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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/11 20:34:55

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海くんに会おう…って覚悟は、まだあたしには…できなかった。

実家に行った後、遅番で店に出て。

だけど…仕事中も、ずっと考えた。

海くん…何日ぐらいこっちに居るのかな…

会って…顔見て話して…ちゃんと進んだ方がいいに決まってるよ…

うん…


仕事が終わる頃には、少し会う方向に気持ちが傾いてたんだけど…

翌朝、お兄ちゃんに電話をしたら、海くんは現地からすでに向こうに戻ったみたいで。

もし会う気になれば…段取りは着けるって、お兄ちゃんが言ってくれたけど。

わざわざ、あたしのためにアメリカからって言うのは…

…だったら、あたしが手術を受けに行く時に…会う?


ピンポーン

映が仕事に行って、あたしはお休み。

今日は買い物にでも行ってみようかなと思ってる所に…

「…お母さん…」

ドアを開けると、母さんがいた。

「…入っていい?」

「も…もちろん…」

突然の訪問に、ドキドキした。

えっと…部屋の中、ちゃんときれいにしてるよね。

見える所に、変な物なんて置いてないよね。

咄嗟に、頭の中で部屋の残像を思い浮かべる。


「…すっかり、一般人ね。」

部屋を見渡して、母さんが言った。

それは…

余計な物をたくさん持ってる…って思われたのかな…

そうだよね。

うちには、DVDレコーダーなんてないし、空気清浄器も、花柄のカーテンもない。


お客さんなんて来ないと思って…

それらしいカップがなくて。

あたしの出した、薄いピンク色のマグカップに小さく笑って…母さんが言った。

「私も、頭ごなしに反対してるわけじゃないの。」

「……」

「朝子には、我慢が足りない。」

「…うん…」

「自分でも分かってるの?」

「…ここ一年ぐらいで…やっと気付いた…」

「…そう。」

母さんは紅茶を一口飲むと。

「…自分から行きたいって言った研修を、怪我のせいで辞めた時…母さん、正直ガッカリした。」

「……」

あの頃…両親は何度もお見舞いに来てくれたけど…

あたしは、紅美ちゃんと海くんの事を知って以来、少し…人間不信に陥っていて。

誰にも会いたくなかった。

そんな中で、海くんが婚約の話を進めてくれて…

一緒に暮らす事になって。

両親は、海くんの決めた事には逆らわない。

何か意見があったとしても…きっと言わないはず。


「…海くんにも、辞めるのか?って聞かれたけど、当たり前でしょって思ってたんだと思う。」

久しぶりの母さんを前に、あたしは少し緊張してしまった。

でも…

今まで話せなかった事。

ちゃんと話して…進まなきゃ。

「坊ちゃんを庇って出来た傷を、どうして誇りに思ってくれないんだろうって、イライラした。」

「…ごめんなさい…」

「…でも、仕方ないのよね…朝子は、そういう風には育てられてないんだから…そう思えないのが当然よね。」

「ちょっと待って下さい。」

突然声がして。

顔を上げると…映が立ってた。

「え…映、どうしたの?」

「スケジュール変更の連絡があったから戻ったんだ。」

「…あ…あの…」

あたしが映を紹介しようと立ち上がると。

「何度もしつこく電話してすいません。はじめまして。東映です。」

映はあたしの隣に座って、母さんに頭を下げた。

「……どうも。」

「で。」

映は顔を上げると。

「そういう風には育てられてないって、どういう事ですか。」

厳しい口調で言った。

「あなたの娘でしょう?」

「映、やめて。」

「朝子、いいのよ。」

「母さん…」

母さんは伏し目がちに小さく笑って。

「…朝子は…人見知りの激しい子で。」

話し始めた。

「仕事で外に出てばかりだった私達に、なかなか懐かなくて。」

「…え…」

お…親にさえ懐かなかったの!?

「志麻にだけは…ベッタリだった。」

「……」

「そのせいで、志麻の中ではいつまでたっても朝子が小さな朝子のまま。」

「…シスコンはそのせいか。」

映があたしを見て笑った。

「朝子は、我慢が足りない。自己主張も下手。思ってる事を口に出さずに、ずっと溜め込んで根に持って…」

「ちょ…母さん…あたしのマイナスポイントばかり…」

「…そんなに嫌なら、もっと早く二階堂を出るって言えば良かったのに。」

「……」

「坊ちゃんに対しても…そこまでの気持ちがなかったなら…もっと早くに捨ててさしあげれば良かったのに。」

ぐっ…と。

あたしは両手を握った。

「な…何よ!!母さんだって、今になってそんな事言うなんて!!」

「今だから言うのよ。」

「…なん…なんなのよ…」

「東さん。」

母さんは映の顔をじっと見て。

「…はい。」

「朝子は、特殊な環境で、自分は出来ない人間だと思い込んで育ったせいで、卑屈な所があります。」

「…思い当たります。」

「映。」

「いや、マジで。」

「……」

眉間にしわを寄せて、黙るしかなかった。

だけど、そんなあたしを…映は優しく笑って見て。

「卑屈な所も、我慢が足りない所も、何かと溜め込む所も含めて…一緒に成長できたらいいと思ってます。」

母さんに、そう言ってくれた。

「…朝子。」

「…はい。」

「…父さんの説得に、帰ってらっしゃい。」

「…お母さん…」

「東さんも。彼は私より強敵よ。」

「…一番の強敵はお兄さんかと。」

「その志麻は、二人の結婚を許してやってくれって、私達に土下座しましたよ。」

「えっ!?」

あたしと映、同時に声を上げてしまった。

だ…だって…

お兄ちゃんが!?

「お父さん、三日後にはドイツに行くから。それまでにね。」

母さんはそう言うと。

「ご馳走様。」

もう一度…部屋を見渡して。

少しだけ…切なそうな目をして帰って行った。

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