いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/10 13:31:46

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会社の前に車を横付けすると、ちょうど咲華が出てくる所だった。

「咲華。」

「えっ…どうしたの?」

「ちょっと時間が空いたから。」

「えー…嬉しい。」

ただ迎えに来ただけなのに、満面の笑み。

そんな咲華を見ると、嬉しい反面…罪悪感も湧く。

「ごめん…全然ゆっくり会えなくて。」

シートベルトを締めてる咲華にそう言うと。

「あたしは大丈夫。気にしないで?」

咲華は…本当に、ずっと笑顔。

「…今日、うち来ないか?」

「え?」

「今、みんなアメリカ行ってていないから。」

「…しーくんも、また近い内に?」

そう聞かれて、咲華の手を握った。

「…あ…ごめん。必要とされてるから呼ばれるんだもんね。また行く時には教えて?」

「…ああ。」


最近は、丸一日一緒にいた事もなく。

会えるとしても…僅かな時間。

待たせてばかりの俺じゃなくて…もっと咲華のそばにいてくれる男の方がいいんじゃないだろうか。

そう…思わない事もない。


ガレージに車を停めると。

「本家、久しぶり。」

明かりのついた本家を見て、咲華が言った。

「でも咲華はこっち。」

咲華の手を取って、別館の裏にある自宅に歩く。

「…こっちは…初めてかも。」

「ああ。滅多に一般人は入れないから。」

「あたし…いいの?」

「俺の婚約者では?」

「……」

俺の言葉に、咲華は照れ笑いをしながら…腕にしがみついた。

「しーくんの部屋、楽しみ。」

「残念ながら楽しめる物は何もない。」

「何も?」

「ああ。」

カギを開けて玄関に入る。

本当に…いつまで経っても『我が家』と愛を持って呼べるような感覚にはならない。

時々食事をしたり睡眠をとりに帰る場所。

そんな感じだろうか。


「朝子ちゃんは?」

「…ああ、一人暮らしを始めたんだ。」

「一人暮らし?」

「婚約破棄してすぐね。」

「…そうなんだ…」

咲華はシンプルと言えば聞こえはいいが、単なる殺風景なリビングを見渡した後。

「しーくんの部屋は?」

笑顔で振り返った。

「…こっち。」

二階の角部屋に咲華を招く。

自分でも久しぶりな気がした。

見られて困るような物は、何もない…はず。

「ねえ、しーくん。」

「ん?」

「アルバムないの?」

「…アルバム?」

「だって、しーくんはあたしの見たじゃない。」

咲華はそう言って、少しだけ唇を尖らせた。

咲華のアルバムは…桐生院家で何度も見せられた。

愛の溢れた…泣きたくなるほど、愛の溢れたアルバムだった。

それを見ながら、親父さんが何度も。

「あー…嫁に出したくねーなー…」

と、つぶやかれて。

「まだ言ってる。」

周りからからかわれていた。


「…見たいものか?」

「当然。」

「……」

あったかな…

「咲華みたいにたくさんはないけど。」

「いいの。」

そう言われて…

俺は、納戸でアルバムを探した。

余計な物は見せたくないと思って…一冊…

でも一冊だとブーイングが起きるか?と思って、二冊。


「お待たせ。」

アルバムを咲華に渡して。

「何か食う物買って来る。」

そう言うと。

「え?何か作るよ。」

「残念ながら、冷蔵庫に何もない。」

「…じゃあ、ついてく。」

「すぐだから。見てて。」

「…分かった。」

そうして俺は一人で買い出しに行って。

咲華は一人で…俺の部屋でアルバムを見ていた。

部屋に戻ると。

「しーくん…」

咲華が、抱きついて来た。

「…咲華?」

「…しよ?」

「え?」

「だって…次いつ会えるか…」

「…アルバムがつまらなかったのか?」

腰を抱き寄せて言うと。

「ううん。子供の頃のしーくん、可愛すぎて…早く子供が欲しくなっちゃった。」

「……」

「あ…ごめん。急かしてるわけじゃないの。」

「…咲華…愛してる。」

「あたしもよ…」

こうして…抱き合ったのも、いつぶりだろう。

早く子供が欲しい。

その言葉が…

少しだけ、俺を焦らせた。

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