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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/30 20:34:16

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「俺は、この家とは無関…」

立ち上がって帰ろうとすると。

「じーちゃ。」

「おおーばーちゃ。」

「……」

「おや、どうやって出てきたんだい?」

「柵を外したのか?」

二人は後ろを向いて、そんな事を言って。

「お客様ですよ。こんにちは、しなさい。」

桐生院貴司の母親の後ろから顔を出した、その…小さな…二人は。

「ちあ!!」

「ちゃー!!」

元気良く、そう言って…手を挙げた。

「…知花の…?」

どちらにともなく問いかけると。

「…あなたの、孫です。」

「……」

母親に、そう言われた。


二人とも…知花にも…千里にも似ている。

「高原、夏希さん、だよ。」

桐生院貴司が、二人にゆっくりそう言うと。

「なちゅ。」

空色の服を着た方が、そう言って俺を指差した。

「ははっ。早速あだ名を付けられましたね。」

「……」

立ち上がりかけていた腰が…下りた。

「なちゅ、かあしゃん、みちゃいー。」

薄いピンク色の服を着た方が、そう言いながら…俺の膝に来た。

「まあ、珍しい。最近は人見知りが酷かったのに…」

「さくらもなかなか懐いてもらえなかったのにな。」

「……」

膝に来た子は…俺の髪の毛に触って。

「なちゅ、しゃくのと、ちあうー。」

自分の髪の毛と合わせた。

「咲華のお母さんの色と、似てるな。」

「…しゃく?」

目を見て問いかけると。

「きうーいん、しゃく、でしゅ‼︎」

目をキラキラさせて…元気良く答えてくれた。

「本当は、『さくか』です。咲く華と書いて、さくか。言いにくい名前を付けてしまって、申し訳なかったわ。」

母親は…さっきとは全く違う…優しい目元になっている。

俺を『なちゅ』と名付けたもう一人は…

なぜか、俺の背中にへばりついている。

「…君の名前は?」

左手でその子の身体を押さえて、首だけ振り返って問いかけると。

「かろん!!」

膝に座っている方が、答えた。

…ふっ…

「華の音と書いて、かのんです。」

「…華の音…」


俺は…

瞳を育てなかった。

小さな頃の検診について行ったが…それも、ほんの数回。

知花については、存在さえ知らなかった。

だから…なのか?

この子達と…もっと一緒に居たい。と…

瞬時に、そう思ってしまった。


「…お昼の準備をしましょうかね。」

ふいに、母親が立ち上がった。

「…手伝いますよ。」

桐生院貴司も、母親に続いた。

「おい…」

俺が声をかけると、桐生院貴司は。

「すいませんが、しばらく遊んでやっていて下さい。」

穏やかな声でそう言って…歩いて行った。

「……」

双子は…いつの間にか俺の膝に並んで座って。

二人で、手の平を見せ合いながら何か喋っている。

…俺もつられたように手の平を見せると。

「なちゅの、おっき!!」

「なちゅの、おっき!!」

二人は同時にそう言って、俺の手の平に両手を乗せた。

「お…おいおい、転ぶぞ。」

前のめりになった二人の身体を抱きしめると。

「きゃー!!」

「きゃー!!」

今度は、二人が同時に俺の胸に押し乗って来た。

「うわっ。」

その反動で後ろに寝転ぶと。

「きゃはははは!!」

「きゃはははは!!」

「……」

今まで…俺の生活の中になかった声。

子供の…声。


もし…俺が子供が欲しいと言っていたら…

周子は、瞳を産んで、俺と三人で幸せになれていたかもしれない。

だが、俺はそう言わなかった。

だから…周子は一人で瞳を産んだし…

さくらに、俺の子供を産むなんて許さないと言った。

それで…さくらは…一人で知花を産んで…

死産と言われ、その愛しい存在を知る事なく…21年も…知る事なく…


…誰を恨んでも、何を悔やんでも、時間は戻らない。

元はと言えば、全てが俺だ。

俺が…


「…なちゅ?」

二人を胸に乗せたまま、仰向けになって涙を堪えていると。

「…なちゅ、よちよち。」

二人が…胸から降りて、俺の頭を撫で始めた。

「…よしよし、してくれるのか。」

「うん。なちゅ、よちよち。」

「…ふっ…」


光史やまこが産まれた時、可愛くて仕方なくて、家に通った。

だが、こんな風な…穏やかなスキンシップは…なかったな…

抱えて頬ずりして、嫌がらせや!!とマノンにどつかれたりして。

膝に抱えて、一緒に歌ったりはしたが…

俺は『守る立場』でいたし…

…まさか、初対面の孫たちに…撫でられ、癒され…

…守られるとは…な。


目の上に腕を置いて、泣くな。と、自分で奮い立とうとした。

だが…

人の気持ちが分かるのか?

双子は…

「よちよち、なちゅ、よちよち。」

そう…繰り返して、頭を撫でたり…

頬に触れたりする。

「うん…うー…んっ…」

二人は、俺の腕を持ってどかせると。

「なちゅ、わらう?」

俺の目の前に、どアップで迫って言った。

「…ああ。笑うぞ。」

そう言って、咲華を抱えて上に腕を伸ばす。

「きゃー!!」

咲華は大喜び。

「あー!!」

隣で、華音もクルクル回りながら、咲華を見て興奮している。

ははっ…

双子って不思議なもんだな。

「じゃ、次は華音だ。」

咲華を下ろして、華音にも同じようにすると。

「きゃー!!」

華音も大喜び。

そして、二人は…

「なちゅ、しゅきー。」

「しゃくもー、なちゅ、しゅき。」

そう言って…

俺の胸に、しっかりと抱きついてくれた。

…なんなんだ。

この…狂おしいほどに感じる…愛しさ。


「しゃく、なちゅとまんましゅる。」

「かろんもー。」

「……」

おい。

桐生院。

まさか、最初から…この双子を使って俺を陥れようとしたんじゃないんだろうな。


「あらあら、すっかり懐いちゃって…すいません高原さん。」

様子を見に来た母親が、そう言って笑った。

「しゃくね、なちゅと、まんましゆの。」

「かろんもー。」

「まあ、そう。いいわねえ。ノン君もサクちゃんも、なつさんと手を洗って来ましょうね。」

俺が座ったまま戸惑っていると。

「さ、お昼にしましょう。子供達と、手を洗って来て下さい。」

母親が言った。

「なちゅー、いこー。」

「いこー、なちゅー。」

「…ああ。」


まんまと…嵌められた気がする。

双子は、いとも簡単に…

俺の気持ちを、鷲掴みした。


…ずるいぞ。


桐生院。

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コメント4

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6591834・08/31

    カオリさん
    ありがとうございます✨
    ですよねですよね。
    私の妄想なのに、私も飛び出す絵本買ってあげたくなりますもん←危
    もう、桐生院には何か買ってあげたくなる子ばかり〜(*´∀`*)

  2. ヒカリさん(99歳)ID:6591833・08/31

    スズさん
    ありがとうございます✨
    キングオブ不器用、なちゅですかね⁉︎
    私の中ではノン君と千里がツートップでしたが、言われて見てみるとなるほど(๑•̀ㅂ•́)و✧
    あっ、でもダメンズは詩生か田中←誰やお前⁉︎(コノちゃんの回登場)…いや、私の書く男の人、ほぼイケメンでダメンズ!(ノ∀`)アチャー

  3. カオリさん(47歳)ID:6591513・08/30

    いやーーーこれは絶対誰でも落ちるよ。
    大人なノンくん知ってるからグフフ笑いになるけど
    頑なのなっちゃんの心鷲掴み

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