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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/13 11:52:56

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周子に最後に会ったのは…

泣きながら…告白された日だ。


あれは、さくらへの気持ちを歌ったらどうかとマノンに言われて…

さくらがいなくなって二年。

年明けと共に『All About Loving You』をリリースした後だった。

周子は見た事もないようなやつれた顔で…泣きながら、俺の目を見て言った。

「あたし…あなたと別れても…ずっとあなたを愛してた…」

その告白に、俺は無表情のまま…周子を見つめた。

そこにいなくても、俺にはさくらしかいなかったからだ。


「何度か…瞳を連れて、カプリに行ったの…」

「…何のために。」

「最初は…あなたが選んだ女を見たかっただけ…でも…」

周子は流れる涙を乱暴に拭って。

「でも…最初は憎かったのに…素直なあの子の事…本当に…本当に可愛いって思えるようになって…」

絞り出すような声で言った。

「歳の離れた妹みたいに思えて…夏希との事も…祝福出来たのよ…?」

「……」

「サムシングブルーの…リボンをプレゼントして…」

周子の言葉を、不思議な気持ちで聞いた。

今まで…俺が知る限り、周子に『女友達』が存在した事はない。

一人っ子で、両親もなく…どこか周りにバリアを張っている周子。

そんな周子が…憎しみを持ったさくらを祝福した?

…本当なんだろうか。


「だけど…」

周子はうつむいて肩を揺らせると。

「だけど…夏希が…あの子との子供を望んでるって聞いて…」

低い声でつぶやいた。

「は…?」

「夏希が、あたしとは要らないって言った子供を…あの子との間には望んでるって聞いて…許せなくなったのよ…」

「……」

俺は唖然とした。

さくらとの子供…

それは、確かに…夢を見た。

だが…

「…さくらが言ったのか?」

「…いいえ…事務所であなたがそう言ってたって…ジェフが…」

「……」

ジェフ。

俺達Deep Redの最初のプロデューサーで…

周子の元夫。

俺はジェフに、さくらとの事なんて話した事はない。

ましてや、子供の事は…誰にも話してないのに。


ジェフは、周子の俺への気持ちを断ち切りたかったのか…?


「悔しかったのよ…瞳は…あなたが望んで出来た子じゃないのに…あの子との間には…望まれる子供を作るなんて…」

「……」

「だから…あの子に…言ってしまったの…酷い言葉…」

「……」

「本当に…酷い…あたし……ごめんなさい…」


……何て事だ。

俺はしばらく言葉を失った。

周子は…瞳を『望まれなかった子供』と思っている…って事か?

そ…うか…

確かに俺は周子に…子供は要らないと言った。

だがあれは…


「…ごめんなさい…許して…」

テーブルに突っ伏して泣いている周子を、責める気にはならなかった。

これも…愛ゆえなのか。

そう思うと、何もかもが自分の頑なな気持ちが原因に思えた。

愛があれば…子供を望んでも不思議はない。

周子の間にも、確かに愛はあった。

それを…ちゃんと認めて伝えれば良かったのに。


「…許すも許さないも…おまえは悪くない。」

俺がそう言うと、周子は少しだけ顔を上げた。

「これだけは…言っておく。瞳の事は、離れて居ても、ちゃんと愛してる。大事な俺の娘だ。」

「……」

「父親として、何もできないが…何かできる事があったら言ってくれ。」


あの日を最後に…周子から連絡が来ることはなかった。

俺からは…毎年、瞳の誕生日とクリスマスに…メッセージカードを贈ったが、その返事は一度もない。

もしかしたら、ジェフに隠されていたかもしれないしな。

…ふっ。

どうでもいいか。



「…ここ?」

家に到着して。

周子が辺りを見渡した。

「ああ。静かでいい所だろ。」

事務所から車でどれぐらいだろうか。

一番近い家まで、歩いて5分かかるという寂しい場所。

そんな田舎に、手入れの行き届いた庭のある洋館は、巷では幽霊屋敷と言われているらしい。

まあ…言われて納得してしまう自分もいる。

ここは…

行き場のない俺の気持ちが…

昼夜問わずさまよい続けている屋敷だ。


「おかえりなさいまし。」

「ただいま。何か変わった事は?」

「言葉は出ませんけど、こちらの質問に瞬きでお応えになる事があります。」

「えっ…?」

俺はその場に周子を残したまま、駆け出してしまった。

「あっ、旦那様!!」

サカエさんの声に振り向くと。

「日に何度もはお疲れになると思いますので…」

サカエさんは、落ち着いた口調でそう言った。

「あ…ああ…そうか…そうだな。」

そんな俺の様子を見た周子は、切なそうな目をして…うつむいた。

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