ブログランキング7

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 2403
  • 読者 653
  • 昨日のアクセス数 38518

テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/30 08:48:12

  • 82
  • 2

「さくら。」

さくらの部屋のドアを開けると、知花とさくらが同時に振り返った。

…俺の…

さくらと…俺の…娘。

もう、最後かもしれない。

こうして、この…俺の家で、俺達が揃うのは。


「なっちゃん…」

さくらが不安そうな目で俺を見上げる。

「荷物は、あとから送る。今日…このまま知花と帰れ。」

「…どういうこと?」

「他に好きな奴がいる女と、そう長くは暮らしてらんねえよな、知花。」

知花の顔を見て笑うと、知花は息を飲んだ後。

「…ありがとうございます…」

俺に、深く頭を下げた。

…礼なんて要らない。

どんな形でも…俺はさくらが事故に遭ってからの17年。

さくらを独り占めしていたんだ…。


「なっちゃん…」

「…いつでも、会えるさ。知花の歌を聴きに来たりしろよ。」

久しぶりに…さくらの目を見た気がした。

ずっと…さくらの目も見れなかったし、俺から触れる事も出来なかった。

だが…これが最後だ。

俺は、さくらの手を取って歩き始める。

部屋の外で、桐生院貴司が待っている。

「…さくらを、お願いします。」

俺がそう言うと…彼が現れて。

「…貴司さん…」

さくらの手が…俺から離れた。

「さくら…」

二人が手を取り合うかどうかの所で…俺は背中を向けた。

…頭では分かっていても…

どうしても…苦しい。


「一つ…聞いていいか?」

ベッドの横に立ったままの知花に、問いかける。

「…はい。」

「…血液型は?」

「血液型?」

知花が、丸い目で俺を見る。

「Bですけど…」

「……」

血液型なんて…関係ないか。

確かに、この赤毛は…俺譲りだよな。

『ファ』が…俺に似てる…か。

…知花が、みんなから恐れられるボーカリストなわけだ。

俺と…さくらの娘…

サラブレッドだな。


「高原さん…?」

ゆっくりと、知花を抱きしめる。

知花の歌声を聴いて…嫉妬した事もあった。

やっぱり俺は…器の小さい、どうしようもない男だ。


「あ、あの…」

「…しばらく…このまま…」

「……」


俺と…さくらの…娘。

瞳の…腹違いの妹…

ずっと…その存在に気付けずにいた…。


「…すまない…」

「…いいえ。」

ずっと戸惑った様子の知花から、ゆっくりと離れる。

軽く頬に触れると、知花は上目使いで俺を見上げた。

「…愛してるよ。」

そっと額にキスをした。

父親としての…愛をこめて。

知花は何か言いたそうな顔をしたが。

「さ、行きなさい。」

俺が背中を押すと、振り返りながら歩いて行った。


外まで…見送る気力はなかった。

俺はベッドに座って…そのまま仰向けになった。

「……」

さくらは…ずっと、この天井を見たまま…過ごしていたのか…

殺風景な、何もない部屋で。

俺は…

何もしてやれなかった。

さくらを寝かせたまま。

ただ、愛してると繰り返して…自己満足に酔っていただけだ。


…さくら。

今度こそ…

幸せになれよ。

同じテーマの記事

コメント2

しおりをはさむ

  1. ヒカリさん(99歳)ID:6591237・08/30

    シルヴェーヌさん
    パーっと明るい話にならないかなあー‼︎
    って場面が続きますね(・ω・;)

  2. シルヴェーヌさん(52歳)ID:6591120・08/30

    何度読んでも 号泣(T_T)

関連するブログ記事

  1. 仕事から帰ってさくらの部屋に入ると、知花が来ていた。瞳の...

  2. 39th 88

    08/28

    高原さんに連れて来られた『さくらさん』と住む家は、緑の中にあ...

  1. 「…さくら。」本当は…もう何も考えたくなかったし…現...

  2. 「……」ベッドの脇に座って、さくらの頬に手を当てる。...

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

9/22 編集部Pick up!!

  1. 共稼ぎなのに夫が家事をしない
  2. 育休復帰時既に妊娠3か月の同僚
  3. 子あやし疲れ少し休憩していたら

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3