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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/12 09:03:35

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もう六月。

一カ月が早い。

幸い、事故の後遺症は何もなくて…

一応、もう一度病院にも行ってみたけど…

本当に、無傷だったらしい。

…うん。良かった。


「座敷のお客さん、ヒレカツ定、二、ロースカツ定、一、カツ丼、一、天丼、一、生、五。」

おかみさんがオーダーを読み上げた。

平日の昼間にビールかあ。

映が聞いたら、羨ましがりそう。


そんな事を思いながら、揚げ物をした。

ビールが美味しく飲めるように、美味しく揚がれ~。なんて、心の中で唱えた。


お昼の部のラストオーダーも終わって。

夜の部の仕込みをして。

お客さんが帰って、みんなで手分けして掃除をして…

「お先に失礼しまーす。」

「お疲れ様ー。」

あたしは外に出た。


新しい自転車、本当にすぐ…お兄ちゃんの名前で贈られてきた。

それも、以前乗ってた無機質な感じのじゃなくて…

薄い空色の、少しオシャレな形の自転車で。

「…兄貴の見立てか。悔しいけど、朝子に似合ってる。」

映が、頬を膨らませながらそう言ったぐらい…あたしにピッタリな気がする。

そのお礼も言いたいのに。

お兄ちゃんと…連絡が取れない。

母さん曰く、『色々大変なのよ』だそうで…

うーん…こんなので咲華さんと大丈夫なのかな?って。

ちょっと余計な心配もしたりした。


「朝子。」

自転車に乗りかけたその時。

あたしの背中に…

聞き覚えのある声がかかった。

あたしは…すぐに振り向けなくて…

自転車を持ったまま、息を飲んだ。

「…朝子。」

もう一度…同じ声。

「……」

ゆっくり振り向くと…そこには…

「…海くん…」

「結婚、おめでとう。」

「……」

海くんは…真顔。

…笑顔じゃ…ない。

「…ありがとう…ございます…」

「なんで敬語?」

「…だって、あたし…」

「少し、時間いいかな。」

「……」

「少しでいいから。」

海くんの強い申し出に…

あたしは断る事が出来なくて。

「…はい…」

海くんに続いて、歩き始めた。



「ヒレカツ定食、美味かった。」

公園のベンチに座ってすぐ、海くんが言った。

「……」

あたしの顔は、目が丸くなって、口が変な形になった。

「…すげー顔。」

そんなあたしの顔を見た海くんが、そうつぶやいて笑って…

…ちょっと…海くん、変わった…?って思った。

…うん…

桐生院華音さん、言ってたよね…

変わった、って。


「もしかしたら、まだ俺には会いたくないかなとも思ったんだけど…」

「……」

「朝子が、まだ傷を持ったままだって聞いて…会う事にした。」

「…誰に聞いたの?」

「華音。」

「……」

本当に、友達なんだ…。


「朝子と暮らし始めた頃…一般人を死なせてしまってね…」

「え…っ?」

「…自分ではできてるつもりのオンオフが、全然できてなかったんだな。その事を引きずったまま家に帰って…朝子を…傷付けた。」

「あ…あの…あたし…」

「ん?」

初めて、目が合った。

「…あたし、海くんは…紅美ちゃんじゃないと…ダメなんだって…」

「そう思われてるよなって分かってたけど…俺のミスで人が死んだ事を口にするのが、どうしても嫌でさ。」

「……」

「意外とプライド高いだろ。」

そう言って、海くんは小さく笑った。


そんな事があったのに…

家に帰るとあたしが重荷になるような事ばかり言って…


「どうしたら…朝子を安心させてやれるんだろうって考えてたけどさ…あの頃の俺じゃ、何もできなかったな。」

「…あたし…何も知らないで…」

「知らなくて当然だ。俺が言わなかったんだから。」

「……」

「俺に足りないのは、ライバルと親友だ、って言われて。」

「…誰に?」

「華音のおばあさん。強烈だったな。」

桐生院家のおばあさんは…

あたし…

見かけただけ…だけど…

おばあさんって言うのが悪いぐらい、若々しくて、笑顔の素敵な人。

「秘密組織だからって言うだけじゃない…俺の生い立ちや…それによって出来た俺の中のコンプレックス…そういう物が複雑に絡んで、他人に自分を見せるのが苦手だった。」

「…でも、紅美ちゃんには…見せれてたんでしょ?」

あたしの問いかけに、海くんは少し間を開けて。

「……そうだな。」

小さくつぶやいた。

「…どうして…終わらせたの?」

「……」

「あたしが言う事じゃないかもしれないけど…あたしだけが幸せになるなんて…」

「朝子。」

「海くん、あたしが怪我さえしなかったら…紅美ちゃんと…」

涙がこぼれてしまった。

憎い。

ずっと恨んでやる。

そんな気持ちが湧いた事もあったけど。


あたしは、今…すごく幸せで…

自分だけが、こんなに幸せなのに…

あたしを大事にしてくれようとしてた海くんの気持ちに気付きもせず…

勝手にひねくれて…恨んで…

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