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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/29 19:49:27

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「…どちら様ですか。」

半ば無理矢理サカエさんを追い出して。

さくらと二人きりで生活をするようになって4日。

ドアを開けると、知らない男が立っていた。

「うちから派遣したサカエを気に入ってもらえなかったようで。」

「……」

この男…何者だ?

サカエさんは、派遣されて来た人物ではないぞ?


「…傷付いた顔をしてらっしゃる。」

俺の目を見て、男は言った。

「何者だ?」

「……」

男は小さく笑って一度下を向いて。

しばらく…何かを考えている様子だったが。

「…さくらの保護者と言ってもいい者です。」

そう言って、顔を上げた。

「……さくらは、孤児だと。」

「ええ。うちには、そういった者が多くいます。」

「うち?」

「入っても?」

「……」

さくらの事を知りたい…いや、もうこれ以上…何も知りたくない…

「…いや、帰ってくれ。俺は」

「さくらは、普通に話せるし動けます。」

「……え?」

「私が、さくらを動けなくしました。」

「……」

男の言っている意味が分からない。

俺は眉間にしわを寄せたまま、少し途方に暮れた。

「さくらに会わせて下さい。そうすれば…全てあなたにお話しします。」

「……」

さくらの全て…

それはもう、知らなくてもいい気がした。

さくらは桐生院貴司を愛して、結婚して…

いずれは…俺の元からいなくなる。

…また。

いなくなるんだ。


「何も知りたくない。」

俺がそう言うと。

「…重症ですね。」

男はそう言って。

「でも、とりあえずさくらに会わせて下さい。」

半分開いたドアに手を掛けた。

「困る。」

俺がそれを制しようとすると…

「さくらのためです。」

手首を掴まれて…

「あ…」

カクン、と。

身体の力が抜けた。


…何だ?今のは…

男はドアを開けて家の中に入ると、一旦ぐるりと辺りを見渡して…

教えてもいないのに、さくらの部屋に向かった。

「お…おい、待て…」

「数分お待ちください。」

男を追いたいのに、力が入らない。

俺はその場に仰向けに倒れて…しばらく天井を眺める羽目になった。


…どういう事だ?

あいつは誰だ?

さくらの動きを止めたとか…さくらの保護者みたいな者だとか…

確かにさくらには謎が多かった。

俺には話せない事だらけだった。

…桐生院貴司と結婚していた事も含め…

秘密…だらけだった…。


「大丈夫ですか?」

気が付いたら、男が俺の顔を覗き込んでいた。

今…俺は眠っていたのか?

ゆっくり身体を起こして、立ち上がる。

男はまるでここが我が家のようにリビングに向かうと、ソファーに座って俺を待った。

俺は男の姿を見ながら、さくらの部屋に行こうと…

「今は眠っています。」

「……」

「大丈夫。目が覚めた時には、動ける身体になっています。」

誰が…

誰が、そんな話、信じられるものか。

そう思ったが…

「声を出してみて下さい。」

「……」

声を…出そうとしたが、出ない。

…何なんだ?

男は静かに俺を見ていたが。

「今から私が手を叩いたら、声が出るようになります。」

そう言って…

パン

一度、手を叩いた。

「…ん…なんだ…」

声が…

「…催眠術のような物です。」

男はそう言って、視線で俺に座るよう促した。


さくらの事が気になったが…男の話を聞きたい気もして。

俺は、ゆっくりとソファーに座った。


「…何者なんだ。」

「失礼しました。二階堂翔と申します。」

「…二階堂…?」

「息子がお世話になっています。」

「………陸?」

「はい。」

どういう…事だ…?


「うちは、特殊な家業です。」

確か、二階堂組…ヤクザだ。

暴力団の身内を所属させるわけにはいかないと思って調べたが、二階堂組には多くの会社経営等、『二階堂組』とは名ばかりで、やっている事は全てクリーン。

兄貴のつてで公安委員会にも探りを入れてもらったが、指定暴力団としての名前も挙がってはいなかった。

「さくらは、うちで生まれ育ち…小さな頃から様々な訓練を受けました。」

「…うちで生まれ育ち…とは?」

「二階堂です。」

その話は…とても不思議な内容だった。

『二階堂』と言われると、とある一家庭に生まれたと思ってしまうが…

『二階堂』は…組織で。

しかも、警察の秘密機関で。

そこで生まれ育った者は、そうとしか教育されない。

…戦士。


「二階堂で…初めて夢を持って外に出たのが、さくらでした。」

「…夢…」

「シンガーになりたい、と。まだ14歳だったさくらは、アメリカの訓練所から逃げ出して…あなたに出会いました。」

「……」

初めて会った時…

さくらは、そこそこに売れている俺に、自分もロックシンガーだから歌う所を見に来てくれと言った。

訓練所…そういう場所から抜け出したなら…分かる。

さくらが、俺を知らなかったとしても不思議じゃない。


それはまるで、映画のような話だった。

世の悪と戦うために育てられたさくら。

俺と出会った時には、すでにそのような能力に長けていた。

…確かに、さくらには…変装技術や酷くいい耳や記憶力があった。

何でも出来て、出来ない事はすぐに出来るようにもなっていた。


そんなさくらが…なぜ、この男に動けなくさせられたのか。



「…友人を目の前で撃たれ、激昂したさくらは感情のままに走り出しました。」

「……」

「誰よりも、優秀でした。ですが、誰よりも…感情的になると制御不能になりました。それで、二階堂からは不適格者として外の世界に。」

「…目の前で友人を…」

その話は…思い当たり過ぎた。

あの事件だ。

丹野廉。

廉が銃弾に散った、あの場所に…小さな慰霊碑があった。

『私達は忘れない』

あれは…

「あの事件…さくらが…関わってたと?」

「さくらは…組織を抜けたにも関わらず、あの事件でテロ組織の全員を射殺しました。」


そして男は、その事件の直後にさくらから記憶を消したと言った。

だが、さくらの中で忘れてはいけない…忘れてはならないという感情が強いのか、意識はあってもそれらの葛藤でさくらの心身は長い間…


信じられない。

そう思う反面…その話を聞いた途端、ある出来事が頭をよぎった。

さくらが…突然立ち上がって、俺をベッドの上に倒すと、のど元に…

それはまさに…

戦士の動きだった。

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