いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/12 13:37:48

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「…BEAT-LAND Live alive?」

その企画を高原さんに打ち明けられた時…

俺は、少しばかり口を開けたままになってしまった。

なぜかと言うと…

高原さんの亡くなった奥さんで、作詞家の藤堂周子さんのトリビュートアルバム。

現在、これが事務所をあげての大イベントと言うか…

所属アーティストの中でも選ばれた者だけが参加できている物であるとは言え、結構なハードスケジュール。

それでなくても、ボーカルを取る紅美が、エマーソンから直々にオファーを受けて渡米中。

その関係でスケジュールもかなりタイトになっているのに…

高原さん。

あんた、何だって俺らをこき使う事に命をかけたがる?


企画書に目を落としたまま無言でいると、高原さんが笑いながら言った。

「不満か?」

「…企画自体に不満はないけど、こんな大イベントなら…もっと時間をかけてやるべきじゃないかと。」

組んだ足の上に企画書をバサリと音を立てて置いて。

「せめて、来年の夏にするとか。」

そう意見すると。

「千里、忙しいのが好きなクセに…おまえも年取ったな。」

高原さんは、相変わらず笑ったまま。


いや…

いやいやいやいや。

こんな立派な企画書見せられたら…

誰だって慎重にっつーか…

もっとしっかり時間かけて練ってやりたくなるっつーの。

それでなくても、去年の周年イベントも大した事やったつもりなのに…

この企画書には、事務所所属の全アーティスト総出。と記してある。

…全く…

この事務所に所属してるアーティストが、何人いると思ってんだ?


「どうしても、今年やりたいんだ。」

どこぞで拘りぬいて買ったという、クッションの良さそうな大きな黒い椅子に身を沈めて、高原さんは言った。

「もう俺達も歳だ。来年なんて言ってたら、メンバーの誰かが死んじまうかもしれない。」

「……」

高原さんと朝霧さんは、今もこうして音楽の事に躍起になっているせいか、歳の割に随分若く思えるが…

それは…否めない。

実際、Deep Redは老いぼれ集団と言われても仕方ない年齢になっているし。

キーボード担当のナオトさんは、入院中。



「これ、いつ発表しますか?」

「もう少し煮詰めて、四月には全アーティストに伝える。」

「四月…」

それまでに、具体的な事まで決定出来るか?

それに、アーティストのスケジュールもおさえられるのか?


俺は企画書の資料を開いて、ざっと読み進める。

ステージのセットや大まかなタイムテーブル。

音響スタッフに照明スタッフ…

…もうここまで?


「…これ、俺が全面的にちょっかい出していいですか?」

資料に目を落としたままで言うと。

「助かる。」

高原さんは、目を細めて笑った。


「…ついでに聞きますが…うちで暮らす話、考えてくれてますか?」

「一緒に暮らさなきゃ、あの事バラす」という聖の脅しにも屈さず、高原さんは桐生院家全員からの申し出を、のらりくらりと掻い潜っている。

「…あんまり贅沢な話で、考えただけで痛風になりそうでな。」

そう言いながら、立ち上がると。

「みんなの気持ちは嬉しいし、十分伝わってる。ただ…老い先短い人間を、わざわざ引き入れるこたないだろ?ってのが、今んとこの俺の気持ちかな。」

老い先短い…なんて自分で言いながら。

俺から見ると、こんなにカッコいい70代がいるかよ。って文句が言いたくなる笑顔を見せた。

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