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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/11 22:23:09

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実家に挨拶に来て…

手強いはずだった父さんは…

意外にもあっさりと。

「で、式はいつ頃に考えてる?」

って…カレンダーを広げた。

「…え?」

途方に暮れる映とあたしをよそに…

「この頃はドイツに二ヶ月行きっぱなしだな…」

「ここは確かアメリカの本部が合併するとかで…」

両親は、カレンダーにスケジュールを書き込み始めた。

「え…え?あの…父さん、母さん…」

「え?」

「…い…いいの…?」

あたしが戸惑いながら問いかけると。

「駄目って言ったら別れるのか?」

父さんが真顔で答えた。

「わっ別れない!!」

あたしは、頭をぶんぶんと振って言う。

「ならもう好きにしろとしか言いようがない。内心大賛成じゃないけど、大反対の時期は過ぎた。」

カレンダーに視線を落としたままそう言った父さんの隣で、母さんは首をすくめた。

「それに…」

父さんは変わらず視線はカレンダーのままだけど…

「ああいう物が我が家に入り込むとは思ってもみなかったが…少し和んだ気がする。」

視線を上げない父さんが言った『ああいう物』とは…

椅子に座らされてる…ぬいぐるみ。

映がお土産に買いたいって寄り道したのは、ビートランド御用達の酒屋さんと…

雑貨屋だった。


「…ぬいぐるみ?どうして?」

「何もない殺風景な家で育ったって言ってたから。」

「…それで?」

「仕事から帰って、こういうのがあったら和む事ってあんだぜ?」

「…映も持ってるの?」

半信半疑で聞いてみると。

「ガキの頃に、黒猫飼っててさ。」

黒い猫のぬいぐるみを手にした。

「すっげー可愛がってたんだけど、ドアを開けた隙にいなくなって。」

「……」

「あれ以来、他の猫は飼えなくて、今も俺の部屋にはこいつに似たのが待ってる。」

映はそう言って、黒猫のぬいぐるみをあたしに向けた。

「…その子、今度連れて来てよ。」

「そうだな。」

「ぬいぐるみって、こんなに高いの?」

あたしが値段を見て言うと。

「そいつはブランド物だから、ちょっと特別。違うやつにしようぜ。」

「ぬいぐるみにもブランドってあるんだ…コルネッツ…ふうん…」

「ほら、これは?気持ちいいぜ。」

映に押し付けられて…抱いてみる。

…実は…ぬいぐるみを抱きしめる…なんて、した事ない。

だけど…

ふわふわで、気持ちいい…

「…いいな…これ。あたしも欲しい…」

「そっちのブランド物じゃなくていいなら、うちにも買って帰ろうか。」

「え!!ほんとに!?ブランド物じゃなくていい!!」

つい、はしゃいでしまった。

いい歳して……反省。


そんなわけで…

映が買ったのは、抱きかかえるのにちょうどいいサイズの…クマのぬいぐるみ。

母さんがソファーを立ってお茶を入れ直しに行くたびに、頭を撫でてるのが…


すごく。

嬉しかった。

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