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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/12 22:32:16

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「ただいま。」

事務所を立ち上げて9年が経った。

この9年…

さくらは事故当時と何も変わらないまま。

ボンヤリと宙を眺めたまま、言葉も発さない。


そんなさくらの体をマッサージしたり、風呂に入れたり…

髪の毛を撫でて、頬にキスをして寄り添って眠る。

どんなに疲れていても、さくらに触れ合う瞬間が、俺にとっては至福の時だ。


「おかえりなさいませ。」

「何か変わった事は?」

俺は前髪をかきあげながら、住み込みで働いてくれているサカエさんの顔を見た。

帰国する前に、さくらの世話と家の事をしてくれる人材を探した。

すると、昔看護婦をしていたという年輩の女性が、人づてに噂を聞いた…と言って、履歴書を手に現れた。

色々話してみて、サカエさんになら任せられると思った俺は、さくらを連れて帰国した。


「今日はベッドの横にお花を飾ってみたんですけど、視線が少しそちらに…」

「えっ。」

習慣のようにかけていた言葉。

『何か変わった事は?』

それに対して、サカエさんの言葉はいつも決まっていた。

『特に何も』

それが…

今日は違った!!


「旦那さまのお好きな、赤いガーベラです。」

「…ありがとう。」

その言葉を聞いて、俺は急いでさくらの部屋に向かった。


視線が花に?

今まで、ずっと天井と言うか、宙を眺めていただけのさくらの視線が?

逸る気持ちを抑えて部屋に入ると…

「…さくら、ただいま。」

なるべく、いつもと同じようにそう言って、さくらが横たわるベッドに腰掛けて、髪の毛を撫でた。

すると…

「…さくら…」

さくらの視線が、少しだけ…俺に向いた。

さくらが俺を見た…!!

心臓が大きく動いた。

自然と俺の目には涙が溜まって。

それが、さくらの頬に…一滴落ちた。

「…すまない。」

ゆっくりと、さくらの頬を撫でる。

さくらは30歳だが、全く事故当時と変わらない。

この唇が、あの俺の大好きな声を発してくれたら…

そして、あの俺の大好きな笑い声を聞かせてくれたら…

視線が動いただけで、欲が出た。


「…さくら、愛してるよ。」

さくらの手を握り、気持ちをこめてつぶやく。

さくらの唇から返事は聞こえなかったが…

「……さくら…?」

さくらの右目から。

涙が…こぼれた。

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