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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/30 07:47:27

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夕べ…さくらに…『愛してる』と言われた…

…愛してるのに、俺達は…一緒に居られないのか。

「…ふっ。」

つい、笑いが出た。


十日間、図書館に通って…

最後の日に、埠頭に行った。

さくらが、海が見たいと言ったからだ。


先月、周子と海に行ったばかりで…

同じ場所には行きたくなかった。

それに…

もう、俺の中では…そういう気持ちが強くなっていたからかもしれない。

…そういう気持ち。

さくらと…死にたいという気持ち。


だが、さくらは俺を止めた。

一緒に…死んではくれなかった。

…当然か。

さくらには、明るい未来が待っている。

愛する娘と…夫が、待っている。

それを奪おうとするなんて…

そのうえ…

せっかく元気になったのに、それを喜んでもやれない。

…最悪だ。

俺は、最後まで自分本位なカッコ悪い男だな…


俺が最後に出来る事は…さくらと死ぬ事だと思っていた。

だがそれは俺だけの想い…

…全く…自分で呆れる。

さくらに選ばれなくて当然だ…。


いつ…知花に連絡をしよう。

そう思っている間に、数日が過ぎた。

今の俺は…何の中身もない…ただの、高原夏希だ。

本当に…

何もない。


ピンポーン


「……」

ここの場所を知っている者は少ない。

誰だろう。

知花か?

それとも千里か?

それとも…また、二階堂翔か?


俺が玄関のドアを開けると…

「お話があります。」

「……」

初対面だが…この声は…

桐生院貴司。

その後ろに、遠慮がちに立っている知花も見えた。

…いよいよ、迎えに来たというわけか…。


無言でドアを開けて、二人を迎え入れる。

知花は俺に小さく会釈して、さくらの部屋に向かい…桐生院貴司は、俺の前に立ったままだった。

「…二人きりで、話しがあります。」

「……」

俺は、それにも無言で…書斎に向かった。

書斎に入ってすぐ。

「…さくらが、長い間、お世話になりました。」

桐生院貴司が…俺に頭を下げた。

「…どうして死産だと?」

低い声で問いかけると。

「…さくらは、ずっとあなたが好きでした。」

意外な返事が返って来た。

「もちろん、相手が誰かなんて…私は知りませんでしたが…」

「……」

「…『なっちゃん』は…あなたでしょう?」

「……」

顔を上げて、桐生院貴司の目を見る。

「…ずっと、想っている人がいると知っていました。知っていて…彼女と結婚しました。」

桐生院貴司も…俺の目を見ていた。

俺達は、視線を外すことなく…話した。


「知花を出産する時…さくらは、繰り返し言いました。」

「……」

「…なっちゃん、助けて。と。」

「え……」

「…私はくだらない男です。あの言葉に…世も末ぐらいの嫉妬をしました。」

「嫉妬で死産だと嘘をついたと言うのか。」

「はい。」

「おま…」

桐生院貴司の胸ぐらを掴んで、殴りかかろうとしたが。

「あなたに私を殴る資格がありますか?」

「…何だと?」

「21年前…彼女は、空港で泣いていました。」

「……」

「何があったかは分かりません。さくらは…あなたとの事を、一言も語りませんでしたから。」

ゆっくりと、腕を下ろす。

…今更、馴れ初めなんて聞きたくもない…


「ただ、一つだけ。」

桐生院貴司は、一度足元に視線を落として…それから俺を見て。

「もし妊娠していたら、赤ちゃんを産んでもいいか。と…言われました。」

「……」

俺は…それを不思議な気持ちで聞いた。

妊娠していたら?

「大好きな人との、赤ちゃんなんだ、と。」

「……」

大好きな人との…赤ちゃん…

…さくらは、おまえと愛し合って、知花が生まれたと言ったんだぞ。

俺は…さくらの口から、それを聞いたんだぞ。


「知花は、あなたの娘です。」

「………さくらは、君との娘だと言った。」

「私とさくらでは、赤毛は生まれません。」

「さくらの父親がアメリカ人だと…」

「本当ですか?初耳ですね。」

桐生院貴司は少しうつむいて、小さく笑った。

「ちなみに、高原さん。血液型は?」

「…Bだ。」

「…あとで、知花に聞いてください。」

「え?」

「さくらはO型、私はA型です。」

「……」

「長い間、お世話になりました。」

「……」

「本来、このままあなたと一緒にいる事が…さくらにとっても良い事なのかもしれませんが…」

「……」

「…知花と、一緒にいさせてやりたいんです。」

「……」

「私も、家族として…一緒にいたいんです。」

家族として…

俺も、さくらと…家族として、一緒に…

…だが、そんな資格がない事が、ハッキリと分かった。

さくらが出て行った理由。

それは…

俺が、子供を欲しがらなかったから。

さくらは、俺と周子との間に瞳が生まれていた事にショックを受けた。

そして…一時期、心を閉ざした。

俺のプロポーズを…すぐに受け入れてはくれなかった。

罪滅ぼし?と聞かれた。

だが…一緒に居て、乗り越えてくれた…ように思えた。

…勝手に俺がそう思っていただけだ。


まだ十代だったさくらに…

俺の頑なな思いを押し付けて。

子供は要らない。

そう…何度言ってしまってただろう。

瞳の存在を知った頃、さくらは避妊を嫌がった。

だが俺は…執拗にそうして、さくらの傷をえぐった。

…バカだ。


確か、周子も言っていた。

さくらに対して…酷い言葉を発した、と。

さくらは…色んな事に一人で耐えていたんだ。

一緒にいながらも、さくらの気持ちに気付いてやれなかった俺に耐え…

俺の子供を産んだ周子という存在にも…


「…さくらを…」

俺にはもう…

何もしてやれない。

「よろしくお願いします…」

桐生院貴司に…深く頭を下げた。


俺にできる事は…


さくらを…桐生院に戻して…

周子と結婚する事だ。


さくらへの気持ちと…


決別するために…。

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