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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/30 08:47:03

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「…どんな恋を?」

俺の問いかけに、父さんは少し目を丸くして。

「織と?」

笑った。

「うん。」

「…誰にも言うなよ?」

「分かった。」

「…お互い、一目惚れ。」

「えっ…それはー…ちょっと意外だな。」

親父と…父さんは、見た目は全くタイプが違う。

現場に出ている親父を見て、俺はいつも『黒豹みたいな人だ』と思う。

素早くて的確な…無駄のない動き。

だけど、父さん…早乙女千寿は。

ゆったりとした、昔からそこにあったかのような…大木をイメージさせる。

いつも緑の葉を多くしげらせ、誰かを雨や陽射しから守ってくれるようなイメージ。


「いつも公園で待ち合わせて、他愛もない話をした。」

その時の母は…

どんな顔をしていたのだろう。と、ふと思った。

恐らく、初恋。

親父に対しても全力の愛を注いでいるのは分かるが…

初恋は、特別だ。


「…だけど、世界が違うと言われた。」

「それは…うちの家業の事で?」

「いや、早乙女の家柄。」

「……」

「織から、別れの手紙が来てね。会ってちゃんと話したいと思って、家に行こうとしたら…陸に待ち伏せされてさ。」

もう、ビールは空で。

結局、父さんはお茶を入れた。

「妊娠した事を、そこで知った。」

「陸兄から?」

「ああ。ボコボコに殴られた。」

陸兄は腕っぷしが強い。

…本当に、ボコボコにされたんだろうな…


「それで…家に行ったら…門の前に『二階堂組』だし。驚いた。」

今でこそ…あの看板は掲げてないが。

昔は、立派な物があったらしい。


「その時は、素直に…ヤクザだって信じた。」

「…だろうね。秘密組織だなんて、どこにも漏らしてなかっただろうから。」

「それでも、織を想う気持ちに偽りはないって言ったら…信じて欲しければ指を切れって言われたんだ。」

「…それは…俺のじいさんに?」

「いや、女性。きれいな人だった。」

つい…父さんの指を見た。

「…織からの手紙に、夢を叶えてくれって書いてあってね。俺の気持ちが本物だって伝えるには、夢を叶えるしかないって思ってた。だから指は切れなくて…俺達も…終わった。」

「……」

その手に、触れる。

…ばあさんは、指を切らせる気なんて、もちろんなかったはずだ。

だけど、そこまでしなきゃいけなかった。

…二階堂を守るためにじゃなくて…

この人を守るために。


「…どうした?」

俺の手を握り返した父さんは、優しい声。

「…夢を、叶えたね。」

映像でしか見た事のないライヴステージ。

それでも、俺はいつもドキドキする。

「海に…父さんって呼ばれた事で、もう夢は全部叶った気がするよ。」

父さんはそう言って、少し照れくさそうに笑った。


結局、その後…

奥さんにも一目惚れしたんだと告白されて、惚れっぽいな!!と笑い合った。

それから…

俺の話もした。

空の話…泉の話…

両親を尊敬している事。

そして…


「婚約解消の裏には、女の影でも?」

ズバリ…聞かれた。

「…直接の原因じゃないけど、吹っ切ったつもりでも忘れられない人がいて…」

「一般の女性と結婚しちゃいけないってルールでもあるのか?」

「その辺は暗黙の了解って言うか。危険すぎるから。」

「あー…まあそうか。」

「でも、今度こそ終わらせられる気がしてる。」

俺が背筋を伸ばしながら言うと。

「終わらせたくないなら、終わらせる必要はないんじゃないか?」

父さんも、同じように背筋を伸ばして言った。

「…え?」

「あの頃と今じゃ、二階堂の体制も変わってきてるんだろ?」

俺は…この時、自分の中の変化にも気付いた。

二階堂云々じゃない…

終わらせられるって思い始めたのは…

華音だ。

あいつを身近に感じて、あいつを好きになって…

きっと、俺は本気で紅美と華音が結ばれたらいい。と思い始めてるのだと思う。

「…そっか。二階堂の体制も変わってきてるし…確かに、無理も出来たかもしれないのにな…」

独り言のようにそうつぶやいて、俺は笑う。

とんだ奴に出会ってしまった。

華音を深く知らなかったら…

俺は、紅美を諦めないかもしれないのに。


「…今のつぶやきの真意は分からないけど…」

父さんはそう言うと、立ち上がってキッチンに行って。

「今日の海は、今までと全然顔が違う。」

手に、ワインを持って戻って来た。

「…叱られないかな?」

「叱られたっていいさ。」

「…それもそうか。」

二人でワインを開けて。

そのまま、床に転がって寝た。

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