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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/08/01 20:07:34

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無事ライヴが終わって。

今は、関係者だけの打ち上げで、カプリを貸し切っている。


「お疲れさん。」

声を掛けられて振り向くと…

「環兄…え?ライヴ来てたの?」

環兄が、ビール片手に立ってる。

「ああ。五人で行ってた。」

「五人?」

あたしの問いかけに、環兄はテーブルを振り返る。

そこには、海くんと曽根さんと、しーくんと富樫さん。

曽根さんは一番前で、はじけまくってたから…知ってるけど。


「…珍しいね。二階堂の人がライヴとか。」

「ああ。興奮してたよ。だんだん前に行って、それに気付いて恥ずかしそうに戻ってくる志麻に和ませてもらった。」

「へえ…嬉しいや。」

あたしはテーブルに向かって歩くと。

「今夜は来てくれてありがとう。」

四人に声をかけた。

「お疲れ様。良かったよ。」

真っ先に海くんがそう言って…手を差し出した。

「え?」

「ファンとしては、握手が欲しい。」

「……」

何だか…温かい気持ちになった。

あたしは口元をゆるめながら、右手を差し出す。

「じゃ、私も記念にお願いします。」

そう言って、富樫さんが立ち上がった。

「こいつ、耳栓してたんだぜ。」

海くんが笑いながら言って。

「えっ?富樫さん、酷いなあ。」

あたしがしかめっ面で握手すると。

「しっしてませんよ!!始まるまでは不安でしたが、全然…もう、しなくて良かったです。」

富樫さんはペコペコとお辞儀しながらそう言った。

「いやー、ほんっとカッコ良かった。紅美ちゃんの歌は、ライヴの方が断然いいね。」

曽根さんが興奮した様子でそう言うから。

「ほんと?じゃ、帰国したら『あずき』で一番定食ご馳走されてあげる。」

あたしは笑いながら、そう返す。

「え?何?これどういう意味?一番定食って、あそこで一番高い奴じゃん。」

「自分じゃ頼まないから、ご馳走させてあげるって言ってるの。」

「何だよー!!こんなに稼いでるのに!!」

「あははは。」

しばらく、そのテーブルで話をしてると。


『今夜は、僕達DANGERのライヴを成功させてくれて、スタッフのみんな、本当にありがとう。』

お店の中央にある、小さなステージに沙都が立って言った。

店のいたるところから、拍手と口笛。

え?沙都…?

…何だろ。

珍しい。


「紅美。」

沙也伽に呼ばれて、あたしはDANGERで座ってたテーブルに戻る。

「ねえ、これどうしたの?」

あたしが沙也伽に問いかけると。

「いやー…沙都、いい気分に酔っ払っちゃってさ。」

「うん。」

「みんなに、一曲歌いたいって。」

「え?」

何となく…ノンくんを見てしまった。

椅子にふんぞり返ってビールを飲んでるノンくんは、ステージの沙都を優しい顔して見てる。

「…ノンくんが?」

隣に座って問いかけると。

「まさか。あいつが自分から行った。」

あたしを見ないまま、そう言った。

沙也伽が、ノンくんの向こう側に座って。

あたし達はまるで、参観日のような気分で。

三人並んで、沙都を見た。

『僕をここまで連れて来てくれた…DANGERのみんな、ノンくん、沙也伽ちゃん、紅美ちゃん…本当に、ありがとう。』

そう言って…ノンくんのアコースティックギターを手にした沙都。

ベーシストだけど、世界のDeep Redのマノンの孫だ。

小さな頃からギターも弾いてる。

あたしより先に、Fのコードを弾けるようになった。


『人前で一人で歌うのって初めてです。ちょっと緊張…だけど、酔った勢いでじゃなきゃ無理だからー…この場を借りて…』

沙都はギターのフレットを確認して。

『僕の、大好きなみんなに…作りました。』

「えっ。」

沙都の言葉に、つい声が出てしまった。

それは、あたしだけじゃなかった。

それまで、頭の後ろで両手を組んでたノンくんは、驚いた顔でそれを外して。

その向こうに居る沙也伽は、いてもたってもいられなくなったのか…立ち上がった。


『上手く歌えるか分からないけど…聴いてください。All I want』


夢なんて漠然とし過ぎててさ

僕には見る価値もない

それよりも毎日の天気が気になったり

大好きな彼女の機嫌が気になったり


みんなが笑っていられたら

みんなで笑っていられたら

僕はそれだけでハッピーなんだけど

それこそが一番難しい事なのかな


僕の望むすべては

どれもささやかで語るほどでもないけど

もし解ってもらえるなら

毎日笑顔でいて欲しいかな

あなたにも

あなたにも



沙都の作った歌は…

DANGERで演るような曲とは、まったくタイプの違う物で。

沙都の、甘い声が引き立つ…優しい歌だった。


あたしはそれを、目を閉じて聴いて。

沙都と…

初めてセックスした日の事を思い出した。


お互い、興味本位でしかなかった。

いいの?って何度も言いながら。

沙都は、たどたどしく…あたしにキスをした。

まだ、13歳と14歳だったあたし達は…

この先、自分達がどうなるかなんて、思いもしなかった。

ただ…

それまでもずっと一緒にいた沙都と。

この先も、ずっと一緒なんだろうなって勝手に思ってた。


照れ臭くて、何度もキスしながら笑って。

裸のあたしをベッドに横たえた時、沙都は。

「紅美ちゃん…すごく綺麗。」

あたしを見下ろして、そう言ってくれた。

当時すでに男子より背の高かったあたしは、それまで「カッコいい」って言われる事はあっても、可愛いとか綺麗とかって言葉とは無縁だった。

沙都にそう言われた途端…

あたしから笑いが消えたのを覚えてる。

ああ、あたし…沙都とセックスするんだ。って…

急に…今更みたいに考えた。


それまでの、物の取り合いでじゃれて抱き合ったりしてたみたいじゃなくて。

男と女がする事。

普段触れる事がないような所に触れて、触れられて。

あたしから、自然と声が漏れた瞬間…

沙都は「紅美ちゃん…可愛い…」って、あたしの耳元で、ゾクゾクするような声で言った。


沙都だよ?

って思いながら…


男だ。

とも、思った。

…ガキのクセに。


あたし…

ずっと沙都に守られてきた。

そう…思い出して…




少し、泣けた。

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