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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/14 07:11:06

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「ねー、瞳、また呼び出されたんだって?」

授業が終わって、あたしはルームメイトのサラ(日本人)と街に繰り出した。

「だって、門限破ったって言っても、たった10分よ?他の子達なんて帰って来ない事もあるのにさ。」

「あんたが真面目に玄関から帰ってくるからよ。」

「…うそ。みんなどこから帰ってんの?」

「角部屋の子に甘い物渡したら、窓から入れてくれるわよ。」

「…そんな手があったのね…」

そうか…みんな上手くやってるんだな。

でもさ、そういうのって、もっと早く教えてよね。

あたしは心の中でそう思いながら、サラの行き着けだと言う雑貨屋に入った。

「ねえねえ、これいいと思わない?」

サラがピンキーリングを手にして言った。

「ふうん…あたし、あまりアクセサリーは興味ないな。」

「えー、瞳って美人なのに、絶対損してるよね。」

「損してる?どうして?」

「だって、もっと自分を磨いたり飾ったりすれば、もっともっと目立つ美人なのに、何だかもったいないよ。」

「……」

飾らなくても…

今のあたしを好きになってくれる人が現れたら。って、あたしはどこか夢見がち。

でも、あたしはモテないわけじゃない。

サラが実家に帰ってる間に、ちゃっかり男子寮の男の子を連れ込んだ。

適当にエッチできる相手は、そこそこにいる。


「あ、ごめ…」

棚の下の方にあったラクダ柄の敷物を見て立ち上がると、人にぶつかった。

あたしが謝ろうと顔を上げると。

「いや、悪い。俺も見てなかった。」

「……」

ドキッとした。

長い前髪の隙間から…力のある目。

その目はすぐにあたしから離れて、どうでもいいようなシンプルな絆創膏に向かった。

あたしは…つい、その人の姿を目で追う。

シンプルな絆創膏を手にしたその人は、レジでお金を払うと外に出て行った。

あたしはサラの存在も忘れて、後を追う。

するとその人は…隣の建物に入って行った。

ガラスドアの外から中を見ると…スタジオ。

「…スタジオナッツ…」

入り口に書かれた文字を読んで、再び中に目をやる。

すると、そこにはさっきの人と…違う人がいて。

さっきの人は、絆創膏をその人の指に巻いてた。

…男同士で、そういうのって…何だかちょっと…可愛い。


それにしても、ここってスタジオって事は…バンドしてる人?

…聴きたいな…


あたしは雑貨屋に戻ると、サラに。

「ごめん。あたしちょっと今日は遅くなる。角部屋の子にワイロ渡しておいてよ。」

そう頼んで。

何か言ってるサラを残して、スタジオに入った。


受付には女の人が座ってて。

あたしはペコリと、できるだけ笑顔でお辞儀しながら通り過ぎた。

…ふう。

止められなかった。

良かった。


階段を上がって…ドアについてる丸い小窓から中を見る。

…ここじゃない…

ここでもない…

一つ一つ部屋を覗いてると…

「…いた。」

三階の端っこのスタジオに、その姿が見えた。

マイク持ってる…って事は…ボーカルだよね。

できるだけドアに顔を近付けて、音を聴く。

…ボーカルか…

あたしも、歌いたいな…

本当なら、あたしってサラブレッドだよね。

ママもパパもシンガーだもん。

「……」

やがて中からかすかに聴こえて来た声に、あたしは背筋が伸びた。

…何…これ。

すごい…!!

…どうしよう…体が震える…

出来るだけ声が聴こえるように、あたしは小窓に耳を合わせた。

ああ!!何これ!!

あたし、この人と仲良くなりたい!!

そう思ったあたしは、練習が終わるまでの間、ずっとそうやって歌に聴き入った。

そして、片付けが始まったのを見届けて…下に降りて、外で待ち伏せた。

すると、少し経って…

「アズ、おまえあのクセ直せよ。」

「そんなの言ったって無理だなあ。」

絆創膏貼ってあげてた人と、一緒に出て来た。

それから、他のメンバーも。

四人は集まって何か話してたけど。

「んじゃな。」

「また明日ー。」

それぞれ、散らばった。

チャンス!!


「あの…」

あたしは、その人を追って…思い切って声をかけた。

「あ?」

振り向いたその人の目は…やぱり強くて。

あたしは…一瞬飲まれそうになったけど。

「…さっき、隣でぶつかった?」

その人は、雑貨屋を振り返って言った。

覚えててくれた!!

「そ…そう。覚えてた…の?」

「ああ。」

あたしは嬉しさのあまり笑顔だけど…

目の前のその人は、ニコリともしない。


ゴクン。

あたしは息を飲みこんで。

「あたし、シンガーになりたいの。」

負けないぐらい、強い目…のつもりで言った。

「…は?」

「だから、お願いします。あたしに、ボイストレーニングしてください。」

「……は?」

キョトンとしてるその人に。

あたしは深々とお辞儀して。

そして、顔を上げた時には笑顔で言った。

「あたし、瞳。あなたの声、好きになった。」

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