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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/30 21:14:35

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「光史遅い。ジャンケンするぞ。」

スケジュールの時間より早めに来たと思ったのに。

今日は、なぜか俺が一番遅かったようで。

プライベートルームには、すでに全員集合。

陸が、手をグーにしたまま言った。

「え?あ、ああ。」

「ジャンケン…」

パー。

「……」

「光史、よわっ。」

聖子が突っ込んだ。

こんな事ってあるか?

俺以外、全員チョキって。

企まれた感は否めないが、敗者の俺は昼飯の買い出し係になった。

ま、知花や聖子になるよりは良かった。

これもトレーニングだと思えば、さほど苦にはならないし。


今日は全員がバラバラなスケジュール。

陸とセンは雑誌の取材の後でスタジオ。

聖子と俺は録音があって、まこは新しい機材の確認で特別なスタジオ入り。

知花はボイトレ。


買い出しメモを渡された時点で、最初からみんなチョキを出す予定だったな?と目が細くなった。

どうして俺がパーを出すって分かったんだろう。


それぞれ部屋を出て行って、俺も少し早めに買い出しに行く事にした。

なんなら俺は店で食うって手もある。なんて考えながら、ロビーまで降りて…ふと、二階のエレベーターホールを見上げると…


「あ…」

俺は、その姿を見て…後を追った。

追わないわけがない。

…神さんだ。

神さんが、事務所に…


神さんの乗ったエレベーターが八階で停まったのを確認して、俺もエレベーターに乗り込む。

スタジオって事は…いよいよ始動するのか?

ソロかバンドか…

何にせよ、神さんが歌う事は俺にとっても喜びだった。

八階で降りて、その姿を探す…前に、スタジオの使用ボードを見た。

個人練でも名前を書かれるから、神さんの名前か…もしくは新しいバンド名…

見ていくと、Dスタに見慣れないバンド名。

だが、俺には見覚えがあった。

F's…

親父が…そう書いてある封筒を持ち歩いてる。

…まさか、親父が組むバンドのボーカルが…神さん?


Dスタの前に行って、さりげなく通り過ぎる。

少し開いたドアの隙間から…

「京介、初めての時は失敗する奴もいて不思議じゃない。」

「ナオトさん…そういう例え、やめて下さいよ…」

「あはは。嬉しいなー。俺よりガチガチなのがいるー。」

「圭司も最初入った時は酷かったな。」

「えっ、俺イケてなかったですか?」

「早漏って感じやったな。」

「…年取ると下ネタでしか例えなくなるのかな…」

「臼井、おまえも変わらへんやんか。」

…親父とナオトさんと…臼井さんと…

東さんに浅香さん。

…間違いない。

神さんは、ここのフロントマンだ。


…また、あの人の歌に出会える。

そう思うと、喜びで胸がいっぱいになった。

しかし…それと同時に、言い知れぬ黒い想いも…湧いた。


俺は今、神さんが歌うって事は…神さんは本気で知花を取り戻す気だと感じた。

…知花は…神さんに戻るか?


俺は…誰に妬いてる?

知花?

それとも…神さんに…か?


買い出しから帰ると、ルームには知花一人だった。

「あ、おかえり。」

知花はそう言って、俺の手から荷物を取ろうとした。

「いいよ、重いから。」

「ううん。少しだけ。」

「…サンキュ。」

比較的軽い袋を二つ渡して、俺はビールやジュースの入った袋を冷蔵庫の前に運んだ。

…この様子だと…知花はまだ知らないな。

「…知花。」

「ん?」

「神さん、来てるぜ。」

知花に背を向けたまま、そう言うと。

「…え…」

知花は、少し…戸惑ったような声を出した。

俺は振り返って知花の目を見て。

「Dスタで見た。」

そう言った。

「……」

知花は俺の目を見たまま…言葉を出せずにいる。


「…陸たち、まだ終わんねえのかな。」

時計に目を移して、飲み物を冷蔵庫に詰める。

それでも、知花は…まだ無言。

「聖子は?」

「あ…みんなスタジオ…聖子も録りに入る時間だから…」

…動揺してるな。

それが…なぜか俺をイライラさせた。

…なぜだ?


「あー、眠い。」

ソファーに寝転んで。

「声の調子どうだ?」

知花に問いかける。

「うん…まあ、いいかな…」

知花は相変わらず、動揺を隠せない。

俺は起き上って知花を見ると。

「…そんなに気になるんなら、会って来いよ。」

少し、早口で言った。

「え?」

「神さん。気になるんだろ?」

「……」

なぜ。

なぜ、そこで「うん」って言わないんだ。

好きなら…飛び込めばいいじゃないか。

俺みたいに、気持ちを表に出せないわけじゃない。

いくらだって…好きって言えば応えてもらえるはずなのに。

俺が少しイラつき始めたところで。

「光史。」

知花が、顔を上げた。

「あ?」

「好きな人、できたの?」

パイプ椅子に座って譜面を開いた知花から、さっきまでの動揺は…見えない。

「…何、急に。」

「ううん、別に…なんとなく。」

「……」

今度は…俺が黙る番だった。

知花、何か気付いてるのか…?

いや、まさか…な。


「知花。」

「ん?」

「一緒に暮らさないか?」

「……え?」

気が付いたら…口にしていた。

知花と一緒にいたら…俺は満たされる。

あの人に近付けるという錯覚。

あの人の大事にしているものに、誰よりも近い存在でいるという優越感。


「一緒に暮らそう。ノンくんたちも一緒に。」

「…どうしたの?何かあったの?」

「別に…ただ、おまえとなら…うまくやってけそうな気がしてさ。」

「……」

いきなりOKしてもらえるとは思ってない。

知花は…今も神さんを好きで。

神さんもきっと…知花を好きだ。

二人を応援したい反面…このじれったい展開に、俺はどうしても…

どうしても…妬いてしまう。


「…考えとく。」

知花が小さな声でそう言って。

「…サンキュ。」

俺は、スティックを持って立ち上がる。

「そろそろ出番かな。」

「買い出し、ありがと。」

「…なんで俺がパー出すって分かった?」

スティックを持ったまま、ストレッチをしながら問いかけると。

知花は『あちゃー』みたいな顔をして。

「光史、いつもスティック握ってるからなのかな…最初はグーって言われたら、次は絶対パー出しちゃってるな…って。」

申し訳なさそうに、そう言った。

「…次は絶対パー出さない。」

俺は、そう言ったが…

それ以降、俺が何を出しても。

知花に勝つ事はなかった。


…勘がいいのか、頭がいいのか。


ともあれ…この時の俺にとって。

知花は…

癒しであり、俺を満たす存在であり…

俺を狂わせる存在でもあった…。

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