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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/11 10:05:01

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あずきのご主人がぎっくり腰をされたとの事で、あたしの遅番が増えた。

増えたと言うか、ほぼ遅番。

それに伴って…映との時間が減った。

気付いたら、一緒の食事は朝食だけ。

最初はその事に焦りを感じたけど…やがてそれにも慣れてしまった。

だって…

映は、あたしの事…要らないんだよね…?


そう思い始めると、右手の指輪が空しく思えてきた。

あたし達、こんなので結婚なんてして大丈夫なのかな…

まあ…全然話も進まないし…

もしかしたら、やめろって事だったのかも…なんて…


とにかく。

マイナスなあたしが出始めた。

映は海くんと一緒。

そう思ってからと言う物…

あたしは、映に背中を向けて眠るようになった。


「朝子ちゃん。」

早番の、ある日。

あずきを出て歩いてると、声を掛けられた。

振り向くと…

「…渉さん…」

「やあ、元気?」

久しぶりの、渉さん。

「はい…え?どうしてここに?」

「うん。ちょっと朝子ちゃんに話があって。時間ある?」

「はい…」


渉さんに連れられて、『カナール』に。


「今、彼氏と暮らしてるんだってね。」

「…誰に?」

泉ちゃんと空ちゃんには…言ってないんだけど…

華月ちゃんにも一応口止めしてるから、漏れるとしたら…

「志麻。」

やっぱり…お兄ちゃんか…


「…空ちゃんにも秘密にしたままで…ごめんなさい。」

「言いにくい気持ちは分かるから。俺も空には言ってないよ。」

渉さんの言葉に、あたしは少しだけホッとした。

海くんとの婚約を破棄してすぐに…外の人と同棲なんて。

両親は、あたしがいつか別れる事を願っているのか…

誰にもあたしの近況を話していないらしい。


「…結婚が決まったら…言おうと思ってたんだけど…」

「…進まない?」

「親が…会わない内から嫌がって…」

「…二階堂の古い習慣を重んじて来た人達には、戸惑いが大きいんだろうね。」

親の気持ちも分かるけど…

二階堂を変えたいと動いている頭を始め、海くんやお兄ちゃん…

対立しなきゃいいけど…


「何か悩みでもある?」

突然そう言われて、ハッと顔を上げる。

「そ…そんな顔してますか?」

「うん。」

「…あたし…」

あたしは渉さんに、映が海くんと同じで…

あたしに何も話してくれない事。

それで自分に自信が持てなくなった事を打ち明けた。

最初は…あんなに上手くいってたのに…


「…朝子ちゃん。」

「はい…」

「ちょっと厳しい事を言うけど、いいかな。」

「……」

今厳しい事言われると…ちょっと…心が折れそうだな…

そう思って返事が出来ずにいると。

「傷付くのが怖いから、自分から先に悪い方へ悪い方へ考えてるね?」

渉さんは、あたしの顔を覗き込んだ。

「……」

そ…う…だよね…

「今も、俺が厳しい事言うって言ったら、返事も出来なくなった。朝子ちゃん、海との時も、今の彼との事も…全部相手が悪かったかな?」

「…違います…あたしが…」

「ほら。あたしが、って。そうじゃないんだよ。」

「……」

渉さんは指を組んで。

「結婚も恋愛も二人でする事だよ。片方だけが悪いなんて、よっぽどの事がない限りないさ。」

「じゃあ…あたしがよっぽどの…」

「朝子ちゃんは、まだまだ世の中を知らない。」

「……」

「だから、海も彼も、朝子ちゃんに『話さなかった』んじゃなくて、『話せなかった』んじゃないかな。」

…話せなかった…

「それは、あたしが…」

「弱いから。」

「……」

「傷付けられるより先に自分で傷付けたり、仕方ないって片付けてたりしてない?」

「…して…る…」

だって。

だって…


「朝子ちゃん。」

渉さんはあたしの顎を持ち上げて。

「ちゃんと、俺の目見て。」

低い声で言った。

「せっかく外に出たのに、外でも二階堂のままでいていいのかい?」

「…二階堂のまま…」

「何のために外に出た?」

あたしの目から、涙がこぼれた。

あたし…

変わりたかった。

キラキラした紅美ちゃんが眩しかった。

憧れた。

二階堂から出たら…あたしもキラキラできるんだ…なんて。

簡単に、そう思ってしまってたかもしれない。

映と恋をして。

不安な事もあったけど…

映はずっとあたしのそばにいるって約束してくれて。

なのに、あたしは映の事を信じる事が出来なくて…


「…朝子ちゃん。」

「…あたし…どうしたら…こんな自分から…」

「……」

渉さんはあたしの顎から手を離して、そっと頭を撫でてくれた。

「…俺ね、来月からアメリカに単身赴任するんだ。」

「…え?」

「有望過ぎて、スカウトされた。」

「アメリカ…」

あたしには…いい思い出がない。

怪我をしたアメリカ。

海くんとの辛い生活をしたアメリカ。

映が…黙って行ってしまったアメリカ。


「もし。」

「……」

「もし、顔の傷を治す気になったら…おいで。」

「…え…」

「治るよ。」

「……」

「その傷は、もう持ってても…無意味じゃないかな?」

あたしは…渉さんの言葉を心の中で繰り返した。

その傷は…持ってても無意味…


どうしてあたし…ずっと持ってるの?

この傷で、海くんを縛り付けた。

だけど、もう海くんとは終わった。

じゃあ…どうして?


それは…


この傷があるんだから、仕方がない。

この傷のせいだから、仕方がない。


…どこかで…

この傷に甘えていたのかもしれない…


「…わた…」

「……」

「先生。」

「…ん?」

あたしは涙をぬぐう。

「少し…時間をください。」

「…もちろん。」

「でも…」

「……」

「あたし、治します。」

「…朝子ちゃん…」

「治しに…行きます…。」

あたしの言葉に、渉さん…先生は。

「うん。待ってるよ。」

優しい…

今日一番優しい顔で…そう言ってくれた…。

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