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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/29 13:44:01

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「なあ、華音。何か歌ってくれよ。」

早乙女さんがそう言ったのは、みんなでビールを飲んで…

そろそろ誰か順番にシャワーを…なんて話をしている時だった。


「は?」

一人だけフルーツを食べていたハナオトは、フォークに突き刺したパイナップルを口元に持って行きかけて…やめた。

「歌?何で急に?」

「んー…何だろうな。親父がここで暮らしてたって思うと、色々…不思議な縁みたいな物を感じてさ。」


…俺の祖父にもあたる…浅井晋さんは。

14年前に、災害で行方不明になったまま。


「何か…生で歌が聴きたい気分になった。」

その辺が…音楽をしている人の感覚なのか…

俺は、CDで聴いても生で聴いても変わらないと思ってしまいそうだ…。


「……」

ハナオトは少し考えていたようだが。

「…じゃ、大サービスで。」

立ち上がって、部屋からギターを持って来て。

「Deep Redの名曲『Thank you for loving me』でも。」

みんなの前に立った。


俺は…知らない歌だったが…

早乙女さんと沙都は、指でリズムをとりながら、時々小さく口ずさんだ。

曽根くんは…まるで恋でもしているかのような目で、ハナオトを見ている。


DANGERのアメリカデビューは…

紅美とハナオトのツインボーカルだった。

だから、その上手さは知っていたつもりだが…

こうして目の前で聴かされると…

曽根くんじゃないが、惹かれた。

しかも、ラブソングだ。

まるで…ハナオトに告白でもされている気分になる。


曲が終わって、ハナオトがギターを下ろそうとすると。

「アンコール。」

早乙女さんがそう言って。

「え。」

「アンコール。アンコール。」

自然と…みんなで手拍子をした。

「…もう一曲だけっすよ。」

ハナオトは早乙女さんにそう釘をさして。

コホン。と咳払いをして…

「If It's love」

タイトルを言った途端…

「あ…」

タイトルだけなのに、なぜか…曽根くんが泣きそうな顔をした。

早乙女さんは目を伏せて…

膝を抱えて座ってた沙都の背筋は伸びた。

確か…Live aliveの映像で聴いた曲のタイトルだ…。



朝起きたらさ、おまえが隣に居る

おかしいな…これはリアルなのか?って

毎朝そんな気持ちになるなんて…夢みたいな幸せって事だよな


もしおまえに悲しみが訪れたら、俺がおまえを殺してやる

おまえを悲しませない

俺が苦しむとしても


それは愛なのか?って、誰もが言うんだ

俺は笑顔で、全力で言うさ

愛だ

いや

愛以上だ

愛以上なんだ


もしおまえに苦しみが訪れたら、俺がおまえを殺してやる

おまえを苦しませない

俺に罰が与えられるとしても


それは愛なのか?って、誰もが言うんだ

俺は笑顔で、全力で言うさ

愛だ

いや

愛以上だ

愛以上なんだ



泣いてる事に気付かなかった。

歌い終わったハナオトが、俺の顔を見て目を丸くしたのを見て…気が付いた。

だけど、泣いてたのは俺だけじゃなくて。

「あー…おまえ…さすがの遺伝子だな…泣かされた…」

早乙女さんが、そう言ってティッシュケースを手にした。

この歌は…確かに、映像で聴いた。

泣いた。

あの映像のあの歌には、愛が溢れていて。

苦しくなるほど、愛が羨ましくなった。

誰かを愛したい。

紅美を…もっと愛したかった。

そんな気持ちになった。


だが…

ハナオトの歌には…

魂を感じさせられた。

愛は溢れさせるものじゃないと言わんばかりに…

溢れさせるんじゃなくて、静かに…愛をそこに留めさせていればいい、と。

その鬼気迫る魂の歌に…俺の中で少し変化があったように思う。


「さ、俺はシャワーしてくる。」

ハナオトがそう言って、ギターを部屋に持って上がろうとしたその時。

「ただいまー。」

明るい声と共に…

「ばーちゃん…まだこっちいたのかよ。」

「まっ。冷たいわね。」

さくらさんが帰って来た。

「いい加減帰れよ。みんな心配してるぜ?」

「大丈夫大丈夫。明後日帰るから。」

さくらさんはリビングに来て。

「あら、千寿さん。いらっしゃい。」

「お邪魔してます。」

「あっ、華音のお友達の…えーと…曽根さん!!」

「当たり。お邪魔してます。」

「わー、楽しい♡やっぱり、もっと居ようかなあ。」

さくらさんはそう言って笑ったけど。

「ばーちゃん。」

ハナオトに低い声で言われて。

「…分かったわよぅ…」

唇を尖らせて、首をすくめた。

…ふっ…

本当に、少女のような人だ…。


それから、さくらさんが『お土産ー、作ったのー』と言いながら、おはぎをタッパーから取り出して。

ここんとこ、食べてばっかだー。と言いながら、沙都がペロリと二つも食べた。

シャワーから出て来たハナオトは、さくらさんが『あーん』なんて箸で口に持って行くのを、『外ではするなっつってんじゃん』とニヤけながらも、食べて。

仲の良さをアピールしているようだった。


「…華音。」

一瞬、誰が呼んだ?みたいな空気が流れた。

俺は座ったまま。

「華音、俺にも一つ。」

そう…華音に言った。

みんな少し笑顔になった気がしたが、華音だけは普通に。

「あんたでもおはぎなんて食うんだな。海さん。」

箸を手にして言った。

…『海さん』な…。


「…呼び捨てでいい。」

「は?年上なのに?」

「おまえには、そうされたい。」

「……」

照れくさい気もしたが…ちゃんと目を見て言うと。

「…ま、ダチに年は関係ねーか。」

華音はそう言って。

「ほらよ、海。」

俺の口元に、おはぎを…


丸ごと詰め込もうとした。

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