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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/07/29 10:06:41

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「海くん、俺の事を『しゃおとめ!!』って叫びながら、髪の毛引っ張ってたの覚えてる?」

「えっ。」

「ははっ。覚えてないのか。まあ、仕方ないな~。まだちっちゃかったし。」

「そ…そんな失礼な事を…」

さーっと血の気が引いた気がした。

親父の事を『環』って呼び捨てにしてたのは…何となく覚えてる。

それは、親父が護衛をしてたからだし、万里さんと沙耶さんの事も呼び捨てにしてたのは覚えてる。

でも…早乙女さんまで…

つい、頭を抱えてうなだれると。

早乙女さんは、声を出して笑った。


「あの…」

「ん?」

「俺に…会いたくないって思いませんでしたか?」

昔から気になっていた。

家柄や、しがらみ…夢で結ばれなかった。

俺は…そんな二人の子供。

半ば無理矢理引き離されたのに…


「思ってたさ。」

早乙女さんは、三本目のビールを開けた。

「でも、何かと陸が誘うんだよなー。うちに来い。って。」

「…陸兄が?」

「超荒治療だったな。目の前で、環さんと織と海くん…三人の幸せそうな姿を見せ付けられるのは、地獄だった。」

「……」

それは…

本当に地獄だっただろう。

「だけど、それがあったから…環さんを認める事が出来たのも確かなんだ。」

「…どういう事ですか?」

俺の問いかけに、早乙女さんは俺の顔を見て。

「環さんは、男の俺でも惚れるいい男だよ。」

優しく笑った。

「ずっと、葛藤してた。」

「…葛藤?」

「君に、会いたい…いや、会いたくない…父親だと名乗りたい…いや、許されない…ってね。」

「……」

「そんな時に、環さんが言ってくれたんだ。海くんの心が育って色んな事を受け入れられる年齢になったら、俺の事を話すつもりだ…って。」

親父がそんな事を話してたと聞いて…俺の胸は震えた。

「おまけに…父親が二人いる事は、幸せだと思う。って言ってくれた。」

「……」

「勝ち負けじゃないんだけど、負けた。って思うと同時に、この人なら。って思いも出たし…もちろん、俺も…少なくとも君に恥じない男にならなくてはって思えた。」

親父も早乙女さんも…そんな風に思ってくれてたんだと思うと、感動した。

この気持ちをなんて表現すれば…

親父に対しても、早乙女さんに対しても。

この、今の俺の気持ちを…

だけど、早乙女さんを目の前にしていると言うのに、俺はうまく言葉を出す事も出来ず。

だけど何か伝えたい…いや、この際だ。

ずっと思って来た事を…


「実は…俺は、あなたに良く思われてないと…」

正直に胸の内を明かす。

「えっ?なんで?」

早乙女さんは、丸い目で俺を見る。

「音楽の道で成功されて…奥さんも子供さんもいらっしゃって。俺の事は汚点とされてないかって。」

「……」

早乙女さんは優しい顔を引っ込めて。

ぐい。

と…

「え…」

俺の頭を片手で抱き寄せた。

「……」

「…事務所の部屋の、俺のロッカー…」

「…はい…」

「暗証番号…ずーっと…3580だよ。」

「……」

それは…

「何かあった時のために、バンドメンバーはみんな暗証番号知ってるんだけどさ。陸にだけは、何の数字かバレた。」

「……」

それは…

俺の、産まれた時の体重。

「君は環さんの息子だけど、俺の息子でもある。今も、詩生達と同じぐらい大事に想ってるし…愛してるよ。」

「……」

涙が…溢れた。


家族を愛してる。

だけど早乙女さんにも愛されたい。

きっと…俺はそう思ってた。

優しく穏やかな笑顔の持ち主。

昔から、大勢の中にいても…その姿を目で追った。


彼の子供達が愛しい。

その反面、羨ましい。

俺は…なんて欲にまみれてるんだ…と。

最高と思える家族がいるのに。

これ以上を望むなんて…と。


「…すいません。」

涙を拭ってそう言うと。

「もう一本、行くか?」

早乙女さんは優しく笑って、空になった瓶を持ち上げた。

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コメント6

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6578076・07/30

    スズさん
    本当、選べないですよねー(*´∀`*)
    なのにもうすぐ、誰が好きか選手権を開催してしまおうとしてる私…

  2. ヒカリさん(99歳)ID:6578075・07/30

    ルルさん
    元々好きなセンが、さらに好きになってしまいました('-'*)

  3. ヒカリさん(99歳)ID:6578073・07/30

    カリンさん
    私もここは何回読み返しても…(ノД`)シクシク

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