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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/31 10:10:27

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「若いなー。」

走り去る背中を見て、つぶやいた。

思いがけず…知花の母親に会った。

高原さんが一途に愛した人と聞いて…

何となく、儚げな女性をイメージしてたが…

元気ハツラツな人だった。


「ところで、この続きが見あたんないんだけどさ、この曲って全部書いてんのかよ。」

「え。」

廊下の真ん中で、知花と譜面を眺める。

「あっれー…おかしいなあ…」

うつむいた知花の髪の毛から…いい香りがした。

「…知花。」

「んー?」

「この間の返事、いつ聞ける?」

「……」

俺の問いかけに、知花は一度顔を上げたが…

「…ね。」

「ん?」

「あたし…光史のこと、好きよ。」

もう一度、うつむいた。

「……」

「アメリカで一緒に暮らしたのだって…誰だってよかったわけじゃない。みんなのことは、同じぐらいに大切だし…大好きだけど、光史は…また少し離れたところで安心できる心地よさを持ってて…」

「…それは、男しか好きにならないから?」

「そうじゃないよ。あたしも、それが何かわかんなかった。でも…」

「……」

「光史は、どうして…あたしと一緒に暮らしたいの?」

「愚問だな。好きだからだよ。」

「嘘。」

「どうして。」

「千里を好きなんでしょ?」

「……」

足元が…ぐらついた気がした。

知花には…

知花にだけは…気付かれたくなかったのに…


「光史は、あたしを見つめてても…あたしを見てなかったよ。」

「…俺は…」

落ち着け。

冷静になれ…

そう言い聞かせようとしても…

俺の手元は、震えてしまって。

手にしていた譜面を床にちりばめてしまった。


「…無理しないで、正直に言って。」

知花は、その譜面を拾い集める。

「…憧れてるだけさ…」

「……」

「俺は、今まで女に本気になったことがなくて…だけど、知花と一緒にいると新しい自分が見えてきたっていうか…」

何とか…言い繕いながら…

俺もしゃがみこんで譜面を拾う。


「あたし、どうしたらいいの?」

「……」

「千里のこと、忘れられない…かと言って、前にも進めないで…」

忘れられない…

やっぱり…忘れられなかったのか…

知花からこの言葉が出た時…

一つ、気付いた事があった。

「光史なら…こんなあたしをどうにかしてくれるの?」

「知花…」

譜面を置いて、知花の頭を抱き寄せる。

「俺が、忘れさせてやるから…」

そう言って…唇を合わせた。

俺は…

…知花が好きだ。

神さんに近付けると思って…なんて、違う。

知花が…好きで、そばにいたいから…

神さんを忘れられない知花の気持ちを知りながら…

どんな形ででも…

そばにいたい。

そう思うほど…

俺は…


知花が好きだ。

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