ブログランキング9

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 1725
  • 読者 581
  • 昨日のアクセス数 27891

テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/12 12:38:38

  • 69
  • 8

「こんにちは。」

あたしが深々とお辞儀をすると、目の前のその人は…

「…え?瞳…ちゃん?」

目を丸くして、驚いた顔。

「はい。」


目の前のその人は…

父さんの愛した人。

ううん…今も、愛し続けてる人。

さくらさん。


今日、あたしは…何の連絡もせず、桐生院家を訪れた。


「え…っと…知花?」

「いいえ。」

「千里さん?」

「いえ…」

「…華音…は、ないわね…」

「…さくらさんに…会いに来ました。」

「……」

「お邪魔していいですか?」

「あ…ええ…どうぞ。」


スリッパを出されて。

それを履いて、ゆっくりとさくらさんについて家の中に入る。


前々から思ってたけど…大きな家だな。

あたしは、外からしか見た事がない。


先月亡くなられた、さくらさんのご主人のお仏壇に手を合わさせてもらった。

写真のご主人は、柔らかい笑顔の人。

生前は、何かと…父さんとお酒を酌み交わしたりもしていたようだけど…

娘のあたしにも、不可解だ。

なぜ…父さんは、さくらさんを奪った形になったこの人と…友人関係にあったのだろう。



「お待たせしてごめんなさい。」

さくらさんが、お茶と羊羹を持って現れた。

「こんな物しかないんだけど…」

「いただきます。」

「……」

「……」

静かな時間が流れた。


「…母に…聞いた話だと…」

あたしが話し始めると、さくらさんはゆっくりと視線を上げた。

「あたしは、小さな頃…さくらさんのファンだったって。」

「ファン?」

あたしの言葉に、さくらさんは少しキョトンとされた。

「ええ。歌ってるさくらさんを見て、ゴキゲンになってたそうです。」

「…お母さん…そんな話を?」

「はい。晩年は特に…」

あたしの言葉に、さくらさんは目を細めて…柔らかく微笑んだ。

だけど…

「さくらさんが歌ってるレストランに行って…客席で美味しい物を食べながら、さくらさんの歌を聴く。それが楽しみだったって。」

「…レストラン…」

さくらさんは、首を傾げた。

「…?」

あたしがその様子を眺めていると。

「あ…ごめんなさい。」

さくらさんは小さく謝って。

「実は、昔の事があまり思い出せなくて…」

さくらさんは伏し目がちになって…口元は優しく笑ったままなんだけど…

その表情は寂しそうだった。

「事故に遭って…から…ですか?」

確かさくらさんは事故に遭って…ほぼ寝たきりの状態で。

そんなさくらさんを、父さんが日本に連れて帰って…

献身的に、身の回りの世話をしていた…って聞いた。


「そうみたい。何となく…ボンヤリと何かが…霧の向こうにあるのに、それが分からないって感じなのかしら。」

「…すいません…こんな事話して…」

「ううん、いいのよ。嬉しいわ。」


余計な事を言ってしまっただろうか…と、少し気になったものの…

あたしはお茶を一口飲んで続けた。

「…母は…ずっと後悔してました。」

「……」

「本当なら、あなたが結ばれるはずだった父を…奪った…って。」

「そんな事…それに、私は自分で選んでここに来たんですよ?」

「…知花ちゃんが居たから…じゃないですか?」

「…え?」

「父から聞いたんです。あなたは、知花ちゃんを死産したと聞かされて…その存在を知らなかったって。」

「……」

「その知花ちゃんが、生きてたと知った…だから…ここに来た。」

あたしの言葉に、さくらさんはしばらく黙っていたけど。

「…もし、そうだとしても…もう、昔の話です。」

そう、小さくつぶやいて…笑った。

「…さくらさん。」

あたしは、座布団から降りて…畳に手を着く。

「…瞳ちゃん?」

そして、さくらさんの目を見て…

「お願いです…父と…結婚して下さい。」

そう言って、頭を下げた。

「何…何言ってるの?そんな事やめてちょうだい。顔を上げて?」

さくらさんはあたしの隣に来ると、あたしの手を取って。

「こんなおばあちゃんに、そんな話…血圧が上がっちゃうわ。」

笑いながら…そう言った。

おばあちゃんだなんて…

さくらさんは、全然年相応に見えない。

可愛らしくて…まるで少女のようだ。


「出来れば…」

あたしは、さくらさんの手を握り返して。

「あなたの事を…母と呼ばせてください。」

真顔で…言った。

「……」

それには、さくらさんも絶句して。

ふい、と目を逸らして…

「…周子さんが…」

小さくつぶやいた。

「母の願いでもあるんです。」

「……」

「お願いです。さくらさんの気持ちは…まだ、あの頃と変わっていないんでしょう?」

「……」

それから…

さくらさんは、何も答えてくれなくなった。

これ以上困らせるのも…と思って、あたしは帰る事にした。


「…突然来て、ぶしつけにすいませんでした。」

門まで送ってもらって、あたしが頭を下げると。

「…ううん…会いに来てくれて、嬉しかった。」

さくらさんはまるで…友達みたいに気さくにそう言って。

「ありがとう。」

優しく…あたしを抱き寄せてくれた。

---------------------------------
時空列が前後します。
目線も様々なので、てんやわんやの回ですが、宜しくお願いしますm(_ _)m

同じテーマの記事

コメント8

しおりをはさむ

  1. ヒカリさん(99歳)ID:6583409・08/12

    ワカナさん
    途中で何か新エピソード入れたいなぁと思いつつ…
    頭が回れば頑張りたい所です(๑•̀ㅂ•́)و✧

  2. ヒカリさん(99歳)ID:6583408・08/12

    ハンナさん
    おお、ありがとうございます!
    ナッキーの幸せまで、まだまだまーだまだ!ですが…お付き合いよろしくお願いしますヽ(*´∀`)ノ

  3. ヒカリさん(99歳)ID:6583407・08/12

    カオリさん
    ありがとうございます^^
    もう、ほんとグッチャグチャ!
    私の方がついてくのが…(・ω・;)

もっと見る

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

8/20 編集部Pick up!!

  1. 割り込みして並ぶ子供にブチギレ
  2. 不在時に来た子供が発作起こした
  3. 不倫する女性は日本から出て行け

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3