ちはるさんのブログ

過去のプラトニックなお話です。

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貴重な時間

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2017/08/05 12:12:19

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教室に入ると、後ろの席の左側一画に数人分の荷物がまとめておいてあった。

荷物から察すると陸上部の男の子達らしい。
今日は土曜だけど、多分グラウンドで部活をしているのだろう。



先生は特に荷物を気にする様子もなく、自分の楽器を少し離れた机に置き、教室の真ん中程の机をいくつかずらし始めた。


私も慌ててそれを手伝う。
立ってサックスを吹ける位のスペースができ、中に先生と私が入った。




『じゃあごめんね、ちょっと吹かせて』



と、先生はわたしの方にやってきてわたしの首にかかっていた楽器に手を伸ばした。



私から楽器を受け取ると、先生は自分のネックストラップにかけ、キュッと右手でストラップの長さを調整して吹き始めた。




ーーーーーーー




私がさっきまで吹いていた、その楽器なのに、全く違う音がする。

こんな風に吹けたらいいなぁという羨望と、自分の下手さをまざまざと感じながら先生に見惚れていた。





そして、私が気になると言っていた上の方の音を重点的に出し始めた。



勢いのあるサックスの音が教室に響く。
誰も他にいないから、いつもの教室と音の響き方が全然違う。






『うん、大丈夫そうだよ。 ちゃんと鳴る。
ちょっと待ってて』


そういって先生はスポッと私の楽器からマウスピースだけを外して、楽器本体を私に手渡すと、それを持って教室から出ていった。





??どうしたんだろ





戻ってきた先生は、持っていたマウスピースを私に渡した。


見ると、マウスピースはビショビショだった。



『・・洗ってきてくれたんですか?』



『そうだよ。
お前も一応女の子だから、そういうの気にするかなーと思って。』


『えーわざわざすみません、ありがとうございますー』




その気遣いが嬉しいような残念なような気持ちでマウスピースを手に持ったまま見ていると、先生が私に近づいてきた。



『なに?どうしたの?』


『え?あ、いえ、なんでもないです!』


『あービショビショだなーって見てた?
拭いてから渡せよーって?』


先生は意地悪そうに笑ってる。


『いや! そんなこと思ってませんよ、大丈夫です!』


私はマウスピースを拭こうとして、自分のタオルを取ろうとすると、先生がスッとそのタオルを私より先に手に取った。


『はいはい、拭けばいいんでしょー?
拭きますよ拭きますよ、これくらい
お前のタオルだけど』


といって、笑いながらマウスピースを拭いてくれた。



『はい、どーぞ』


私も笑いながらそれを受け取る。



何でもないこのやりとりが、本当に楽しい。


今先生は、数人いるなかの私じゃなくて、私としか話していないし、私としか笑ってない。


それがものすごく、嬉しい。





先生と話しているとそこに、陸上部の部員達が教室に入ってきた。

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