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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/30 07:28:54

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「俺、曽根仁志っていいます。親には『ヒトシ』のヒを飛ばして、『トシ』って呼ばれてます!!」

「トシ。おまえ、その女とはちゃんと決着つけたのか?」

「つけました!!もう、二度と会いません!!」

早乙女さんと、『トシ』…酔っ払い同士の会話は…

この繰り返しだった。

確か、7回めを迎えた頃に、トシが。

「もう、無理です。おやすみなさい…」

そう言って、ソファーに倒れ込んだ。

結局俺は…

彼に、『ニカ』と呼ばれることになったらしい。

…キリに、ニカ…

「ついでに、サオって呼ばれたら良かったのに。」

俺が笑いながら言うと。

「そんな呼ばれ方はされたくない。」

早乙女さんは、くっくっと小さく笑った。


…二人になると…どうしても沈黙も増える。

それで、さっきまではトシが盛り上げてくれていたのだと気付いた。


「ここに来て、飲んで食ってばっかりだ。」

「ははっ。確かに。あ、あとは泣いたり。」

「あー、それはオフレコで頼む。」

「特に、陸兄に?」

「そうそう。」

いつの間にか…

敬語じゃなくなった。

自然と…肩の力も抜けた。


「…父さん。」

「…ん?」

「…って、呼んでも?」

「嫌なわけはないが、無理はするなよ?」

「今、自然と出た。」

「…ならいいよ。」


冷蔵庫のビールを飲み干してしまった。

明日、こっそり買い足しておかないと叱られそうだ。

なんて言いながら、笑い合った。


「今…幸せ?」

俺の問いかけに。

「ああ。もちろん。」

父さんは…穏やかな笑顔。

「思い悩んだ時期もあったが…それも全部、今となっては、だ。」

「…思い悩んだのは…」

「最初は…二人の父親の事かな。」

「……」

「…同じ想いをさせて、申し訳ないと思ってる。」

父さんは、少し伏し目がちになって。

「早乙女の両親は…とても愛を持って育ててくれた。だけど俺の気持ちはずっと浅井晋にもあった。」

話し始めた。

「でも、俺の場合、親父はアメリカにいたし…文通っていう手段でやりとりはしてたけど、意識するほど近い距離にいたわけじゃない。」

「文通かあ…親と手紙のやりとりって想像できないな。」

「くだらない事ばかり書いてた気がする。その夏一番に聞いた庭の木のセミの声の事とか、仙岩池のアヒルの事とか…」

「仙岩池って、桜花の近くにある池?」

「そう。俺が子供の頃には、あそこにアヒルがいてさ。可愛いなあ~って眺めてたら、辺りが暗くなってて。慌てて走って帰ってたよ。」

笑ってしまった。

この人は、今も可愛いものを見ると、そうなりそうな気がしたからだ。

「早乙女の父は…俺がいるのを知ってて、早乙女に婿入りしてくれてね。」

望月政則さん。

俺は、高校の時に『早乙女千寿さんが父親だよ』と親父に聞かされて…

調べた。


「とてもいい人で、その人に応えたいと思う気持ちが空回りしてたように思う。だけど…父は俺に『おまえは早乙女の駒にならなくていいんだ』って。」

「…早乙女の駒…」

「自分の生きたいように生きろってね。浅井晋に憧れてるなら、夢を持ってるなら、それを目指せって。」

二階堂のようではなくても…

たぶん、早乙女家も。

色んなしがらみや掟はあったと思う。

俺達は夢を見る事すら知らなかったけど…

もし、その夢を見てしまっていたら…

俺は、どうなっていたのだろう。

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