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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/31 12:18:48

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「どこ行ってた?」

事務所に戻ると、会長室にナオトとマノンがいた。

少し、どんよりとした顔をしていたであろう俺を見て、二人は。

「腹でも減ってんのか?」

のんきに、そんな事を言った。


…桐生院貴司…

…何が…真面目な男だ。

おい、二階堂翔。

おまえの言葉なんて、信じなきゃ良かった。

…あの、鬼気迫る眼…

あいつ…もしかして、自分で自分を抑えられない所まで来ているのか…?


あの家に…さくらと知花…そして、華音と咲華を置いていて大丈夫なんだろうか。

…今更、俺に何が出来ると言うんだ…

監視してくれと言われても…


「…なあ、ナッキー。」

ごちゃごちゃ考えながらコーヒーを入れていると、マノンが口を開いた。

「あ?」

「…夕べ、さくらちゃん、事務所に来たで。」

「……」

思いがけない言葉に…返事が出来なかった。

ナオトはもう話を聞いていたのか、無反応。

俺は…マノンの言葉を何度か頭の中で繰り返して…ようやく把握するほど動揺していた。

まさか…すでに桐生院で何か起きているのか…?


「千里に用があるって、来てた。」

「……そうか。」

少しホッとした。

千里とさくらは…面識がある。

何か知花の事で相談でもしたのだろうか。


「…千里がさくらちゃんとこに向かうの見てたんやけど…ちょうど俺らの曲が流れてて、さくらちゃん…目瞑って聴き入ってて…なんや、ちと俺がセンチになったわ。」

「……」

二人にコーヒーを渡して。

「…ちょっと出てくる。」

俺がそう言うと。

「え?今来たばっかやん。」

二人はポカンとして俺を見た。

「ちょっと、周子の所に。夜には帰る。」

そう言って車のキーを手に、俺は外に出る。


…別れたのに…終わったのに…

こうして、さくらの名前を聞いてしまうと…

ずっと夢としていたさくらとの結婚が…胸のどこかで強く疼く。

…それが、痛くてたまらない。


周子の入っている施設にたどり着いて、まずは主治医に会った。

そして…

「カウンセリングをお願いしたいんです。」

そう切り出すと。

「…今日はもう時間外ですが、世間話という形で、お話聞かせて下さい。」

主治医はそう言って…庭のベンチに俺を誘った。


周子の主治医は俺より少し年上の、以前はどこか大きな病院の精神科医だったと聞いた。

海外の病院も渡り歩いた名医で、今は施設に隣接している心療内科の院長をしている。


そこで俺は…

さくらを失った事。

なのに、さくらの身が心配でたまらない事。

さくらだけじゃない…知花も、華音も咲華も。

そして…自分は周子と入籍をしたのに、さくら達を気に掛ける事に罪悪感を覚えている事。

もう終わった。

関係ない。

そう思いながら…いや、言い聞かせながらも…

さくらのそばに…居られるなら。

どんな形ででも、そばに居られるなら、と…

本当は…思っている事。

それらを話した。


「…何かの責任を負うような気持ちで、周子さんと入籍されたのではないかと思ってましたが…そういう経緯があったのですね。」

院長は静かな声でそう言って、銀縁のメガネを外して…目を細めた。

「高原さん、あなたは…本当に真面目で厳しい方ですね。」

「…真面目で厳しかったら、こんな状況にはなってなかったように思いますが。」

「ほら、それがもう真面目なんですよ。」

「……」

「真面目が悪いとは言いません。ですが、あなたの場合は自分を戒めすぎる。」

「……」

院長は立ち上がって、後ろで手を組むと。

「私は誰かを罰する者ではないし、聖職者でもない。なので、ただの人間として言わせてもらいますが…」

俺を優しい目で見下ろして。

「もう少し、自分の気持ちに寛容になって下さい。誰かを大事だと想う事は、悪い事ではありませんよ?」

言い聞かせるように、ゆっくりと言った。

「誰が批判しようが…あなたの『愛の形』というのは、あなたが創ればいいのではないですか?」

「…愛の形…」

「抱きしめて大事にするのも愛なら、ただ見守るだけも愛。想い続けるだけも愛。」

「……」

「自己満足に過ぎなくても…それをあなたが望むなら、私は何も罪に思い悩むことはないと思いますけど。」

院長の言葉に、少し…気持ちが軽くなった。

「ですが、見返りを求めると…辛いかもしれませんね。」

院長が伏し目がちに言ったが。

「見返りなんて、要りません。」

俺は即答した。

「……」

「彼女たちが…笑ってくれていれば…いいんです。」

「…そうですか。」

「…いえ、ちょっと強がりました。」

「…ふふふ。面白い人ですね。」

見返り…見返りなんて、求めれば…きりがない。

元気になったさくらを抱きしめたい。

一緒に…同じものを見て、笑って、泣いて…

人生を共に過ごしたかった…


…だが…

俺は…想いを断ち切れずにいる。

無理矢理『関係ない』と言い聞かせて…苦しくなる。

それなら…

桐生院貴司が変な気を起こさないよう…

監視という名目でも、さくらを…見守り続けられるのは…ある意味幸せなんじゃないか…?


…俺も、頭がおかしいな。

あいつと変わらない。


『院長、大至急A館までお越しください。」

ふいに、館内放送が流れて。

院長が俺に会釈して駆け出した。

A館…周子が居る施設だ。

俺がゆっくりと院長の後をついてA館に行くと…


「周子さん、落ち着いて。大丈夫だから。」

院長と看護師たちが…周子をなだめていた。

「…周子…すいません、何かあったんですか?」

俺が近付くと…

「許さないわ!!」

「……」

一斉に…視線が俺に集まった。

「あの子の所に行ってたんでしょう!?許さない!!」

「周子…」

「殺してやる!!あの子を…あたしから夏希を奪ったあの子を…」

「高原さん、ロビーに行って待っていて下さい。」

院長に促されて、俺はロビーに。

「殺してやるー!!」

背後に…周子のつんざくような悲鳴を聞きながら…

俺の心は…



…さくらを求めてしまっていた。

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