「……」

さすがに…同情した。

名家の一人息子ともなれば…後継者だのなんだの…周りからもうるさく言われるはずだ。


「…その時の奥さんは、おまえに精子がない事を…」

「知りませんでした。」

「…浮気相手の事も…調べたのか?」

俺の問いかけに、貴司はグラスの氷を揺らすと。

「…こう言っては…悪いけど…全く興味がなかったんです。」

吐き捨てるように…言った。

「俺には子供を作る事が出来ないから…むしろ、浮気して出来た子供でもラッキーだと思いました。」

「貴司…」

「歪んでますよね…自分もその境遇で…父を憎んだ事もあると言うのに。」

「……」

浮気相手との子供を…自分の子供として育てる。

しかも貴司の場合、きっと誰にもそれを告げずにいたはずだ。

…どんなに…辛かっただろう。

貴司が歪んでいるとしたら、好きな女に対して不能になる事や、精子がない事での男としての自信喪失のせいだろう。

友人が一人もいないと言った貴司。

ずっと…心の内を人に打ち明ける事なく…悩み続けていたのか…

もしくは…

自分を…諦めていたのか…


「…高原さん…」

貴司はテーブルに突っ伏してしまいそうなぐらい、前屈みになって。

「…あなたの…精子をください…」

「………はっ?」

「さくらに…二人目を…産ませてやって下さい…」

「………バカな。何言ってる。」

すぐには言葉が出なかった。

それほど…驚いた。

自分の妻を…別れた男に抱かせるなんて…

…いや…

精子をくれ…?


「さくらには…私は不能だと言い続けます…そして…精子がない事も…打ち明けます。」

「誓と麗の事も話す気か?」

「…今は、精子がない。と言います。」

「……」

「だから…人工授精で…と…」

「……バカな。」

俺は天井を見上げて溜息をついた。

貴司は何を…何バカな事を…

「また赤毛が産まれたらどうする。言い逃れできないだろ。」

「…さくらの父親はアメリカ人だと…」

「嘘だと言ってたじゃないか。」

「どうにでもなります。さくらは…記憶がないんですから。」

「……」

「俺は…本気です…」

貴司は俺の方に体ごと向き直って。

「お願いです…」

俺に倒れ掛かるんじゃないかと思うほど…身体を倒して言った。

「…あなたしか…いないんだ…」

「……」

「お願いです…」

「…無理だ。」

「今度は最初から…あなたも…我が子の成長を見れるんですよ…?」

「……」

「お願いします…お願いしますから…」

「……」

貴司はずっと頭を下げ続けたが…

俺には…

「…悪いが、応えられない。」

そうとしか…言えなかった。

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