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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/31 21:07:00

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「今日も遅くなるの…?」

門の手前まで見送りに来たさくらが、私のカバンを持ったまま…首を傾げた。

「ああ。色々接待があってね…」

「…そっか。大変ね。」

「…行ってくるよ。」

「うん。いってらっしゃい。」

「ああ…ここでいい。」

一緒に門を出ようとしたさくらにそう言うと、さくらは一瞬『えっ』って顔をしたが…

「…うん。気を付けて。一日頑張って。」

小さくガッツポーズをして言った。


…さくらには、悪いと思う。

門の前には、深田の運転する車が、私を迎えに来てくれている。


いつもは玄関で母と一緒に見送ってくれるさくら。

私も、そこまででいいと言っている。

だが…この前の事があったからか…

さくらは、最近私の様子を気にして…


深田に会わせたくないわけじゃない。

そうじゃないが…

今はまだ、私の気持ちがざわついていて。

…落ち着かない。


「おはようございます。」

「おはよう。」

深田がドアを開けてくれて、私は後部座席に乗り込む。

そして…この間の事を思い起こした。


晩食の時…

「かわいいなあ、ノンくんとサクちゃん。」

さくらが、華音を見て唇を尖らせた。

可愛いと言っているのに、なぜ拗ねた唇だ?と、そのさくらの愛らしさに笑いが出そうになっていると…

「ねえ、貴司さん。あたし、もう一人産みたいな。」

さくらが。

さらっと…そう言って。

「な…何言って…」

私が動揺してしまうと。

「だって、知花を育てられなかったし。もう一人欲しいー。」

私の目を見た。

「い…いくつだと思ってるんだ。」

「えっ、まだ38よ?40で産むのだって珍しくないんでしょ?」

「さくら、子供たちの前ですよ。」

母が間に入ってくれたが。

「子供ったって、もう子供の作り方ぐらい知ってるよ。」

さくらは…真顔で私を見たまま言った。


眩暈がした気がした。

さくらは…覚えていないのか?

私が不能だという事を。

それとも…

麗と誓の事で、私にも子供が作れると思い込んだのか…?


そして、寝る前にさくらは。

「貴司さん。ご飯の時に言った事、あたし本気だから。」

何となくその話に触れたくなくて、なかなか寝室に行かなかった私を待っていたかのように。

私がドアを開けると、ベッドに正座して言った。

「…さくらはまだ若いが、私は歳だからね。」

「何言ってるの?まだ若いよ。」

「昔にも言ったけど、私は不能なんだよ。」

「…でも、誓と麗は出来たじゃない…」

「……」

その時私は…

とっさに、答えてしまった。

「…誰にも話してない事なんだが…」

「…何?」

「誓と麗は、人工授精で出来た子なんだ。」

「…え?」

「さ、休もう。今日はもう疲れた。」

「……」

腑に落ちない様子だったさくらにそう言って、私は寝たふりをした。


…さくらに…求められたくない。

だからと言って…嘘が良くない事は分かっている。

でも、私がさくらと夫婦でいるためには…


嘘も…

秘密も…


必要だ。

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